マセラティ ギブリS Q4試乗記 ドイツ車とは違う気持ちよさを感じさせるテクニック満載

マニアック評価vol421
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マセラティとしては身近に感じられる価格設定のギブリだが、ディーゼル搭載モデルも国内デビューしたばかり。官能的とよく表現されるマセラティのパフォーマンスを改めて味わってみた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

2013年末に国内導入されたギブリは、これまでの販売台数を大幅に伸ばす使命を背負ってグローバルデビューしたモデルだ。もちろん、ドイツプレミアムモデルの対抗馬としてイタリアンテイストをもってデビューしている。

試乗車はギブリS Q4。最もスポーティな最上級モデルだ
試乗車はギブリS Q4。最もスポーティな最上級モデルだ
4WDのQ4はFRベースのオンデマンド式のシステム
4WDのQ4はFRベースのオンデマンド式のシステム

ドイツ車からの乗り換えユーザーも視野に入れるのは当然であり、ドイツ車を上回る魅力、ドイツ車にはない魅力をもっているというのがマセラティ・ギブリだろう。価格帯からすれば、メルセデス・ベンツEクラス、BMW5シリーズ、アウディA6の上級モデルでDセグメントサイズとなるが、ギブリのボディサイズは全長4970mm×全幅1945mm×全高1485mm、ホイールベース3000mmというラージサイズだ。

ロングノーズ、ショートデッキのスポーティなスタイル
ロングノーズ、ショートデッキのスポーティなスタイル
フロントまわりで特徴的なのはLEDポジションランプ
強烈な個性を発するフロントまわり。LEDポジションランプも特徴的だ
Cピラーのデザインとサッシュレスウインドウがクーペのようなスタイル
Cピラーのデザインとサッシュレスウインドウがクーペのようなスタイル
テールランプもLED。リヤに向かって絞り込まれたフォルムがスポーティ
テールランプもLED。リヤに向かって絞り込まれたフォルムがスポーティ

搭載するエンジンはV型6気筒3.0Lツインターボでグレードにより出力が330ps/500Nmと410ps/550Nmの2種類があり、試乗車は後車の出力となる。60度のV型エンジンはフェラーリとの共同開発でドイツ車の目指す滑らかでしっとりとしたエンジンではなく、ラフな回り方をしつつグワンと回転が跳ね上がり、いかにもイタリア高性能エンジンであることを主張している。

ギブリSの3.0L・V6は最高出力410psのハイパワーバージョン
ギブリSの3.0L・V6は最高出力410psのハイパワーバージョン

だから、走行中たとえ20km/hくらいの速度でもエンジン音が気持ちよく聞こえ、もちろん、踏み込めばどの回転域でも低音を重視した気持ちのいいサウンドを奏でている。ドイツ車で強いて言えば、AMGやMのようなエボリューションモデルだけが持つ世界だろう。とは言えギブリのサウンドは車室内にはそれほど大きな音としては侵入してこない。このあたりは控えめ、というよりキザだ。

トランスミッションは高級車御用達のZF製の8速ATで、変速をまったく感じさせない滑らかな変速をし、ステアリングポストに固定されたパドルシフトがスポーティ度を上げるのに一役買っている。実用的には小ぶりで高品質なパドルをステアリング本体に取り付けているドイツ勢とは差別化できる。ギブリのパドルは大きくウインカーレバーの操作にも邪魔と感じるほどで、でもそれがまたスポーティのイタリア流表現だと思う。

そして試乗車はオンデマンド式のAWDでもある。通常はFRで駆動し、スリップやミュー変化に応じてフロントを駆動し、安定方向に姿勢を保つ。もちろん、試乗中にFRなのかAWDなのかを感じることはなく、ドイラバーはギブリのもつキザな世界観を堪能するのが楽しい。

エクステリアのフロントグリルには、他のマセラティと同様にA6GCSベルリネッタからインスパイアされた、あるいはオマージュなのか伝統的なオーバル型のグリルにトライデント・エンブレムが据えられている。フェンダーには3連のエアダクトとCピラーにも同様にトライデントが配される。

ロングノーズ、ショートデッキというスポーティセダンのギブリは、デザインを優先したエクステリアで、多少使いづらくてもカッコ良ければいいというイタリアンらしい割り切りも感じられる。実際後席のスペースはボディサイズのわりに、決して広いものではなくCセグメントレベルのスペースなのだ。でも、ルックス重視というわけだ。

最高級なソフトレザーで覆われたインパネ。インテリアカラーは豊富に用意される
最高級なソフトレザーで覆われたインパネ。インテリアカラーは豊富に用意される
中央にカラー液晶ディスプレイを配置したメーターパネル
中央にカラー液晶ディスプレイを配置したメーターパネル
8.4インチの大型タッチコントロールディスプレイ。上部には伝統のアナログ時計
8.4インチの大型タッチコントロールディスプレイ。上部には伝統のアナログ時計

ドライバーズシートやダッシュボードなどはレザーで覆われ、ドアを開けた瞬間からレザーのいい匂いがしている。試乗車はオールブラックのレザーに赤のステッチを使った仕様で、ステッチにもこだわっていることが一目瞭然。

インテリア全体は意外にもシンプルで、ゴテゴテとしていない。余談だが、ナビゲーションは使いやすい。インポートの高級車はナビの使い勝手が二の次にされているケースが多いが、ギブリのナビは説明書ナシに直感的にすぐに利用できた。

シートは上質な本革を用いた質感の高いもの
シートは上質な本革を用いた質感の高いもの
リヤシートも居住性と快適性が高い
リヤシートも居住性と快適性が高い
ドアトリムもソフトレザー仕立てでステッチが質感を高める
ドアトリムもソフトレザー仕立てでステッチが質感を高める
ステッチに合わせたレッドのトライデントが刺しゅうされる
ステッチに合わせたレッドのトライデントが刺しゅうされる
リヤのアームレストはドリンクホルダーと収納ポケット付き
リヤのアームレストはドリンクホルダーと収納ポケット付き
スポーツサルーンとはいえトランク容量は十分確保されている
スポーツサルーンとはいえトランク容量は十分確保されている

センターにはお約束のアナログ時計が埋め込まれていて、キザなのか、ダンディズムなのか、とにかく男と女を妄想させるインテリアだ。

試乗車は19インチのスタッドレス仕様なので、乗り心地を語るには都合が悪い。だが、スタッドレスでも引き締まったサスペンションであることは感じる。夏タイヤでは20インチを装着しているので、しっとりとした乗り心地というより、スポーツカー的な硬めのサスペンションであることが容易にイメージできる。

今回の試乗車は19インチのスタッドレスを装着
今回の試乗車は19インチのスタッドレスを装着
ブレーキキャリパーはレッド塗装でされる
ブレーキキャリパーはレッド塗装でされる

全体には剛性感も高く、ハンドリングもスポーティセダンらしく機敏で気持ち良い。それでいてドイツ車のまじめなクルマにはない、艶を持っていることは間違いない。それは乗る人それぞれが感じるいわばフィーリングの世界で、ひとつひとつを説明して理解できるものでもない。特に、インテリアの匂いと音に関してはドイツ車とは明らかに異なり、ハンドリングや乗り心地、加速感、減速感、コーナリングフィールといったものはドイツ車たちと同じベクトルに載っている、というセンスでつくられたのがマセラティ・ギブリだ。

■価格(消費税込み)
ギブリ:915万円
ギブリディーゼル:933万円
ギブリS:1054万円
ギブリS Q4:1135万円

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