【メルセデス・ベンツ】Specialist海外試乗記 メルセデス・ベンツCクラス すべてがクラスを越えたハイレベルな仕上がり レポート:石井昌道

マニアック評価vol265

歴代C
新型Cクラス。歴代モデルと比べても大きく進化しているのが分かる

新型Cクラスは欧州の路上を走る姿を見ると、遠目には一瞬Sクラスかと勘違いするほどに立派になった。

デザインが近いだけではなく、実際にボディサイズも大型化され存在感が大いに高まっているのだ。従来に比べると全長95mm増、全幅40mm増となり、全長4686mm×全幅1810mm×全高1442mmというサイズになった。日本の都市部ではBMW3シリーズやアウディA4、レクサスISなどが大型化されていくなかでコンパクトさを保っていたことが人気の理由の一つだったが、Cクラスもついに一線を越えることになった。

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全長、全幅が拡大された新型Cクラス

ボディは拡大したが、同時に軽量化も実現
古いタイプの立体駐車場では全幅1800mm以下に限る、という条件が付けられていることもあり、多少なりとも販売面で影響があるものと思われる。ちなみに3シリーズの日本仕様はドアノブを薄型化して1800mmちょうどに収めており、Cクラスも同様の対策を施すことを検討している模様だ。ただし、Cクラスの全幅の最大値はドアノブではなくリヤフェンダー。ここを変更するとなると大変で、ホイールも少し内側に入るよう考慮しなければならないなどハードルが高いので実施されるかどうかは微妙なところだ。

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大型化した理由としては、世界的に平均身長が伸びていることが挙げられており、ホイールベースは80mm増の2840mmとして主に後席の居住性改善が図られている。ホイールベースよりも全長の延長が大きい分はフロントエンドに使われている。軽微な衝突事故を起こした場合、高価なヘッドライトまで交換となるケースを減らし、バンパー補修だけで済むようにするのが狙い。またフロントアクスルとドライバーの距離も若干広げられているが、これはハイブリッド化する際のスペース確保のためだという。

フロントCクラス
軽微な追突事故でヘッドライトを損傷しないデザインとした
100kg軽量化
大型化しながらも100kg軽量化

 

大きくなってはいるが、アルミニウムとスチールのハイブリッドボディとして車両重量は最大で100kg軽くなっているのが技術的なトピックス。従来と比べるとアルミニウムの使用率は9%から49%へ、熱間成形スチールは3%から8%へ、超高張力鋼板は3%から4%へとそれぞれ高められており、ボディシェルは40kgの軽量化が図られている。単純に軽くしただけではなく、サスペンションからボディへの入力ポイントを高剛性にしてNVH改善を図ったり、従来では数個にわかれていたスチール・コンポーネントをアルミダイカストで単一コンポーネントに総合するなど、シャシー性能を向上する設計ともなっている。

■プラグイン・ハイブリッドも追加予定

エンジンラインアップ
パワーユニットは今後、V6型エンジンやプラグイン・ハイブリッドも追加される

新型Cクラスの現状でのラインアップは下記のとおりだ。ガソリンエンジンが、1.6LターボのC180(最高出力156ps/5300rpm、最大トルク250Nm/1200-4000rpm)、2.0LターボのC200(184ps/5500rpm、300Nm/1200-4000rpm)、同じく2.0LターボのC250(211ps/5500rpm、350Nm/1200-4000rpm)。

ディーゼルは2.2LターボのC220BlueTEC(170ps/3800rpm、400Nm /1400-2800rpm)、同じく2.2LターボのC250BlueTEC(204ps/3800rpm、500Nm/1600-1800rpm)が用意される。

また今後のラインアップ拡充では、ガソリンV6型3.5L NAのC400(333ps)はすぐに追加される予定で、プラグイン・ハイブリッドも1年程度でラインアップに加わるようだ。

今回はC250、C400、C250BlueTECに試乗。サスペンションはコイルスプリングが標準だが(可変ダンパー搭載仕様も3種類用意)、新たにクラス初となるAIRマティック(エアサスペンション)も加わることとなった。試乗車はすべてそのAIRマティック仕様だった。コックピットに乗り込み、アルミニウム製のドアを閉めると、それだけでいいクルマに仕上がっている予感がした。タッチは軽いがドアノブの操作感も開閉感もじつにスムーズ。閉まる際の手応えも滑らかだが、バスッと重厚な音を響かせ、建て付け精度や機密性の高さをうかがわせる。

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インテリアの質感も高い。インパネはスポーティなメルセデスと共通イメージ。センターコンソールは3つの円形エアアウトレットが上部にあり、その下にはエアコン操作スイッチが横一列に配置される。そのさらに下は中央にアナログ時計、左右にハザードなどをまとめた列がある。そこからシフトノブやタッチパッド付きコントローラーなどを含むセンタートンネル、アームレストまでは一体型で優雅なラインを描いている。

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■インプレッション
エンジンを始動するには、あいかわらずキーをステアリングポスト脇に差し込んで回すタイプが標準。プッシュボタン式が当たり前になってきているが(もちろんオプションで選択可能)、この方がキーの置き場に困ったり、鞄のどこにしまったかわからなくなったりしないので好みだという人もいるだろう。

まず最初に試乗したのはC400だ。V6型エンジンはアイドリング音がほとんど聞こえないぐらいに静かながら、たっぷりとしたトルク感とともに滑らかに走りだした。スタート地点の駐車場から路上へ出る際に段差を越え、最初の交差点を曲がる頃にはすでに、いいクルマに仕上がっている予感が確信にかわりはじめていた。タイヤの転がり方、サスペンションの動きなどが、おそろしく滑らかでスムーズなのだ。

C400
メルセデス・ベンツC400

市街地を走り、高速道路に乗り入れていってもその印象はかわらない。路面が細かく荒れているところでもカーペットを敷いたかのようにまろやかで、Sクラスもかくや、と思わせるほどに快適だ。速度をあげて様々なバンプやうねりに遭遇しても、入力をしなやかに受け止め、フラットな姿勢を保ち続け、200km/h付近でも高い安心感とともに突っ走っていける。

従来モデルはアジリティ=俊敏性の高さに注力してスポーティさを強調するあまり、初期モデルでは乗り心地に硬さがあったが、新型はこれぞメルセデス・サルーンといったテイストだ。

日本上陸が楽しみになるスポーツ性の高さ

その後にいくつかのモデルに乗り換えてみると、装着タイヤによってフィーリングに多少の違いがあることも知った。18インチのノン・ランフラット・タイヤは素晴らしい乗り味だったが19インチのランフラット・タイヤは少し落ちる。低速域でタイヤのあたりに硬さがあり、中・高速域ではダンパーをソフト寄りにしておくと、入力に対してバネ下の重さや硬さによってボディがほんの少しあおられるようでフラット感が薄くなる。これはダンパーをハード寄りにすれば解決するが、乗り味は引き締まった感覚になる。

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ドライブモードはAGILITY SELCTスイッチでコンフォート、ECO、スポーツ、スポーツプラスと切り替えられるがダンパー特性は2段階だ。

新たに電動機械式ダイレクト・ステアリングが採用されているが、フィーリングはまずまずといったところ。中立付近の味付けは良好で、高速道路で安心感のある直進性を実現。切り込んでいくときにほんの少しフィードバックが薄いようなところも見受けられたが、これぐらいならばすぐに熟成されそうな程度だった。

アジリティについても大きな進化を果たしている。フロントサスペンションが従来の3リンクから4リンク(ハイマウント・ダブルウィッシュボーン)独立懸架へと変更されており(リヤはマルチリンクを最適化)、コーナーに対してステアリングを切り込んでいくと容量がたっぷりとしていてポテンシャルが高まっていることを実感できる。コーナリング中にバンプに遭遇したときのいなし方も巧みになっていて安心感が高く、ストロークするほどにキャンバーが増大する設定でグリップ感も頼もしい。今回はあまりハードに攻め込むステージがなかったので断言はできないが、スポーツ性については定評のある3シリーズともいい勝負をしそう。日本上陸時にきっちりと比較テストをするのが楽しみだ。

C250BT
メルセデス・ベンツC250BlueTEC
C250
メルセデス・ベンツC250

C250の直4・ガソリンターボはパフォーマンス的には必要十分以上ではある。NAなら3.5Lなみのトルクを1000rpm台から発揮するのだから当然ではあるが、官能性などはあまりないというのが正直なところ。メルセデスの直4・ガソリンターボは、アクセル開度が浅いところだとなぜだかトルク感がスペックから期待するほど得られず、つい深く踏みがちになる傾向にある。それに比べるとC400はいかにも高級車といった感じの豊かでリニアなトルク特性と、高回転まで引っ張ったときの鋭さが両立されており、贅沢かつスポーティ。やはり大排気量NAはいいなと思わされる。

それよりも食指が動いてしまうのがC250BlueTECだ。ディーゼルの低回転・大トルクぶりをいかんなく発揮して超高速巡航を楽々とこなし、加速にも大いに余裕がある。燃費に優れるだけではなく、贅沢な雰囲気を持っているのだ。メルセデスのV6型ディーゼルは静粛性の高さや低振動に定評があるが、それは直4でもかわらなかった。BMW 320dに比べると、アイドリングストップからの再始動や発進加速などの快適性で大いに差をつけている。日本に導入されるのはC220BlueTECになるかもしれないが、それでもパフォーマンスは十分だろう。

cクラス

新型Cクラスは快適でありながら抜群の安心感を誇る操縦安定性といったメルセデス・サルーンに期待される特性を持ち、アジリティも進化。もちろん環境性能や安全性能も最高を目指して開発されてきた。いたずらにキャラクター付けを行なうことなく、全方位的に全力投球で進化させてきたことが印象深い。強力なライバル達に対抗するにはそれが必要だからだが、かなり優位になりそうだ。一つ心配なのは、デザインも含めて身内のEクラスを脅かしてしまいそうなことぐらいだろう。

石井氏
石井昌道氏が試乗を担当した。新型Cクラス、特にBlueTECに大きく心を動かされた
走りCクラス
新型Cクラスはグリル内スリーポインテッドスターのみ。「それが少しだけ残念」と石井氏

 

日本へは2014年夏頃に上陸の見込み。まずはC180、C200、C250の直4・ガソリンターボから導入され、クリーンディーゼルやハイブリッドなどは少し遅れてラインアップされるようだ。一つ残念なのは、フロントグリルに大型スリーポインテッドスターがつく仕様となること。

過去にエレガンスとアバンギャルドを用意したら前者はあまり売れなかったからだが、今度の新型Cクラスはスリーポインテッドスターのマスコットがボンネット上に配置される仕様のほうが、Sクラスっぽくて立派に見えるので、それなりに人気がでるように思えるのだが…。

メルセデス・ベンツ公式サイト

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