2013年12月4日、GMジャパンは、第7世代となる新型「シボレー コルベット クーペ」(C7型)、より高性能ピュアスポーツカー「シボレー コルベット クーペZ51(ズィー・フィフティー・ワン)」、コンバーチブルの「シボレー コルベット コンバーチブル」、 「シボレー コルベット コンバーチブル Z51」の4モデルを発表した。
なお「コルベット クーペ」、「コルベット クーペZ51(ズィー・フィフティー・ワン)」は、2014年4月12日~発売され、「コルベット コンバーチブル」、「コルベット コンバーチブル Z51」は、5月24日からの発売となる。
この第7世代のコルベットは、従来型から受け継いだパーツはたった2つのみで、新設計の新しいフレーム構造とシャシー、パワートレーンを採用し、エクステリアとインテリアのデザインも一新されている。このC7型は2007年から企画されていたが当初の企画ではミッドシップ、またはリヤ・エンジン案が提案されたという。市販化にあたりけっきょくフロント・エンジン配置となったが、こうしたドラスティックな企画が持ち上がった理由は、オーナー層の高齢化であった。従来型コルベットのオーナー層の46%は55歳以上で、アウディR8やポルシェ911のオーナー層より年齢層がはるかに高かった。このため、より若い年齢層にアピールするために、よりダイナミックなスポーツカー作りが求められたわけだ。
結局、新型コルベットは大幅な革新を前提としたフロントミッドシップのFR/トランスアクスル配置に絞り込まれた。そしてダイナミックなフォルムを迷彩カムフラージュした開発途中の新型コルベットは2012年秋にはゲームの「グランツーリスモ5」に登場したり、2013年のインディ500のペースカーとして登場するなど事前のプロモーション活動もかつてないほど力が入れられた。
C7型コルベットのフロント・ミッドシップに搭載されるエンジンは、伝統のスモールブロックV8の第5世代として新開発された6.2LのLTI型で、軽量・コンパクトさを徹底的に追求しOHV/2バルブシステムを守っている。そして150barの直噴、可変バルブタイミング機構、気筒休止(アクティブ・フュエルマネージメント)システムを採用。最高出力はベース仕様が460ps、最大トルクは624Nm。スーパースポーツ仕様のコルベット Z51用はサーキット走行での信頼性を高めるためドライサンプ仕様とされ、パワーは466ps、最大トルクは630Nmだ。コルベットクーペZ51の0-100km/h加速は3.8秒、コーナリング時の最大横Gは1Gを超える性能を備えている。
またこのエンジンは燃費効率を高めるため、クルージング時には4気筒の気筒休止を行ないV4エンジンとして作動し、エコモードの場合は急加速しない限り基本的にV4状態を維持するようになっている。このため燃費はEPAハイウェイモードにおいては12.3 km/Lとなり、高性能スポーツカーセグメントとして卓越した燃費となっている。なおこのOHV・V8は競合車の4.4L・V8ツインターボエンジンに比べ18kg軽量で、最も軽量なV8であることも特徴だ。
トランスミッションはアクティブ・レブマッチング(自動回転合わせ)テクノロジーを備えた新開発の7速MT、燃費と性能を両立させる6速ATをラインアップ。もちろんいずれもリヤアクスルに搭載され、エンジンとはトルクチューブを介して結合されている。
このトランスアクスル・レイアウト、エンジンのフロントミッドシップ配置により、前後の荷重配分は50:50と理想的な配分を実現している。
デザインは、コルベットの60年の歴史のDNAを受け継ぎながら新型コルベットは、ロングノーズ/ショートテールのフォルムをベースにしながら「エアロスペースとネイチャージェット戦闘機のキャビンとエイの特徴的なフォルム」というデザイン・テーマとし、ジェット戦闘機を思わせるグリーンハウスを備え、より彫刻的な立体でしかもシャープなエッジを際立たせたエクステリアにまとめられている。さらにルマン24時間レースのGTカテゴリーで7度の優勝を誇るコルベット・レーシングからのフィードバックによるエアロダイナミクスを追求している。
ボンネット上のベントから排出される気流はフロントのリフトを減らし、フロントフェンダーのサイドアウトレットもエンジンルーム内の空気を排出し、空気抵抗を低減する。ドライバー側にトランスミッションクーラー用のインテークが、Z51では右側に、eLSD(電子制御リミテッド・スリップ・デフ)冷却用のインテークを装備している。デフ、トランスミッション・クーラー用に取り入れた空気は、テールランプ部の排出孔とリヤエンド下部のアウトレットから排出されるようになっている。
新型コルベットのエクステリアでは、従来型と比べハイテクな印象を与えるライト類もアピールポイントだ。ヘッドライトはHIDヘッドランプで、アンバー色のターンシグナルはLEDを使用している。新デザインの灯式テールランプは斬新で、彫刻のようなレンズは間接照明LEDを内蔵している。隠されたLEDランプの光をリフレクターに当てることにより均一な明るさを生み出す。
インテリアは厳選された素材を用いハンドメイドにより仕上げられた上質さとハイテクを両立させている。デザインはジェット戦闘機から着想を得たラップラウンド・コクピットとスポーツカーにふさわしい形状になっている。また360mm径の小径ステアリングホイールは高精度のステッチで仕上げられている。インテリアの質感を高めるために、インスツルメントパネルの表皮の本革は肌理を合わせるために職人が選択し、ロボットにより高精度はステッチが縫い込まれるなど最上級の仕立てを行い、かつてないレベルのプレミアムなインテリアを実現している。
シートはマグネシウムフレームを持つ軽量で高剛性の2種類の新形状が設定されている、GTシートは快適性も重視したオールラウンドタイプ。もう一方のコンペティション・スポーツシートはサイドサポートを高めたバケット形状で、サーキット走行などで効果を発揮する。
ディスプレイは2個の8インチ液晶式で、直射日光の下でも優れた視認性を備えている。センタースタックのスクリーンは動作認識機能を持つタッチコントロール式で、モニターを格納するとUSBポートを備えた物入れが現れる。スマートフォンを介してインターネット接続ができる「シボレー・マイリンク」を備えた先進のインフォテインメントシステムも装備される。さらに、センターコンソールの中にはもう一つのUSBポートとオーディオ入力、SDカードスロットも設けられている。
なおメーター・ディスプレイやヘッドアップディスプレイはカスタマイズでき、モードセレクターでトラックモードを選ぶとC6型コルベット・レーシングカーと同じデザインに変化する。オーディオはプレミアム10スピーカーシステムを備え、バスと2個のサブウーファーを持つ。スピーカーには小型軽量で音質の優れた希土類磁石が使用されている。
新型コルベットのフレームは、C6型の2mm厚のハイドロフォーム工法によるスチールフレームより45kgも軽量で、しかも57%剛性が向上した新開発のアルミフレームを骨格に採用。このアルミフレームは押し出し材を組み合わせて製造される。アルミ材のフレームの肉厚は2mm~11mmまで荷重に応じて設定されている。また前後のサブフレームも中空アルミ材製で、軽量かつ高剛性に。さらにCFRPをボンネット、ルーフ部に採用。フェンダーはSMC(グラスファイバー複合プラスチック)製のドア、リヤクォーターパネル、、さらにアンダーフロアパネルはカーボンナノ複合材とし、スチール部品は見当たらない。こうした徹底した軽量化により、6Lクラスのスポーツカーとして最軽量に仕上げられ、ポルシェ911カレラ、アウディR8を上回るパワーウエイトレシオの達成にも大きく貢献している。
サスペンションは前後とも従来から採用しているインホイール型ダブルウィッシュボーン/横置き複合樹脂リーフスプリングのレイアウトであるが、すべてが新設計となっている。中空ロアアームやアルミ製のリンク類は軽量化と高剛性を実現。ホイールは、標準モデルがフロント18×8.5、リヤ19×10、Z51はフロント19×8.5、リヤ20×10サイズの鍛造製だ。タイヤはミシュラン製のパイロットスーパースポーツ・ランフラットで、新型コルベットのために専用開発されている。従来よりトレッド幅を狭くしたこの軽量タイヤは最大横Gが1Gを発生する。専用タイヤは低転がり抵抗、低ロードノイズでありながら、高いグリップ力とよりダイレクトで俊敏なステアリングフィーリングを引き出している。
ダンパーは標準モデルがピストン径35mmのビルシュタイン製で、ダンパーマウントは入力分離式のアルミ製だ。Z51はピストン径45mmのビルシュタインが装備され連続可変ダンピング式(マグネチックセレクティブライドコントロール)となる。この無段階可変ダンパーの制御はセンサー、アクチュエーターコイルが進化し、制御速度は40%向上しているという。
新開発の電動パワーステアは車速に応じてギヤレシオとアシスト量が変化し、より正確でリニアに反応し、中立部の自然なフィールを実現。ステアリングコラムの剛性は従来型より150%アップ、インターミディエトシャフトのねじり剛性は600%アップ、ラックギヤのサブフレームへの直付けなどにより操舵フィーリングを高めている。ステアリング系トータル剛性は従来型に比べ5倍にまで高められているという。
Z51はeLSD(電子制御LSD)を標準装備している。eLSDは常時、左右輪の駆動トルクを制御し、トラクションの向上やスタビリティの向上に効果を発揮する。なおeLSDは一般道からサーキットまで適合できるようにドライブモードセレクターによりスタビリティ重視、旋回性重視、トラクション重視など3モードの制御パターンに変化する。
ブレーキは標準モデルがフロント320mm径、リヤ338mm径のベンチレーテッドディスクを装備。Z51は2ピース式でフロント345mm径、リヤ338mm径。キャリパーは全モデルが前後対向ピストン式を採用。
新たなシャシー技術として、新型コルベットはタイヤ温度検知シャシー制御を採用しているのも注目される。タイヤ温度、つまりタイヤのグリップ力に合わせてABS、トラクションコントロールを最適制御することで、タイヤの冷間時、発熱時でも最高の加速・減速性能が得られるようになっている。
新型コルベットには新たにドライバーモードセレクターが採用されている。このシステムは、ドライバーの好みや運転状況に合わせて車両の特性を最適化するもので、①ウェザー、②エコ、③ツアー、④スポーツ、⑤トラックの5モードが設定されている。このドライブモードセレクターは、シフトレバー横のダイアルを回すだけで簡単に操作できる。ツアーモードは、日常使用の際の基本セッティングであり、ウェザーモードは雨や雪の場合に安定性を確保するモード。エコモードは燃費優先、スポーツモードとトラックモードは、スポーツ走行とサーキット走行用のモードだ。このモード選択によりメーター表示も変化し、エンジンのレスポンス、ギヤシフトタイミング、気筒休止システム、アクティブ・エキゾーストシステム、ステアリング・アシスト、ステアリング・レスポンス、ダンパー制御(Z51)、ローンチコントロール、トラクションコントロールなどが統合制御される。
新型コルベットは、GMの最新技術とコルベットならではのハンドメイドの上質な仕上げを融合させ、走りのパフォーマンスはヨーロッパの競合スポーツカーを上回ることを目指して開発された新次元のスーパースポーツカーといえる。まさに現在のGMのパワーを見せ付けるフラグシップ・スポーツカーとなっている。