2013年2月19日、ボルボ・ジャパンは新型「ボルボV40」(ブイ・フォーティと発音する)を発表し、同日から発売を開始した。新型V40のポジションは、従来のボルボのCセグメントの3車系、S40、C30、V50を統合した新たなCセグメントのプレミアム・スポーツ・コンパクトと位置付けられる。そして輸入車の中で最大のマーケットであり激戦区のコンパクトセグメントに強い商品力を持つV40で本格参入することで、ボルボ・ブランドの存在感を訴求するとともに同セグメントのドイツ・プレミアムブランドに対抗し、もう一つの選択肢として確立するという狙いがある。
また新型V40は、従来のDセグメントのボルボと同等以上の、最新・最高レベルの安全システムを備え、Cセグメントの中でも安全性能のリーダーとなり、ボルボのブランド価値をいっそう高める役割も与えられている。さらに燃費、環境性能でもボルボの最新技術が投入されると同時に、スポーティで存在感のあるデザインや、ドライビングプレジャーなど新世代ボルボの新たな価値観や個性をアピールしている。
5ドア/5座席のハッチバックボディを持つ新型V40は2012年のジュネーブショーでデビューし、2012年5月からヨーロッパで販売が開始され、市場での評価、販売は好調だ。日本市場ではBMW 1シリーズ、アウディ A3 、メルセデス Aクラス、アルファロメオ・ジュリエッタ、レクサスCT200hなどを直接的なライバルとされている。
V40のスタイリングは一目で新世代のボルボであることがわかるスポーツ感、ダイナミック感に満ちたアグレッシブなクーペ・デザインで、実用性を重視したハッチバック・デザインとは異なる強い個性を放つ。これはデザイン担当取締役のピーター・ホルバリー氏が統括し、サイモン・ラマー氏が担当した。新世代ボルボのスローガンは「Designed around you」(わかる人のための最適設計)だ。ボディ全体の面に抑揚が強いプレスが採用され、立体感、ソリッド感が強調されている。また、ショルダーラインの大きな張り出しやテールゲートの処理にはボルボの歴史的なデザイン処理が現代風の解釈で盛り込まれている。そしてインテリアのコンセプトはスポーツ&ラグジュアリーだが、そのデザインセンスは他のプレミアムブランドとは一線を画するスカンジナビアならではの人間工学、センスやモダンさが感じられる。
V40の新装備としては、フル液晶メーターパネルがエレガント(アンバーカラー)」、エコ(ブルーカラー)、パフォーマンス(レッドカラー)と3色を自由に選択でき、インテリアライト(シアターライトと呼ぶ)が基本7色(自動変化モードも選択できる)を選択できるなど新しいラグジュアリー性が与えられている。
新型V40プラットフォームは「フォードC1プラットフォーム」を大幅に改良して採用している。ボディ骨格は、高張力鋼板、超高張力鋼板を多用し、特にピラーやルーフサイド、フロアサイドフレームはボロン添加鋼を使用し強固な骨格を形成している。この強固な骨格と、適切な衝撃吸収構造と歩行者エアバッグ、ニーエアバッグなどフル・エアバッグ装備の組み合わせにより2012年ユーロNCAP(パッシブ安全性評価)で最高レベルとされたのはもちろん、ユーロNCAP史上最高の評価得点を獲得している。
搭載されるエンジンは、ヨーロッパ仕様では1.6Lの直列4気筒が2種類、2.5Lの直列5気筒のガソリンが、そして、ディーゼルが1.6L、2.0Lの2種類あり、日本に導入されたのは1.6L直噴ターボのフォード・エコブースト・ガソリンエンジン「B4164T型」だ。出力は180ps/240Nmで、ダウンサイジングコンセプトにしたがって開発され、低回転から強力なトルクを発揮する一方で、同クラスの他車を圧倒する180psを絞り出す。このことからもわかるように10.0という高圧縮比で、しかも高過給圧というハイパフォーマンス・エンジンといえる。その一方で、スタート&ストップ、減速エネルギー回生システムも装備し、JC08モード燃費で16.2km/Lを達成し、エコカー減税75%対象モデルになっている。
組み合わされるトランスミッションは、Sモード付き6速DCT(湿式デュアルクラッチ)ギヤトロニック(呼称はパワーシフト)で、ゲトラグ・フォード製のユニットでキャリブレーション、チューニングはボルボが行い、熟成させている。
ボルボV40の大きな特徴は、ドライビング・ダイナミクス、ドライビングプレジャーを前面に押し出していることだ。
シャシーではアルミ製ハブキャリア、高張力鋼を多用して軽量で高剛性の足回りを採用。フロント・サスペンションはストラット式でC/DセグメントのS60/V60と同サイズのストラット・ピストンロッドを装備する。リヤはマルチリンク式。ダンパーは応答性に優れるモノチューブ式としている。
そしてこのサスペンションのチューニングには「ダイナミック」を採用している。ボルボのサスペンションのチューニングは、ラグジュアリー仕様の「ツーリング」、スポーティ仕様の「ダイナミック」、スポーツチューンの「Rデザイン」の3種類があるが、V40は最初からスポーティ仕様の「ダイナミック」が装備されているのだ。
ステアリングはボルボ初の電動パワーステアリングで、TRW製のベルト駆動式EPASを採用。ダイレクト感とリニア感を両立させている。またこのEPASはドライバーの好みでアシスト量を「ロー」、「ミディアム」、「ハイ」という3段階の重さから選択することができるのもユニークだ。さらにこのEPASはレーンキープ機能でドライバーに警告振動を与えたり、レーン復帰トルクを発生する役割や、縦列駐車支援システム「パークアシスト・パイロット」作動時の自動操舵も行う。
安全システムでは、6万円のオプションで世界初の歩行者エアバッグが装備できることが特筆できる。このシステムではフロントバンパー内に7個のセンサーを埋め込み、このセンサーにより衝突対象物を判定し、小動物、固い物体、大型動物には反応せず、子供から大人まで人体にのみ反応して作動するシステムになっている。
標準装備される緊急自動ブレーキ「シティセーフティ」は、従来通りレーザーレーダーを使用しているが、先行車との相対速度差15km/h未満で、反応速度は従来の30km/hから50km/hにまで引き上げられている。
また20万円のセーフティパッケージを選択・追加すると、先進的なドライバーアシストシステムがフル装備となる。その内容は・・・
1:ヒューマン・セーフティ(歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム)2個のミリ波レーダーと高性能カメラの両方を用いて、前方の歩行者や車両を検知し衝突を回避、軽減。装備される単眼カメラは多くの役割を果たすが、レーダーでは判別できない人や自転車などを判別できる画像認識能力を備えている。
2:全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)
速度と車間距離を選択すると、交通の流れに合わせ加速、走行、減速、停止までを自動で行う。
3:車間警告機能
前方車両との車間距離が近づくと、フロントガラスの下端の警告灯が点滅。接近しすぎると強い赤色が点灯。
4:DAC(ドライバー・アラート・コントロール)
ドライバーの運転状況から眠気や注意散漫のサインを察知すると警告音を発生。
5:LKA(レーン・キーピング・エイド:ボルボ初、V40 のみ)
カメラセンサーを使用し、無意識のうちに蛇行した際、車線内を走行するようステアリングを微修正し、さらには振動させて警告。
6:BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)
リヤバンパー内蔵の2個のレーダーセンサーにより、ドライバーの死角に車両が進入した際にドアミラー内側のLED ランプと警告音で知らせる。
7:LCMA(レーン・チェンジ・マージ・エイド:急接近車両警告 ボルボ初、V40 のみ)
リヤバンパー内蔵のレーダーセンサーにより車両の両側車線から、衝突までの時間が3.5 秒未満、70m 以内で急接近する車両を告知。
8:CTA(クロス・トラフィック・アラート:ボルボ初、V40 のみ)
リヤバンパー内蔵のレーダーセンサーにより、視界の遮られた状況からバックで車両を発進させる時に、左右から接近する車両を検知し警報を発する。
9:RSI(ロード・サイン・インフォメーション)
制限速度や追い越し禁止などの道路標識をカメラで認識し、メーターパネルに表示。ドライバーに注意喚起させる。
10:AHB(アクティブ・ハイビーム:アクティブ・ベンディング・デュアル・キセノンヘッドライト装着車のみ)
対向車や先行車両を検知し、ヘッドライトをハイビームからロービームへ自動切り替え。
このように上級クラスをはるかに凌駕するドライバー支援システムが装備でき、同クラスでは突出した装備レベルといえる。さらに3万円のメーカーオプションで、縦列駐車で自動操舵となるパークアシスト・パイロットも装備できる。
ダイナミックで存在感のあるデザイン、スポーツマインドに満ちたドライビングプレジャー、そしてクラスの常識を超えたドライバー支援システムの充実など、ボルボV40は、「ベスト・イン・クラス」(この場合のクラスはCセグメントのプレミアム・クラスを意味する)という狙いをそのまま実現したクルマだ。
しかも戦略的な価格とし、このカテゴリーに大きなインパクトを与える存在といえる。また夏頃までにはスポーツ仕様の「V40 Rデザイン」、クロスオーバーカーの「V40 クロスカントリー」も登場する予定だというから楽しみだ。