【ボルボ】目指したのは世界No1の高性能4気筒と8速ATのコンビ ボルボ「Drive-E」パワートレーンに迫る

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ボルボは、これまで素性がさまざまなV8型4.4L、横置用の直列6気筒・3.2L、直列5気筒・2.5L、直列4気筒は1.6L、2.0Lをラインアップしてきた。しかし、プレミアムメーカーとして再構築を行なっているボルボにとって、次世代に向けた新しい自社エンジンを開発することも大きな課題になっていた。  2014年3月のニュース

◆拡張性の高いボルボ製エンジン

そうした状況にあったボルボは、次世代エンジンとして4.0LクラスのV8型から1.6L・直4という排気量レンジをカバーできるパワー、質感を備えていること、ディーゼルのラインアップを展開できること、もちろん次世代エンジンにふさわしく優れた燃費や環境性能を実現できること、プラグインハイブリッドなど電動化システムに適合できることなどの多くの条件を成立できるエンジンとして、直列4気筒+過給システムを選択し、この新開発エンジンと後述するトランスミッションの総称は「Drive-E」と名付けられた。これまでもボルボは1.6Lターボと6速DCTを組み合わせた「drive-e」というグレード名があったが、今回の「Drive-E」は、新開発のパワートレインを意味するのだ。

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「ダウンサイジングコンセプトが求められるため4気筒を選び、同時に過給技術はボルボが長い経験を持っていることでこれを組み合わせることにしました」とDrive-E パワートレイン・プログラム担当のヨルゲン・ブリンネ氏は語る。もっとも4.4LのV8型エンジンに匹敵するパワー、トルクや質感も要求されるため、ありふれた直4エンジンとは一線を画する存在でなければならなかった。

簡潔に言えば世界No1の4気筒エンジンを作ることが開発テーマになっているのだ。開発目標としてはBMWの4気筒直噴ターボエンジンを上回る性能だったという。

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IMG_1574Drive-E性能曲線

次世代エンジンは、当然ながらモジュール設計を採用し、さまざまなディーゼルを含むバリエーションが展開でき、同一の生産ラインで製造できるポテンシャルも与えられた。結果的には、ガソリンとディーゼルは25%が共通部品、50%が類似の部品、25%が専用部品となっており、ガソリンとディーゼルで合計8種類のバリエーションが展開できるという。すなわちガソリンエンジンが、T3、T4、T5、T6の4機種、ディーゼルがD2、D3、D4、D5の4機種で、現在のプラットフォームからボルボの次世代プラットフォームSPA(スケーラブル・プラットフォーム・アーキテクチャー)にまで適合する資質が与えられている。
Drive-Eのディーゼルエンジンに関しての関連情報を参照。

ガソリンエンジンは、T3が120~140ps、T4が150~190psが出力目標とされ2015年に生産を開始する計画で、トップエンドに位置するT6(306ps/400Nm)は2014年に生産を開始する予定。このT6エンジンはスーパーチャージャー+ターボというツイン過給システムを採用し、リッター当たり153ps/Lという高いレベルの出力を引き出す。そしてDrive-Eシリーズの先陣を切ったのが2014年2月デビューとなったT5エンジンである。

なおこの次世代エンジン「Drive-E」の開発プロジェクトが承認されたのが2010年の前半、商品開発として正式に取締役会で決定されたのは2011年半ばであり、開発開始からロールアウトまで46週という速いスピードで開発が行なわれている。開発プロジェクト承認の時点から、かなり基礎的な研究が進められていたのだろう。

◆シリンダーヘッド、ブロックまわり

Drive-Eガソリン・エンジンシリーズに採用された技術は、連続可変バルブタイミング、摩擦抵抗の徹底的な低減、過給システムの採用、先進的な燃焼技術、熱マネジメントシステムと最新のエンジン制御である。

連続可変バルブタイミング機構は、排気ガスのクリーン化、ポンピング損失の低減、ターボへの排気ガス流速の制御を実現し、低負荷域では排気ガスの吹き返しによる内部EGRを利用できるようになっている。

摩擦抵抗を低減するために、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング、ボールベアリング支持のカムシャフト、クランクシャフトジャーナル部の鏡面加工、可変制御オイルポンプを採用。特にカムシャフトのボールベアリング支持はこれまであまり例を見ない思い切った手法である。

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燃焼技術の革新はデンソー製の燃焼室センター部への高圧直噴システム、高エネルギー点火システム、世界トップレベルの高速演算タイプのECUの採用などが上げられる。今回採用された直噴システムはソレノイド式インジェクターによるコモンレール直噴で、燃圧は200バールとなっている。

一般的な燃焼室の側面にインジェクターを配置するのではなく、点火プラグと並行する形で燃焼室中央にインジェクターが配置されていることがポイントである。Drive-Eの企画当初はスワールバルブの採用も検討されたというが、最終的にスプレーガイド式、つまりこの燃焼室の中央に最適な噴霧状態でガソリンを噴射する高精度の高圧直噴システムを採用することで低負荷から高負荷まで優れた燃焼速度を実現している。つまり、結果的にはBMWやメルセデス・ベンツの上級クラスのエンジンに採用されている高精度直噴システムと同様の形式で、性能も匹敵するレベルになっている。

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点火システムもデンソーの最新の高性能システムが採用されている。高圧の燃焼に耐え、強い着火エネルギーを持つ専用の点火プラグが採用されているのだ。中心電極はイリジウム製、外側電極の放電部にも強化された白金チップを採用し、さらにセラミック材も高性能化され、高い耐久性と強力な放電性能を両立させている。耐電圧性能、耐久性は従来のイリジウムプラグの1.2倍以上になっているというだ。

熱マネジメントシステムは、電動ウォーターポンプ、切り替え式サーモスタットなどを駆使し、より早期のウォームアップ、シリンダーヘッドの重点的な冷却などが行なわれる。

Drive-Eはガソリン、ディーゼルを含めオールアルミ製で、シリンダーブロックは強度・剛性の高いクローズドデッキ構造としている。シリンダー間の冷却性を高めるためボア間には冷却水のドリルド・クロス通路が備えられている。またピストンはオイルジェットにより冷却される。また当然ながら軽量化も追求されており、従来の2.0Lエンジンに比べ45kgの軽量化が実現しているという。

◆国内導入はT5エンジンから

エンジン制御では、演算速度が世界トップレベルのデンソー製EUCを備え、ボルボならではの高次元のフェイルセーフもプログラムされている。「通常のエンジン制御プログラムでは、故障が検出されるとデフォルトのフェイルセーフモードに切り替えられるますが、ボルボの場合は故障検出のレベル、頻度ごとに細かくフェイルセーフモードを設定するなどこだわりがあります」とデンソーのパワートレーン開発部の岩元伸一氏は語っている。つまりトラブルのフェーズに合わせて走ることができるというボルボの思想が反映されているのだ。

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Drive-Eとして最初にデビューすることになったのが、従来のガソリン5気筒エンジンに置き換えられるDrive-E T5エンジンで、最初にS60/V60/XC60のT5グレードに搭載され日本でも2014年2月末から発売された。エンジンの型式名はB420型で、排気量は1968cc。ボア・ストロークは82.0×93.2mm。圧縮比は10.8と高く、最高出力245ps、最大トルク350Nm/1500-4800rpmで、きわめて広範囲で最大トルクを発生する。またレスポンス、振動感のない滑らかさもアピールポイントになっている。Drive-Ew搭載したボルボXC60の試乗レポートはこちら。

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左から点火プラグ、ダイレクトコイル、ECU
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外側電極に白金チップを備える

 

また排ガスもユーロ6、SULEVなど2017年までの各国のすべての基準をクリアするのはもちろん、最新のユーロPM(粒子状物質)基準もクリアすることができる。燃費は、これまでのエンジンに対して約35%改善されている。

◆ミッションは8速AT

B420型エンジンは、新たにアイシンAW製の8速ATと組み合わされる。ボルボはこれまで、アイシンAW製の6速ATとフォード・ゲトラグ共同開発の湿式クラッチを持つ6速DCTの2種類を採用してきたが、Drive-Eは新世代の8速ATに一本化したわけだ。

アイシンAW製の8速ATは横置きATの最新のユニットで、これまではカナダ工場生産のレクサスRXに採用されている。このATはAWF8F45型と呼ばれ、従来の6速ATとほとんど同サイズで、8速化して変速比幅を7.8にまで拡大。さらにいかなる運転状態でも1000rpmでロックアップし、トランスミッション内部の引き摺り抵抗の低減をするなど燃費性能を高めるために対策を採り入れている。

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また、DCT並みのクイックなシフト、ダイレクトなフィーリングを実現し、さらにアイドリングストップシステムに対応するための電動オイルポンプをよりコンパクトなソレノイド式を採用している。なおギヤ比は5速が1.0に相当する設定で、最大許容トルクは450Nmの容量を持つため、このユニットで新しいボルボのエンジンをカバーできることになる。

Drive-Eは、ドライバーが選択できるモード機能を備えている。ECOプラス、D、SPORTの3モードがあり、ECOプラスモードでは、エンジン、変速、エアコンなどが燃費走行用に制御され、さらに65km/h以上で走っている場合は、アクセルオフでエンジンブレーキなしの惰性(コースト)走行も行なうことができる。Dモードは通常の走行モードでアイドリングストップも行なう。SPORTモードは、エンジンレスポンスが高まり、ギヤも高回転を保つようになる。またこのモードではアイドリングストップ機能はオフになる。

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アイシンAW製8速AT(WF8F45型)を上面から見る。情報がエンジン側
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左からヨルゲン・ブリンネ氏、岩元伸一氏(デンソー)、松浦正基氏(アイシンAW)

 

Drive-Eはファンツードライブ、燃費・環境性能、そして高品位な運転フィーリングを実現しており、今後登場する高出力バージョーンやベースエンジンにも大いに期待が膨らむ。

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Drive-Eを搭載したXC60
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2.0Lで245psを発生するB240型

 

ボルボカーズ・ジャパン公式サイト

COTY
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