シボレー コルベット カブリオレ試乗記(V8型6.2L 8速DCT)アクセルを踏むのが楽しい

ようやく試乗できた。2019年7月に8世代目のシボレー コルベットが発表され、翌年の20年に国内でも受注が開始。だがコロナの影響もありなかなか試乗する機会がなかったのだが、21年秋、ついに待ちに待った試乗する機会を得たのだ。

いつの時代もコルベットはアメリカ車の中での存在感は強く、アメリカの強さを象徴するモデルで憧れのブランドでもある。そのコルベットがこのC8型で大変革を行ない、ミッドシップとなり、さらに国内には右ハンドルが導入されるというのだから気になる。

開発責任者のタッジ・ジェクター氏は「真のグローバルカーとするために右ハンドルを開発し、左右どちらでも全く同じドライビングエクスペリエンスが得られるように、それぞれのコンポーネントを新設計した」と話している。

さらにミッドシップとすることは長年の夢であり、ついに実現できたことも合わせて語っている。これまでのコルベットはロングノーズでフロントに大排気量エンジンを搭載し、リヤタイヤの直前に座ってドライビングをするスタイルであり、欧州のミッドシップに搭載した多くのライバル達と戦わなければならなかったわけだ。

ある意味でその壁が取り払われ、ガチ対決ができるということなのだが、コルベットはサーキットレースに勝つためだけではなく、ドライビングプレジャーを広い意味で満喫するために取られたレイアウトということなのだ。

だから、クーペモデルにはキャディバッグが2本収納できるし、ツーリングモードを選択すれば乗り心地や室内の快適性が高く、グランドツーリングカーという仕上げになっているのだ。

試乗したのはコンバーチブルモデルでパワートレーンは全モデル共通のV8型6.2Lで8速DCTを搭載。502ps/637Nmの大パワーだ。ボディサイズは全長4630mm、全幅1940mm、全高1220mm、ホイールベース2723mmで コンバーチブルの車重は1700kgと軽量だ。

ドライバーズシートに座ってみると、すぐソコに路面が見えるドラポジだ。前述のジェクター氏はジェット戦闘機の前に座っているポジションをオマージュしていると語っている。ミッドシップレイアウトの採用でドライバーズポジションは400mm前方へ移動し、ちょうどクルマの中心に座っている位置になる。

そのため旋回するときは自分を中心にコーナリングしている感覚になり、これまでのコルベットとは大きく印象は変わった。この戦闘機をオマージュしたポジションは、1933mmの車幅も感じさせにくく、ドライビングモードの「ツーリング」を選択していると、フツーのクルマを運転していると錯覚するほど乗りやすいのだ。

ドライビングモードは、この通常走行時のツーリングとスポーツ、そしてレーシングトラックがあり、プラスして個別設定のインディビデュアルの4つモードがある。モードによって、ステアリングの手応えやレスポンス、エンジンサウンド&レスポンス、サスペンションなどが変わるのだが、ツーリングであればまさにロングドライブをしている気分になるほどクルマは穏やかで静かに、そして滑らかに走行する。とても637Nmもの大トルクのある「マシン」とは感じさせない。

そしてトラックモードになると一変し、周囲にもそのヤル気が伝わるほどエンジンは吠えまくる。V8独特のランブル音も洗練され、従来のOHVサウンドよりも調律された音で吠えてくる。迫るコーナーに対しては旋回軸が自分の体の中心に来たようにコーナリングをする。アクセルをジワリと開ければ雄叫びを挙げながら加速体制に入り、タイヤのグリップを確認しながら全開で踏みつけると流れる景色が早回しになる。

アクセルを踏むのがこんなにも楽しいのか!と感じさせるのが新型コルベットだ。そしてツーリングに戻せばBOSEの音響でミュージックが心地よい。これほどのハイパフォーマンスカーだから、音楽はいらない、エンジンで十分と言うかもしれないが、ツーリングモードでの走行はスーパーカーであることを忘れさせるほどなのだ。

新たにミッドシップへとエンジン搭載位置を変更したC8型だが、フロントの接地感が薄くなるようなことがなく、四輪の接地感が伝わってくることも大きな進化と言える。コーナリング中の微妙なアクセル操作にも安心できるのは、こうした接地感からくる手応えをドライバーが得やすいからだ。

搭載するカーナビも日本語対応し、BOSEサウンドがあり、そして乗り心地はしなやかで静粛性も高い。唯一、カブリオレをクローズしているときのきしみ音が出ているあたりがアメリカ車の愛嬌かもしれない。こうしたスーパースポーツカーとしての顔と、グランドツーリングとしての顔を持っているあたりがアメリカ車のトップ オブ トップということなのだろう。

さらに価格も魅力たっぷり。今回試乗したカブリオレがシリーズで最も高価なモデルだが1550万円。2LTは1180万円、3LTが1400万円となっていて、ミッドシップのスーパースポーツの概ね半額という価格も魅力だ。

北米ではもっと安価でもあるので、マスタングに次ぐ人気車になっており、爆発的に売れているというC8型コルベットだ。<レポート:髙橋明/Akira Takahashi>

主要諸元

COTY
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