2013年2月20日、ランドローバー社はレンジローバーに新開発のV6型スーパーチャージド・ガソリンエンジン搭載モデルを追加したと発表した。これにより、5.0LのV8型エンジンと3.0LのV6型過給エンジンという2種類のエンジン・ラインアップとなる。ただしこのV6型モデルのデリバリーは今秋以降となる予定だ。
3.0LのV6型スーパーチャージド・エンジンは、直噴、可変バルブタイミング、アルミニウム構造といった主要な技術の多くはV8型モデルと共有だ。ランドローバーのエンジニアは、5.0L・V8型ーパーチャージド・エンジンで得た経験により、効率の高いスーパーチャージング・システムの領域を熟知し、そのノウハウをこのV6型エンジンにも採用している。
6500rpmで最高出力340psを発生するこの3.0L・V6型スーパーチャージド・エンジンは、全回転域にわたってフラットなトルクが得られ、3500rpmから5000rpmの間で最大トルク450Nmを生み出す。新開発されたクアッド(4本)カムのV6型エンジンは、V8型エンジン同様にオールアルミニウム製で、クロスボルト締めされたメイン・ベアリングキャップが軽量鋳造ブロックの剛性をより高めている。
バルブは可変カムシャフト・タイミング(DIVCT)システムで制御され、この可変バルブタイミングシステムは、全回転域にわたり150度以上の作用角を実現し、どのエンジン速度でも常にパワー、トルク、燃費効率の最適化を図る。直噴システムはスプレーガイド式ダイレクトインジェクション(SGDI)で、最大で150barの圧力で燃焼室の中心に直接噴射する。このシステムはマルチ噴射を行い、空燃比が従来よりも安定するので、より効率の良い燃焼が実現している。圧縮比はV8型エンジンが9.5:1であったのに対し10.5:1に引き上げられている。
このエンジンの出力と高効率の鍵となっているのは、エンジンのV字部分に搭載されている最新型のルーツ式ツインボルテックス・スーパーチャージャーだ。これに合わせて水冷式インタークーラーを装備する。またスーパーチャージャーのブーストを電子的に制御するボッシュ製エンジン・マネジメントプログラムを採用しており、これにより最大20%の燃焼効率改善が実現したという。さらにレンジローバーに搭載するため、静粛さ、滑らかさを徹底追及するため、、フロントとリヤのバランサーウェイトが逆方向に回転するバランサーーシステムを採用。これにより、V8型エンジンと同レベルの滑らかさを実現している。
レンジローバーのクロスカントリー性能に配慮し、圧力鋳造で製造されたアルミ製オイルパンは従来よりも深い形状で、オイル吸出し口の形状も見直しが図られ、車体が最大45度前後方に傾いてもトラブルを生じない。さらに、900mmの渡河水深限界値に対応するため、このエンジンのベルトドライブ、オルタネーター、エアコンのコンプレッサー、パワーステアリングのポンプ、そしてスターターモーターにも防水処理が施されている。
ZF製8速ATとの組み合わせにより、0-100km/h加速は7.4秒。その一方でツインソレノイド式スターターと組み合わせたインテリジェント・ストップ&スタートシステムを搭載し、燃費を向上。CO2排出量は254g/kmで、5.0L・V8型自然吸気エンジンに比べ、15%向上しているという。
なおこの3.0L・V6型を搭載したレンジローバーの日本市場への導入は現段階では未定となっている。
■LR-V6 3.0L スーパーチャージド・ガソリンエンジン 技術仕様
・エンジンタイプ:縦置きV6 24バルブ・クアッド・カムDIVCT(デュアル・インデペンデント・バリアブル・カムタイミング)、直噴、スーパーチャージド
・総排気量:2995cc
・ボア×ストローク:84.5/89.0mm
・最強出力:340ps/6500rpm
・最大トルク:450Nm/ 3500-5000rpm
・0-100km/h:7.4秒
・最高速度:210km/h