2017年5月から受注開始した新型ディスカバリーは、7人乗車ができるフルサイズSUVとして5代目がデビューした。これまでオフロード性能で高い評価のあるディスカバリーだが、5代目はオンロード性能にも磨きをかけ、オン、オフ両方でランドローバーブランドに相応しい高級なSUVとしてフルモデルチェンジをした。その新型ディスカバリーにオン、オフ両方の試乗ができたのでお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
ディスカバリーは1989年に初代がデビューしている。当時はキャメルトロフィーに採用されるなど、道なき道を走破するアドベンチャーに最適なモデルとして認知されたが、その後、モデルポジションも徐々に変化し、現在はフルサイズのラージクラスSUVで、多用途性を製品特徴とするカテゴリーのトップブランドという位置づけになっている。
ランドローバー社のモデルだから当然、高級ブランドであり、豪華であることは言うまでもないが、5代目となったディスカバリーはさらに、多用途性を前面に打ち出したユーティリティを視野にいれた高級車というポジションにいる。ランドローバー社のアイデンティティは、揺るぎない能力を持つ車両を製造し、それぞれの世界で多くのことを成し遂げられるようにすることで、ディスカバリーの開発コンセプトは世界で最も多用途性に優れたSUVということだ。
ガソリンとディーゼルの両方のモデルに試乗できた。ガソリンはV6型3.0Lスーパーチャージドで340ps/450Nmというスペック。ディーゼルは同じくV6型3.0Lのターボで、258ps/600Nmという大トルクを発揮する。試乗はオンロードでディーゼル、オフロードでガソリンを選択した。
最初に試乗したのがディーゼルでのオンロード試乗。最大のトピックは「ディーゼルなのか、ガソリンなのか区別がつかないこと」だ。クルママニアの間では、やや聞き飽きた表現だろうが、今回は驚いた。というのは、これまでガソリン車なみに静かであることで、そう表現してきたが、アイドリング時の車外の音や、低速時のゴロゴロ感など、どこかディーゼルを分からせる音がしていた。
しかし、ディスカバリーに搭載するディーゼルは車外で聴いていてもどっちか分からないのだ。タコメーターを見ると6000rpmまで刻まれ5000rpm弱でレッドゾーン表示。微妙なところだ。ちなみに、ガソリン車は8000rpmまであり、7000rpm手前でレッドゾーンとなるので、比べてしまえば一目瞭然なのだが、単体だと微妙だ。
走り出しから40km/h近辺までの低速域では、ディーゼルであることを感じさせるモデルが他車に多いが、これがまた、アクセルを踏んでも分からないほど、滑らかに走る。せいぜい2/8程度のスロットル開度では、区別は不可能と言っていいだろう。しかし、アクセルを踏み込むと600Nmの大トルクが低回転から立ち上がるので、ディーゼルらしさを感じるが、これも経験値によるジャッジだ。
車速を上げ、ワインディングを走ると、それでも気持ちよく走る。逆に少しのアクセル開度でトルクが出るので、かえって走りやすいと感じるほどだ。パドルシフトが装備されていることが納得できる。
車高の高いディスカバリーだがエアサスペンションを装備し、気持ちよくワインディングを走る。ロールはしなやかに始まり、ランドローバーらしくストローク感のあるサスペンションだと感じる。しかし、ふにゃっとした感じは全くなくフラット面の力でクルマをロールさせていくイメージのため、頭が動かされている印象はない。言い換えれば、オンロードにある凸凹のレベルは常にしなやかにギャップを超え、強い入力もいなしていく乗り心地があり、ランドローバーらしいアシと言える。
また、このエアサスペンションは105km/h以上で自動で13mm車高が下がる機能もあり、オフロード以外でもいろいろ活躍する。
例えば、停車してエンジンを切るかシートベルトを外すと車高を15mm下げ、さらにドアを開けると25mm低くなり、乗降性をよくするオートマチック・アクセスハイト機能を備えている。もちろん悪路では、50~80km/hで轍のある荒れた路面を走行する場合は40mm車高を上げ、さらに50km/h未満で過酷なオフロードを走行する場合や川を渡る場合には最大115mmまで車高を上げることが可能なのだ。(先代モデル比+10mm)
ガソリンエンジンに乗り換え悪路走行の試乗をしてみた。場所は夏場のスキー場ゲレンデで未舗装。上り坂、下り坂もそれなりに斜度がある。タイヤは特殊なものではなく、通常のオールロード用のままだ。
乾いた土埃りが立つような斜面で、登り始めると4輪ともスリップすることなく確実にグリップして登る。エンジン出力、トランスミッション、デファレンシャル、サスペンションのセッティングを自動で行なうテレインレスポンス2オートを使いスキー場を登る。下り坂ではヒルディセント・コントロールが機能し、アクセルペダルもブレーキペダルに触れることなく設定した速度で安定して下る。
さらにオールテレイン・プログレスコントロール(ATPC)を稼働させると、すべてが自動で設定され安定した安心の悪路走行ができる。ヒルディセント・コントロールの逆、登りの場面でも設定速度で登り、タイヤは1mmもスリップしない。もちろん、ミューは低そうなのだが。そうした走行中にアクセルを踏むと、そのアクセル開度が優先されクルマは加速する。アクセルから足を外すと元の設定した速度で走行を続けることができる。
これは下りでも同様で、設定した速度では速すぎると判断したときにブレーキを踏むが、ブレーキを離したまま、設定した速度で下り始めるので、使い勝手が非常にいいだろう。このATPCを稼働して悪路を走るとセンターデフのロック状態がモニターで表示される。100%のデフロックからオープンまで、路面とグリップ状況によって瞬時に変化し、グリップ力を確保していることが分かる。
また、デモンストレーションとして人工的なモーグルを走破したが、このときのアプローチアングル、ディーパーチャーアングル、ランプアングルを踏まえ、ライバルとされるモデルでトライしたが、一台もクリアできなかったという話もあった。そしてこのモーグルのように、車体が斜めになり、片輪が接地できないような状況は、ボディに強いストレスがかかり、きしみ音などがあってもおかしくないが、そうした変化はまったく見られなかった。
ストロークのあるサスペンションと安定した走行姿勢のため、外から見るほど車内は水平が保たれるのか、あまり感動がない。というほど安定してモーグルをクリアできるのだ。
新型ディスカバリーはボディ85%がアルミを使用したモノコックで、先代比較で360kgもの軽量化を果たしている。また4WDは機械式のセンターにデフを持つコンベンショナルな構造だが、制御はフィードフォワード制御を入れた最先端のシステムとなっている。組み合わされるトランスミッションは高級車御用達のZF製8速ATを採用している。
細かな装備関連に関しては既報でこちらを参照してほしい。