ポルシェは今回のフランクフルトショーにおけるプレス発表の模様を世界に向けてインターネットでライブ中継し、積極的にアピールした。なにしろ今回は「新型911」に加えて「パナメーラ・ディーゼル」、市販のGT3カテゴリー・レースモデルの「911 GT3 RS 4.0」、プロトタイプの「ボクスターE」と、ワールドプレミアが目白押しだったからだ。
6世代目の911も一目瞭然。ポルシェの顔をしている
メインとなる「新型911」の発表会には初代911も登場し、911シリーズの伝統をアピール。初代から数えて6世代目となる新型911(タイプ991)は、まったく新しいプラットフォームとアッパーボディになったにもかかわらず、911伝統の一目でわかるデザイン・アイデンティティを正当に継承している。
ホイールベースが100mm延長され、Aピラーの角度が強められ、より低く、よりワイドに見え、ホイールには初めて20インチサイズが設定された。ボディワークはアルミ材と高張力鋼板を組み合わせたハイブリッド構造で、剛性を従来より高める一方で45kgの軽量化を達成している。また大型の可変式リヤスポイラーを装備し、Cd値は0.29と空力レベルも高められた。インテリアのデザインは、カレラGTをベースにしており、シフトレバーはせり上がる形状のセンターコンソールに配置し、ステアリングとシフトレバーの位置を近づけている。
新しいカレラとカレラSは、それぞれ3.4L(350ps/390Nm)、3.8L(400ps/440Nm)の新6気筒エンジンを搭載。ダウンサイジング・コンセプトを採用しており、どちらも圧縮比は12.5までアップさせている。ちなみに3.8L版は現行のタイプ997用に比べ、出力が15ps、トルクは25Nm高められている。また、両モデルともにスタート&ストップ、減速エネルギー回生機構も採用している。トランスミッションは7速PDK、または新開発の7速MTから選択できる。そしてついに、911も最新タイプの電動機械式の電動パワーステアリングを今回採用している。
パフォーマンスと環境性能をともに大幅に向上
新型911カレラの燃費は新欧州ドライビングサイクル(NEDC)で8.2L/100kmで、従来モデルより1.6L改善されている。またCO2排出量は194g/kmで、ポルシェのスポーツカーとして初めて200gを切ることに成功した。カレラSの燃費は8.7L/100km、CO2排出量は205gで、997と比べ15%の改善となっている。
パフォーマンスも進化した。PDK仕様のカレラSは、0→100km/h加速が4.3秒。オプションのスポーツクロノパッケージを装備してSport Plusボタンを押した場合は4.1秒。PDK仕様車のカレラは、0→100km/h加速4.6秒でSport Plusの場合4.4秒と向上した。
シャシー性能はホイールベースの延長、ワイドトレッドの効果に加え、カレラSにはダイナミックシャシーコントロールシステム(PDCC=電子制御可変スタビライザー)を標準装備。ブレーキ制御を利用したトルクベクタリングも装備している。
パフォーマンスと燃費を向上させ、スポーツ性能と日常の扱いやすさをすべてレベルアップするという6世代目タイプ991のコンセプトは、実に明確である。
1200kmの航続が可能なパナメーラ・ディーゼル
「パナメーラ・ディーゼル」もワールドプレミアを行った。パナメーラ・ディーゼルは、3.0LのV6型ディーゼルターボ(250ps/550Nm)を搭載し、8速ATと組み合わせている。そして容量80Lの燃料タンクを満タンにすると1200 km以上の航続性能を発揮し、燃費はわずか6.3L/100km (NEDC基準)と、きわめて経済性に優れたGTサルーンとしている。
911 GT3 RS 4.0は自然吸気の最高水準
新たなコンペティションモデルの「911 GT3 RS 4.0」もデビューした。モータースポーツ、FIFAのGT3規定に適合するために600台限定で生産される。ロードカーであると同時に、モータースポーツ活動で開発されてきた技術がすべて採用され、GT3レースに参戦できるトップレベルのポテンシャルを備えていることは言うまでもない。
搭載されているのは、これまでの911のプロダクションモデルに搭載されてきたものの中では最大の排気量の4.0Lエンジンで、500ps(368 kW)の出力を発生する。リッター当たり出力が125ps/Lという自然吸気エンジンとしては最高水準のチューニングが加えられており、まさにGT3というにふさわしい。その走りのパフォーマンスはニュルブルクリンクの北コースにおいて、7分27秒のラップタイムをマークできるという圧倒的な存在だ。
ケイマンSのブラックエディションもお披露目
500台限定生産というケイマンSの「ブラックエディション」もデビューした。標準のケイマンSに比べ、エンジンのパフォーマンスを10psアップした330psとし、インテリアはフル装備としている。
ボクスターEはピュアEVのコンセプト
フランクフルトショーでポルシェのプロトタイプカーとして公開されたのが「ボクスターE」で、純粋なEVである。ボクスターEは前後のアクスルに電気モーターを1基ずつ備えた、電気のみを動力源とする4輪駆動モデルで、ボクスターSに匹敵するドライビングダイナミクスを実現しているという。同じプロトタイプのリヤに電気モーターを搭載した2台の後輪駆動モデルとともに、今後は主にドライビング性能やバッテリーの充電性能などに関する実証実験が行われることになっているという。