2024年3月にBMW Japanはスモール・コンパクトハッチバックのMINIが10年ぶりにフルモデルチェンジしたことを発表し、名称も3ドアがMINI COOPERになり、クロスオーバー、クラブマンが統合した形になってグローバルネームのCOUNTRYMANへと変更している。
ご存知のように、MINIはBEVモデルへとシフトチェンジしていくモデルに位置付けられているが、今回のフルモデルチェンジは100%電気自動車への移行期間の一歩手前だ。そのためラインアップにはBEVモデルがあるもののICE搭載モデルもラインアップしている。
その新型MINIのプラットフォームはUKL2をベースにBEVやPHEVへの対応を考慮しモディファイしたFAAR型で、X1やX2と同じものを採用している。そこで、今回ひと足早くカントリーマンのガソリンモデルに試乗することができたのでお伝えしよう。
試乗したモデルは「MINI COUNTRYMAN S ALL4」で搭載するパワーユニットは2.0Lの4気筒ガソリン+ターボ。最高出力204ps(150kW)/5000rpm、最大トルク300Nm/1450-4500rpmで、トランスミッションは7速DCTが組み合わされているAWDだ。ボディサイズは全長4445mm、全幅1845mm、全高1660mm、ホイールベース2690mmでCセグメントサイズであり、マツダCX-5の全長を少し短くしたサイズになっている。
MINI史上最大サイズとなったカントリーマンは、コンパクトSUVにカテゴライズされるものの、国内では十分な大きさを持ったサイズであり、決してミニサイズではないのだ。
試乗エリアは一般道と高速道路を走行したが、静粛性の高さと滑らかな乗り心地が強く印象に残った。MINIのイメージにはやんちゃな印象もあり、ステア応答の俊敏さやサスペンションの硬さなどで軽快さを感じ、よく動くといった印象だったが、一変した。
プラットフォームが変わりBMWのSAV系と共通になったことで、その味はBMW風味が強くなり、かつてのMINI味は薄くなっていた。しかし、ドライブモードには「Go KART」のモードがあり、粋な計らいを感じるのだ。MINI味の薄くなったからと言ってMINIのレッテルを剥がす必要はないというわけだ。
競合するクロスオーバー、SUVの中においても、BMWらしいリニアなハンドリングと滑らかな乗り心地は優位性を持ち、ひとつのUSPとしてアピールできる。したがって、新たなユーザー層を取り込んでいくにはいい方向に進んだと感じるのだ。
エクステリアではアイコニックなフロントフェイスで、ひと目でMINIとわかり、複雑な八角形のフロントグリルと菱形を変形させたような新たなヘッドライトデザインになった。全体的には四角いボクシーなイメージはあるが、局面をコーナー部に入れることで優しさを作りだしている。またドアハンドルは最近のBMWの手法でフラッシュサーフェイスな処理になっている。
インテリアではセンターメーターが目を惹く。先代モデルでもセンターには円形のモニターが設置されていたが、映し出されるマップは四角いので、丸く表示できないのかと感じていた人もきっと多いと思う。やっと実現したという思いだ。円盤のようなセンターディスプレイはタッチパネル式で、直径240mmと大きい。それだけにデザインアイコンだと感じる。
また試乗車にはヘッドアップディスプレイHUDが装備されており、必要な情報は常に前方に表示されているため、円盤ディスプレイは逆にあまり見なかった。
そしてセンターコンソールにあったシフトレバーはなくなり、ダッシュボードパネルに移設。バイ・ワイヤとすることで、ある意味セレクターの場所はどこにでも設置できるようになり、センターコンソール付近はスッキリして小物入れが増設されている。
ユニークに感じたのはスタータースイッチだ。近年はボタンを押すタイプが主流になっているが、シフトセレクターの横にそれは設置され、キーを回してエンジンをかけていた時代を思い起こさせるツマミがあり、それを回すことでエンジンがかかる。昔を知る人には懐かしさがあり、ボタンスイッチしか知らない人には斬新に映るのではないだろうか。
新型MINIカントリーマンのインテリアには、必要なものだけをフィジカルスイッチに残し、頻繁に使うものはステアリングに集約。そして頻度の低いものはデジタル・デトックスをしているのが印象的だ。先進感を出すために使い勝手を飛び越しデザイン優先になるモデルがある中、ドイツ車の性格がでていると思うのだ。
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