【ルノー】ルーテシアR.S.試乗記 出汁の効いた旨みがあるルノースポール レポート:髙橋 明

マニアック評価vol230
衝撃的なデビューをしたルノールーテシアにルノーのスポーツモデルであるルノースポールが加わった。そのニュースは既にお伝えしているが、そのルーテシアR.S.に試乗できたので、そのレポートをする。



ラインアップされたルーテシア ルノースポールには「シャシースポール」と「シャシーカップ」の2モデルがある。チューニングレベルの違いで、ともにルーテシアをベースに開発されている。シャシースポールは日常の使い勝手とスポーツ性を高い次元でバランスさせたシャシーを持ち、シャシーカップは、シャシースポールに対し車高を3mm下げ、スプリングレートをF:27%、R:20%高めており、サーキット走行を視野に入れたチューニングがされている。搭載するパワーユニットはともに、1.6L直噴ターボエンジンに6速EDC(ツインクラッチ)トランスミッションを持ち、200ps/240Nmというスペックになっている。

 

雨の箱根ターンパイクで試乗。アンジュレーション、コーナーRなどシャシースポールのレベルの高さを味わえた
雨の箱根ターンパイクで試乗。アンジュレーション、コーナーRなどシャシースポールのレベルの高さを味わえた

 

試乗できたモデルはシャシーカップのほうで、最もチューニングレベルの高いモデルである。試乗のステージは箱根ターンパイク。ウエット路面のコンディションではあったが、意のままに操れる快感を味合わせてくれた。また、試乗コースにこの場所を選んだのは本社のテストチームの意向だということを、ルノージャポンマーケティング部のフレデリック・ブレン氏が教えてくれた。

ルノースポール開発チームは、2013年5月に鈴鹿サーキットでメガーヌR.S.のテストのためにフランス本社から来日している。その時の様子はコチラの記事でお伝えしたが、メンバーがターンパイクを走り、とても気になる場所だったと言うのがきっかけだという。

ルーテシア正面ルーテシア真横

テストドライバーのロラン・ウルゴン氏、シャシーエンジニアのフィリップ・メリメの両氏がターンパイクを帰国前に走行し、路面のアンジュレーションや勾配、コーナーのRなどシャシー性能を味わうのに適した場所だと話したことから、今回のジャーナリストによる試乗コースをターンパイクに設定したそうだ。

ルーテシアR.S.の技術的ハイライトのひとつに、フロントストラットのダンパーインダンパーがある。これはトルコのMaysan Mando社のダンパーで、ルノーでは15年も前からラリーで使用していたダンパーだということだ。これまで、量産への数的対応や製品較差の問題で量産車には採用していなかったパーツということだが、それらの問題がクリアになったので、市販車への採用となったのだという。

ダンパーインダンパー10b944f4899b14c0596434054cb07e871

このダンパーの特長はハウジング内部にバンプストップラバーの機能を持つセカンダリーダンパーが組み込まれておえり、最適な減衰特性が得られるというものだ。実際の路面では、大きな入力がある継ぎ目などダンパーが底付きするような場面でも、セカンダリーダンパーによってタイヤへの入力が弱まり、ガツンとならず減衰の効いた入力となる。そのためグリップを失わず、よりグリップ限界が高まる効果があるという機構なのだ。

つまり、このダンパー性能を箱根ターンパイクで味わって欲しいというわけだ。このチューニングレベルの高いシャシーカップが309万円、シャシースポールが299万円という価格は非常に戦略的であると思う。また、試乗車のカラー、ジョン シリウスメタリック(イエロー)はシャシーカップ専用色でプラス15万円になる。

一方リヤサスペンションはノーマルのルーテシアに対して60%以上も、また先代ルーテシアのルノースポールに対しても10%以上剛性の高いスタビライザーを装備し、ハンドリングに一役買っている。ブレーキはフロントが320mm、リヤが260mmのディスクを装備し制動にも安心感が高い。

さらに、ルノースポールには電子制御デファレンシャル「R.S.デフ」が装備され、前輪左右輪(駆動輪)の回転差は常に監視し、後輪との差を比較している。前輪左右のどちらかに大きな速度差が生じると直ちにR.S.デフはどちらかのタイヤにブレーキをかけ、トラクションが失われることを防いでいる。このときエンジントルクは絞られずESC(横滑り防止機能)が機能する前に作動する。したがってドライバーがこの制御を感じることはないのだ。

ルーテシアフロント

シャシースポール、シャシーカップの両方に共通する走行モード選択「R.S.ドライブ」を装備する。これも今回の技術ハイライトのひとつだ。モードは「ノーマル」、「スポーツ」、「レース」とあり、スポーツモードはシフトプログラムが変更され、0.17secの変速速度にアップ。アクセルレスポンスも高められ、ESCの介入も遅くなる。ステアリングは手応えがやや重くなる設定に変わる。

レースモードはまさにレースで、EDCのマニュアルモード時のみ作動する。シフトスピードは0.15secという速さでポルシェのPDKと同等ということだ。またESC、トラクションコントロールも解除され、シフトアップもレッドゾーンに入っても自動変速はしないモードになっている。

そしてローンチコントロール機能も作動できる。つまりゼロヨンダッシュだ。レースモードを選択しパドルシフトの左右を同時に1秒程度手前に引くと作動し、このときはホイールスピンもするし、トラクションコントロールも作動しないのでスロットルワークはドライバーに委ねられる。またスポーツモードでローンチコントロールを使用するとホイールスピンは抑えられグリップも良くダッシュできる。動画をぜひご覧いただきたい。

インテリアRS drive

ルノースポールの熱狂的なファンにはR.S.モデルの優れたコントロール性や、正確なハンドリング性能をあえて語る必要はないだろう。また、走ることが好きな人であれば、このフィーリングは忘れられない味となることは間違いない。ルノースポールといえばシャシー性能こそがルノースポールの技術の核心であるというように、ワインディングを走って楽しめるレベルが相当に高く、いつまででも乗っていたいと感じる。

そもそも、ルーテシアはノーマルモデルでも驚くほどレベルの高い性能を持っているというレポートをしているが、そのルーテシアをさらにチューンし、味わい深い調整をしてくることにも驚かされた。出汁の効いた味というのか、フランス料理だからブイヤベースなのか、奥行きがあり、複雑な味の絡み合いによって旨みに繋がるような乗り味なのだ。高性能なハード部品を取り付けるだけでは、決して到達できない世界であり、エンジニアによる味付け調整が吟味されているのが伝わるモデルなのだ。

ルーテシアのルーフ
ルーフの左右に溶接痕をカバーするモールがない。つまり、フレームとルーフの溶接には世界最先端の高い技術が使われている証拠だ

■価格
ルーテシア ルノー・スポール シャシースポール 299万円
ルーテシア ルノー・スポール シャシーカップ  309万円

●全長4105㎜×全幅1750mm×全高1435mmm、WB2600㎜

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ルノージャポン公式サイト

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