マニアック評価vol632
2017年10月に国内デビューしているキャデラックのSUV「XT5 CROSSOVER(クロスオーバー)」に試乗する機会があった。アメリカンラグジュアリーの代表的ブランドGMのキャデラックは伝統のブランドとして有名だが、そのライトトラックにカテゴライズされる「SUV」も、キャデラックブランドに相応しいモデルだった。
キャデラックのSUVにはトップモデルとしてエスカレードがある。大統領御用達ブランドのキャデラックは、今やSUVを利用していることが多い。そのエスカレードより、サイズダウンしているのがXT5で、アメリカン・ミッドサイズの大きさだ。ボディサイズは全長4825mm、全幅1915mm、全高1700mm、ホイールベース2860mmで、V6型の3.6L自然吸気エンジンに8速ATを搭載している。
グレードはラグジュアリーとプラチナムでいずれもAWD。ラグジュアリーは668万5200円、プラチナムが754万9200円と欧州プレミアムモデルよりは購入しやすい設定になっている。また、グレードの違いは装備違いでエンジンやサスペンションなどハードでの違いはない。目立つ装備の違いとしてはラグジュアリーが18インチサイズのタイヤで、プラチナムが20インチとなっていること、アダプティブクルーズコントロール(全車速追従)はラグジュアリーにオプションでプラチナムは標準装備になるなどの違いがある。
アメリカンブランド、アメリカンラグジュアリーは欧州勢とは異なる価値観、センスから成り立っていると思う。だから、好きな人は好きだと言われるのは、そのためだろう。デザインにおいても、走行フィールでも、そしてユーティリティでも特徴があり、非常に個性的だと思う。その個性を武器に、GMジャパンにおいてはすでに主力販売車種にまで成長しており、国内でのキャデラック人気、SUV人気の確かさが見て取れるわけだ。
試乗インプレッション
試乗したモデルは「キャデラック XT5 Crossover Platinum」で3.6LのV6型エンジンは314ps/368Nmという出力。1990kgというボディ重量だが十分にパワフルで力強い。アメリカンマッスルをイメージさせるエンジンサウンドも魅力的だ。こうした演出なのか、エンジン音が聞こえる愉しさもアメリカンの魅力のひとつなのは間違いない。
アメリカンラグジュアリーを表現するもののひとつとして、居住性や大きさ、もポイントになると思う。特にリヤシートは最大14cmスライドし、レッグスペースも含めクラストップの広さを誇っている。一方で静粛性もキチンと確保されており、アメリカではライトトラックにカテゴライズされるSUVも、高級ブランドらしい乗り心地と静かが確保されている。またどちらのグレードにもBOSE社のオーディオが標準装備されているので、大音量でドライブするという楽しみもアメリカンスタイルかもしれない。
試乗車のインテリアはベージュカラーにレザーとウッドをあしらった清潔感のある大人っぽいインテリア。全体にシンプルなのはアメリカンな印象。レザーとバックスキン、ウッドプリントなど材質を変えているあたりも贅沢なインテリアだ。メーターはオーソドックスにアナログ式の2眼メーターで馴染みがあり見やすい。
インフォテイメントでは常時接続が常識化している米国らしくスマートフォンを接続して利用できる。もちろんApple CarPlayもAndroid Autoにも対応している。
走行フィールこそ、オーソドックスなSUVのハンドリングで、ロールも大きめでゆったりとした動きをする。故に欧州のプレミアムモデルとは正反対にあるハンドリングだ。言い換えれば、欧州車とは違った乗り味で、そのゆったり感こそ、大きさを感じ、豪華さを感じ、そして優雅さを感じさせる乗り味というわけだ。
キャデラックのセダンやクーペは、欧州車と同じベクトルの味付けになっていることを考えれば、SUVに求める魅力は、全く異なる場所に存在していて、作り分けているのではないかと思う。ガソリン価格も安くなったアメリカでは、大型SUVの人気は絶大で、アメリカンラグジュアリーSUVという独特な世界観を持つ、オンリーワンと言える魅力的なモデルだ。
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