【まとめ】ジュネーブモーターショー2017で発表された新型車の傾向

2017年3月9日から一般公開が始まったジュネーブ・モーターショー。すでに各メディアで紹介されているように、各社から様々なニューモデルが発表され、今年も盛況そのものでした。<レポート:北沢剛司/Koji Kitazawa>

なかでも今回気になったのは、ドイツのメーカーからファストバックとスポーツワゴンの5ドア・グランツーリスモ・モデルが相次いで登場したこと。フォルクスワーゲンはアルテオン、ポルシェはパナメーラ スポーツツーリズモ、そしてダイムラーは、メルセデスAMG GT コンセプトを発表しました。5ドア・グランツーリスモというニッチなカテゴリーが今後激戦区になることが予想されます。

■開放感と広い空間が特徴のフォルクスワーゲン アルテオン

まず、フォルクスワーゲンが発表したアルテオンは、パサートの上に位置付けられる新たなプレミアムモデル。現在ラインアップから外れた4ドアクーペのフォルクスワーゲン CCの実質的な後継モデルとなります。


フォルクスワーゲン CCが4ドアクーペの流麗なスタイリングを特長としていたのに対して、アルテオンは5ドア・グランツーリスモとして登場。クーペのようなファストバックデザインと大きな開口部が特徴的なリヤハッチにより、スポーティかつエレガントなデザインと、サルーンを上回る機能性を兼ね備えています。


VW アルテオンは、同社のMQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)を基本設計としています。フロントに横置きされる直列4気筒エンジンは、ガソリンエンジンのTSIとディーゼルエンジンのTDIをそれぞれ3種類ずつ用意。2.0 TSIのもっともパワフルな仕様では、最高出力280 PSを発揮し、7速DSG+4MOTIONと組み合わせられます。

インテリアはパサートに準じるクリーンなデザインであり、デジタルメータークラスターも設定されます。


ディメンションは競合する5ドアモデルに比べて全体的に大きく、アウディでいえばA5 スポーツバックとA7 スポーツバックの中間に位置する絶妙なサイズです。

ホイールベースは、VW パサートより51 mm長い2,841 mm。これは競合するアウディ A5 スポーツバック、BMW 4シリーズ・グランクーペのホイールベース2,810 mmより31 mm長く、後席のレッグスペースは、ひとクラス上の余裕さえ感じるほど。さらに全高も競合車より30 mm以上高いため、ヘッドクリアランスの余裕が少ない5ドア・グランツーリスモとしては、比較的余裕があります。

VW アルテオン VW パサート アウディ A5 Sportback 2.0 TFSI quattro BMW 420i Gran Coupé M Sport
全長 4,862 mm 4,785 mm 4,730 mm 4,670 mm
全幅 1,871 mm 1,830 mm 1,855 mm 1,825 mm
全高 1,427 mm 1,465 mm 1,390 mm 1,395 mm
ホイールベース 2,841 mm 2,790 mm 2,810 mm 2,810 mm
ラゲッジスペース 563-1,557 L 586-1,152 L 480-1,283 L 480-1,300 L
乗車定員 5名 5名 4名(日本仕様) 5名

■アウディ A5 スポーツバックと比較

会場にはちょうどアウディ A5 g-tron スポーツバックが展示されていたので、リヤコンパートメントとラゲッジスペースをVW アルテオンと比較してみました。

VW アルテオンのリヤコンパートメント
アウディ A5 g-tron スポーツバックのリヤコンパートメント

VW アルテオンは、レッグルームに余裕があることが一目でわかります。センターコンソールとリヤシート間の距離でいえば2倍近い差があり、ホイールベースの長さがリヤコンパートメントの快適性につながっています。

VW アルテオンのリヤシート
アウディ A5 g-tron スポーツバックのリヤシート

VW アルテオンはバックレストが寝ているため、ゆったりとした姿勢で座ることができ、なおかつヘッドクリアランスも有利です。身長173cmでやや胴長体型の筆者の場合、天井に頭がつくことはありませんでした。実際に着座して印象的だったのは、面積の広いクォーターウインドウによる開放感の高さ。太いCピラーのアウディに対して、細身のCピラーを採用したVW アルテオンは、リヤドアから連続したウインドウが明るい印象をもたらしています。

VW アルテオンのラゲッジスペース
アウディ A5 g-tron スポーツバックのラゲッジスペース
アウディ S7 スポーツバックのラゲッジスペース

ラゲッジスペースについても、VW アルテオンは前後方向の長さが印象的でした。ちなみにアウディ A5 スポーツバックは天然ガス仕様のg-tronのため、フロア形状などは日本仕様と一部異なります。VW アルテオンのラゲッジ容量は実にアウディ A7 スポーツバックをも上回り、このカテゴリーのベンチマークといえる広さを確保していました。

■敵は身内にあり?待望のスポーツツーリスモを追加したポルシェ・パナメーラ

ポルシェ・パナメーラ スポーツツーリスモは、2012年にコンセプトモデルとして発表され、大きな反響を得たのは記憶に新しいところ。ジュネーブで発表された市販モデルでは、クーペスタイルのパナメーラに対し、Bピラー以降のデザインを変更することで、機能性の高いスポーツワゴンスタイルを実現。設定されるエンジンは現在発売中のパナメーラと同じで、ホイールベースを含む各部のディメンションも共通です。



ポルシェ・パナメーラ・スポーツツーリスモ ポルシェ・パナメーラ ターボS E-Hybrid ポルシェ・パナメーラ ターボS Exective
全長 5,049 mm 5,049 mm 5,199 mm
全幅 1,937 mm 1,937 mm 1,937 mm
全高 1,428 mm (1,432 mm:Turbo) 1,427 mm 1,432 mm
ホイールベース 2,950 mm 2,950 mm 3,100 mm
ラゲッジスペース 520-1,390 L 405-1,245 L 495-1,483 L
乗車定員 5名 4名 4名

電動開閉式のリヤスポイラーを装備するパナメーラに対して、パナメーラ スポーツツーリスモではルーフスポイラーを装備。速度と走行モードに応じて角度が自動調整され、走行安定性を高めます。ちなみにスポーツサルーンのパナメーラ ターボのウイングは分割しながら拡張しますが、スポーツ ツーリスモでは拡張機能はありません。

運転席からの眺めはパナメーラと変わらない

ジュネーブでは、パナメーラの新たなトップモデルとして、パナメーラ ターボS E-ハイブリッドがデビュー。発売中のパナメーラ 4 E-ハイブリッドとともに展示されていました。そこで、これらのパナメーラとパナメーラ スポーツツーリスモのリヤコンパートメントおよびラゲッジスペースを比較してみました。

パナメーラ 4 E-ハイブリッドのサイドビュー
パナメーラ ターボ スポーツツーリスモのサイドビュー

ポルシェ 911の流れを汲む伝統のルーフラインを採用したパナメーラに対して、スポーツツーリスモではルーフラインを後方に延長することで新たなボディスタイルを形成しています。ルーフラインの変更に伴いCピラーも高くなったため、後席への乗降性も向上しています。

パナメーラ ターボS E-ハイブリッドのリヤシート
パナメーラ 4S スポーツツーリスモのリヤシート

フル4シーターで独立したリヤシートを備えるパナメーラに対して、スポーツツーリスモでは4+1の5人乗りが標準。後席は使い勝手の良い40:20:40の分割可倒式で、オプションのラゲッジコンパートメントマネージメントシステムを装備すれば、リヤシートまたはフロントシートの背面にパーティションネットを張ることもできます。

5ドア・グランツーリスモは総じてヘッドクリアランスの余裕が少なく、身長175cmの人が乗車した場合、天井に髪の毛が触れるか触れないかというケースが多く見られます。しかし、ルーフを後方まで伸ばしたパナメーラ スポーツツーリスモはヘッドクリアランスの余裕が大きく、パナメーラとの差は歴然としています。オプションで4シーター仕様を選択すれば、後席の快適性においても標準のパナメーラを上回る可能性があります。

パナメーラ ターボS E-ハイブリッドのラゲッジルーム
パナメーラ ターボ スポーツツーリスモのラゲッジルーム

写真のパナメーラはハイブリッドモデルのため、ラゲッジルーム容量は標準の495Lから405Lに縮小されており、スポーツツーリスモのラゲッジルーム容量:520Lに比べると大きな差があります。それを差し引いても、スポーツツーリスモの広さは一目瞭然。ラゲッジルームにはバックレストを倒すスイッチも装備されます。ちなみにスポーツツーリスモのローディングフロアに装備される2本のレールは、オプションのラゲッジコンパートメントマネージメントシステムに含まれています。

ラゲッジスペースの拡大に加えて、リヤシートのヘッドクリアランスでもアドバンテージがあるパナメーラ スポーツツーリスモは、パナメーラやカイエンではカバーできないユーザー層をも取り込めるモデルとなっていました。

■スーパースポーツの世界にも5ドアモデルが進出か?メルセデス AMG GT コンセプト

ダイムラーも5ドア・グランツーリスモの新作を発表しました。メルセデス AMG GT コンセプトは、その名の通り、メルセデス AMG GTをベースにしたコンセプトモデル。中身は4.0L V8ツインターボエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドスポーツカーです。そしてシステム合計出力は600kW(約815PS)近くに達し、0-100km/h加速は3秒以下と発表されています。


AMG GTの4ドア版(実際にはハッチゲートがあるので5ドアですが)という意表を突いたキャラクターと、流麗なスタイリングは、会場内でも大きな注目を浴びていました。市販化についての正式なアナウンスはありませんが、少なくとも既存のパワートレーンを流用して製作するのであれば、その可能性は極めて高いといえるでしょう。


スーパースポーツ級の動力性能を誇るフル4シーターモデルとしては、現在フェラーリのGTC4Lusso/GTC4Lusso Tと、アストンマーティン・ラピード、ポルシェ・パナメーラが発売されています。そこにメルセデス AMG GTの5ドア・グランツーリスモが加わると、このカテゴリーに4ドアクーペとスポーツワゴン、そして5ドア・グランツーリスモが入り乱れる展開になります。

奇しくも、ジュネーブではアストンマーティンが新たなスポーツモデルとして「AMR」ブランドを発表。そのコンセプトモデルとしてラピード AMRを展示していました。ラピード AMRは、600PSの6.0L自然吸気V12エンジンを搭載し、最高速度は340km/h近くに達する過激なモデル。すでに210台の限定生産が決定しています。

アストンマーティン・ラピード AMR

世界最速クラスの4シーターモデルにも進出しそうな5ドア・グランツーリスモ。そのトレンドがドイツ車以外にも波及していくのか、今後の動向に注目したいですね。

ジュネーブモーターショー2017

COTY
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