2022年10月24日発表されたジープのフラッグシップモデルSUV「グランドチェロキー」とニューカマーSUV「ジープ コマンダー」に早速試乗する機会があり、お伝えしよう。
ニューカーマーのジープ コマンダーは、2021年末に生産終了となったチェロキーの後継モデルに位置付けられているモデル。そのジープ コマンダーの導入初期段階はトップグレードの「Limited」1グレードの展開でスタートする。価格は597万円(税込)+オプションのパノラミック・サンルーフ16万円となっている。
パワーユニットは2.0Lの4気筒ディーゼルターボ+9速ATを搭載する。ZFの9速ATはエンジン横置き用に開発したコンパクトなトランスミッションで、5速が1.000のギヤ比で6速以上はオーバードライブという、低燃費に貢献するパワートレインだ。駆動方式はもちろん4WD。
ボディサイズは全長4770mm、全幅1860mm、全高1730mm、ホイールベース2780mmのミッドサイズで、3列シートを備えるモデルとなっている。ミッドサイズだけに3列目のスペースはそれほど広くなく、大柄な大人では厳しく、小柄な人や子供用として利用する使い方になるだろう。
ジープブランドはプレミアムな方向へシフトしているため、新型コマンダーの内装の質感は高い。レザーを使ったダッシュボードやシルバーの加飾、ピアノブラックをうまく使い高級感を出している。
エクステリアではジープのアイコンでもある7スロット・グリルは象徴的で、グランドチェロキーをイメージしてのデザインということだ。真横から見るとステーションワゴンの背を高くしたデザインにも見えるボクシーなスタイルだ。フェンダーアーチには黒のフェンダーカバーがSUVのタフさを感じさせ、前後のバンパー下部にはアンダーガードも装備して本格4WDでもあることがわかる。
オーセンティックな乗り味
エンジンをかけてみるとディーゼル特有のサウンドを響かせながら走り出す。低速での走行でもディーゼルらしい音が聞こえている。しかし、高速道路に乗って走るとエンジン音はほぼ聞こえてこない。ディーゼルは回転数が低いため他の走行音に紛れてしまう。とはいえ、室内のロードノイズは抑えられており静粛性は確保できている。
ハンドリングは4WDらしいゆったりとした動きで、悪路を想定した仕上げになっている。SUVでもスポーティに走れるモデルが増えてきているが、本格4WDのパイオニアとしてオーセンティックな乗り味でまとめている印象だ。
そのため、全体的にオーソドックスな印象で、それは内外装デザインや走行フィールからも感じるものだ。
標準ボディ仕様のグランドチェロキー
グランドチェロキーは2022年2月にロングホイールベースの「グランドチェロキーL」が国内導入されているが、今回はスタンダードなグランドチェロキーの導入だ。ここでジープブランドのヒエラルキーを振り返ってみよう。
ジープといえばチェロキーとラングラーをイメージする人が多いと思うが、ヘッドライトが丸目系のラインアップのコンパクトモデルにレネゲードがある。その上のクラスにラングラーがあり、トップグレードにグラディエーターとなる。
そして長方形のヘッドライト系のコンパクトモデルがコンパスで、ミッドサイズに今回のコマンダー、そしてトップグレードにグランドチェロキーとグランドチェロキーLという大きさのヒエラルキーになっている。
つまり、今回のグランドチェロキーは長方形ヘッドライトのトップモデルというわけだ。ボディサイズもラージサイズで、全長4900mm、全幅1980mm、全高1810mm、ホイールベース2965mmとなっている。
2トンのボディをグイグイ引っ張る2.0Lターボ
搭載するエンジンは2.0Lのガソリンターボで出力は200kW(272PS)/400Nmに8速ATを搭載している。ちなみに燃料は無鉛レギュラー仕様となっているのはありがたい。
そしてガソリンターボ以外に、グランドチェロキーにはプラグインハイブリッドモデルもラインアップする。こちらはP1ポジションとP2ポジションにモーターを搭載している。しかしながら、こちらの導入は2023年春ということで、今回は2.0Lターボモデルに試乗した。
驚くのは2トンある車両重量なのだが、2.0Lターボは力不足を感じさせることなくパワフルに走る。そして、ターボの過給が加わった時の加速フィールが伝わり、かつてのターボ車のような加速を楽しめるのだ。近年排気量ダウンからのターボ仕様のため、高回転型ではなくなり、低速域での加速を補うターボが主流。そうした中、オールドスクルールな走りは懐かしくもあり、ワクワクもしてしまうものだ。
ハンドリングは意外とスポーティに感じられ、ジープ コマンダーが本格4WDで悪路も想定した設定なのに対して、グランドチェロキーはアーバンライクな使い方を想定しているのだろう。ステア操舵に対する車両の反応も早く、大きいボディを持て余すことなく扱うことができる。
インテリアはプレミムへシフトしているだけに高級感がある。ナビモニターはダッシュボードの上ではなく、埋め込み型でタッチ式を採用。グローブボックスからドアトリムへの回り込みには木目のパネルを使っている。またダッシュボードもソフトレザーで、昔から知っている高級車のインテリアという印象を持った。
エクステリアも真横から見るとやはりステーションワゴンのようなボクシースタイルで好ましい。いうまでもなく7スロットのグリルで存在感を示し、遠くからでもグランドチェロキーであることがわかるデザインだ。
いずれもジープブランドであることがひと目でわかる存在感があり、SUVのたくましい姿と欧州に寄りすぎないアメリカ車らしい走りを提供し、欧州プレミアムSUVとは異なる世界観のあるモデルと言える。