ポルシェ 伝説のレーシングカー911 2.5 S/Tがよみがえる

走行も可能なほどによみがえっている
走行も可能なほどによみがえっている

ポルシェは、ドイツ・エッセンのテクノクラシカの開幕を記念して、細部に至るまでレストアされた「911 2.5 S/T」を公開した。この車両は、1972年のル・マンでクラス優勝を飾ったレーシングカーで、ポルシェ クラシックのスペシャリストによって2年の歳月をかけて修繕されている。

「911 2.5 S/T」は、グループ3(市販車ベースのGT車両)とグループ4(改造を施したGT車両)のカスタマースポーツ用に開発されたモデルで、1971年末に4万9680マルクでわずかな限定数を発売。911 2.4 Sクーペをベースに、タルガ・フローリオやル・マン、ラリーなどのサーキット用に開発されたワークス改造仕様となる。

1972年のニュルブルクリンク1000kmに出場したマシン。ゼッケン65はマイケル・カイザーとユルゲン・バルトがドライブ
1972年のニュルブルクリンク1000kmに出場したマシン。ゼッケン65はマイケル・カイザーとユルゲン・バルトがドライブ

当時のレースを振り返ると、911 2.5 S/Tにはアメリカのレーシングドライバー、マイケル・カイザーやポルシェのワークスドライバーだったユルゲン・バルト、スイス出身のシルヴァン・ギャランが主なドライバーで、フロリダのデイトナ6時間やセブリング12時間、タルガ・フローリオとニュルブルクリンク1000km、ル・マン24時間などに挑戦。1972年シーズンにはル・マン24時間で、3リッター以下のGT車両のクラス優勝を飾るとともに、総合13位にも入る活躍を見せた。

ル・マン24時間でマイケル・カイザー、ユルゲン・バルト、シルヴァン・ギャランが乗ったゼッケン41
ル・マン24時間でマイケル・カイザー、ユルゲン・バルト、シルヴァン・ギャランが乗ったゼッケン41
こちらも同じくル・マン24時間のゼッケン41の911 2.5 S/Tで、クラス優勝を果たした
こちらも同じくル・マン24時間のゼッケン41の911 2.5 S/Tで、クラス優勝を果たした

今回レストアされた911 2.5 S/Tは、数年前にアメリカのコレクターによってレストアベースの状態で探し出されたもの。ただし、その状態はひどいもので、センタートンネルとサイドレールは変形し、ホイールハウスパネルやルーフは腐食しているなど、大きく損傷。修理不能なまでに変形したルーフは、長期にわたって子供たちの遊び場となっていたことを物語ってたという。

今回レストアされたベース車の状態。これを見ればどれほど損傷が大きかったかわかるだろう
今回レストアされたベース車の状態。これを見ればどれほど損傷が大きかったかわかるだろう

このような状態からレストア作業はスタート。フレアフェンダーの手作業による復元、新しいルーフと新しいタンクボトムの取り付けなど広範囲におよぶ金属加工が施され、その後、ボディは陰極浸漬塗装(CDP)によってコーティングし、生産車両に施される最高水準のテクノロジーによって長期防錆加工が施された。そして、細部の仕上げの後、元のライトイエロー(コード117)に塗装されている。

見事にレストアされた911 2.5 S/T
見事にレストアされた911 2.5 S/T
細部まで完全に当時を再現した
細部まで完全に当時を再現した
ボディカラーは元のライトイエローに塗装
ボディカラーは元のライトイエローに塗装

ポルシェにとってとくにル・マン24時間は、非常に重要なレースのひとつで、1951年のレースデビュー以来、出場した800台以上のポルシェ車のうち103台がサルトサーキットでクラス優勝を飾り、17回の総合優勝に輝いた。その点で細部に至るまでレストアされた911 2.5 S/Tは、歴史的にも大きな意味を持つ。このモデルは、RennSport Rennwagen (レーシングスポーツ・レーシングカー)を表す「RSR」という略語を備え、1973年以来911レーシングカーの最高レベルの開発のための典型例として、911ロードカーの進歩の先駆けとなった911カレラ2.8 RSRの直接の祖先であり、技術的先駆者だったのだ。

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