レンジローバー・イヴォークPHEV 感性に響くモデルづくりのうまさ【試乗記】

ラグジュラリー・コンパクトSUVのレンジローバー・イヴォークに試乗してきた。そのスタイリッシュなデザインは2010年にデビューした時から話題で、SUVの概念を変える高いデザイン性で注目を集めていた。

24MYでフェイスリフトがあり、22MYからPHEVが加わっている

2019年に2代目へとフルモデルチェンジを行ない、ホイールベースも+20mm伸ばされ、プラットフォームも変更されている。いわゆる電動化への対応を見据えたモデルチェンジで、2022年にはプラグインハイブリッドも投入されている。

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2025MYの受注も開始されたところだが、現在のラインアップで、パワートレインは4パターンを用意。そして、個々に装備が異なるグレード設定がされている。

テールランプのデザインも変更された

エンジンラインアップを見ると、2.0L4気筒ディーゼルターボのマイルドハイブリッド搭載は、150kW(204ps)/430Nmの出力。ガソリンエンジンは2.0L4気筒ターボで出力違いの2タイプを用意。エントリーモデルが147ps(200ps)/320Nmで、高出力タイプが183kW(249ps)/365Nmとなっている。

そして今回試乗してきたプラグインハイブリッドは3気筒1.5Lガソリンエンジン+ターボにモーターを搭載したモデルで、227kW(309ps)/540Nmというスペックのトップグレードモデルになる。

試乗車は1.5Lターボ+モーターのPHEVで8速ATを搭載

レンジローバーのDNA

イヴォークはレンジローバーシリーズの末っ子で、最もコンパクトなサイズ。トップモデルは言わずもがなのレンジローバーで、続いてレンジローバー・スポーツ、ヴェラール、そしてイヴォークというヒエラルキーだ。

したがって、レンジローバーのDNAやフィロソフィを多分に含んでおり、リダクショニズム(reductionism)、日本語には還元主義と訳されているが、この考えのもとデザインされ、ラグジュアリーブランドであることをさまざまなポイントで感じることができる。

走行中のドアハンドルは格納されフラッシュサーフェイスになる

エクステリアデザインは、非常にデザインコンシャスであることを感じる。リダクショニズムは削減などを意味し、不要なものは削除。例えばドアハンドルはドア開閉時以外不要なので、走行中はフラッシュサーフェイスな処理にする。と言った手法だ。

そしてボディパネルの隙間は小さく、切れ目のないウエストラインや伝統のクラムシェルボンネットなども、アップル製品のようなソリッドでありながら、流麗さ、面の美しさを表現するデザインに生まれ変わっているのだ。

2024年には初めてマイナーチェンジが2代目に行なわれており、ヘッドライトおよび、グリル、テールランプのデザインが変更され、より先進的でスタイリッシュな印象だ。

ヘッドライト、グリルデザインが変更された

SUVでありながら、クーペスタイルのルーフラインは初代から継承され、またフローティングルーフも印象的。ショートオーバーハングに大径タイヤの存在感も強烈な印象を残す。

ルーフはカッパーに塗られ、よりフローティング感が増している

インテリアはMCによってフィジカルスイッチが消滅し、Pivi Pro(センターモニター)に集約された。これもリダクショニズムの現れの一つであり、大型のセンターモニターはダッシュボードの形状に合わせるように反り返ったカーブドディスプレイで斬新。ダッシュボードやセンターコンソールからスイッチは消え、スッキリとした印象になった。

スッキリとしたインテリアからは清涼感すらある

またシフトレバー形状も変更され、変形長方体から変形直方体になり、グリップしやすい形状になった。インテリアの印象は、シンプリストの潮流に乗ったデザイン性を感じさせ、未来感も同時に感じるデザインになった。こうしたデザイン性の高さもレンジローバーの名の通り感性に響き、心に残るものだ。

プラグインハイブリッドの性能では、欧州車では標準的な装備の普通充電のみの設定になっている。ハイスピード走行ができる欧州では高速はICEのほうが効率はいいという考えが浸透しており、リージョナルな使い方をするときはEV走行が効率的という判断だ。

バッテリーは15kWhでEV航続距離は65.1kmと日常使いなら十分な航続距離。そして出力はエンジン単体で200ps/280Nm、モーター出力は80kW(109ps)/280Nmでシステム合計では309ps/540Nmという大パワー/大トルクを持っている。もちろんAWDで8速ATが組み合わされている。

今回の試乗では、静粛性の高さやウルトラスムースな乗り心地が強く印象に残った。こうしたダイナミック性能でもレンジローバーのDNAを感じさせるもので、20インチの大径タイヤを履いているものの、乗り心地などへのネガなものは一切感じることはなかった。

とりわけ、EV走行している時の気持ちよさは高級車である満足感が得られ、シンプルなインテリアからは清涼感すら得られるのだ。なめらかさとしっとり感はブランドに相応しく、軽めの操舵フィールも妙にスポーツ・ドライブを意識させない奥ゆかしさが感じられる。アクセルへのレスポンスは鋭くEVらしさを発揮し、540Nmの大トルクは2.2トンもある重量をいとも容易く加速させるスポーティさは羊の皮の表現を思い出す。

エンジンが稼働するとサウンドが聞こえてくる。3気筒から想像するノイズはなく、心地よいエンジンサウンドには驚かされる。アクセルペダルと連動して力強さが増し、音を聞かせる発想があることを感じる。それでも音は控えめで、決してスポーツカーのような存在を誇示する音ではない。強いて言うならドライバーだけが楽しめる音のようにも感じられた。

ラグジュアリー・コンパクトSUVのパイオニアの進化は、電動化されていく中でも極めて高いレベルで技術革新を取り込み、そして人の感性に響くものづくりのうまさに感心した試乗だった。

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