GM キャデラックCTS 試乗記 世界最先端のAWDを搭載したドライバーズカー

マニアック評価vol322

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4
圧雪路で、キャデラックCTS プレミアムのアクティブ・オンデマンドAWDの性能を体験した

キャデラックのミッドサイズセダンであるCTSの2015年モデルにAWDモデルの「プレミアム」が加わり、このほど試乗する機会があった。

キャデラックブランドはアメリカ大統領御用達でも良く知られ、巨大なボディでゴージャスな乗り味をイメージする人も多いだろう。しかし新生GM誕生以来、グローバル化が急加速しており、北米マーケットだけではない市場を視野に入れた開発が進められている。その代表とも言えるのがキャデラックブランドで、ボディサイズもミッドサイズとしライバルをBMW5シリーズ、メルセデス・ベンツEクラス、アウディA6などで、プレミアムクラスのドライバーズカーとしてのポジショニングでの戦いになる。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4

2015年モデルのCTSは「プレミアム」が追加モデルとなり、従来の「エレガンス」はなくなり、「ラグジュアリー」との2グレード展開となる。そのプレミアムにはオンデマンドのAWDが追加になったことと安全装備の充実、携帯電話のワイヤレス充電などもできるようになった。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4

 

注目はAWD。「アクティブオンデマンドAWD」という名称で、ボルグワーナー製のハードパーツをGMがオリジナルに制御している。通常は0:100で後輪駆動走行し、スリップを予測しながら瞬時にトルク配分されるオンデマンド式で、前後、左右へのトルクベクタリングを行なっている。最大前輪の100:0までトルク配分が行なわれ、フロントアクスルに956Nmまでのトルクを配分する。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4
本物の素材を駆使して高品質に作り込まれたCTSのインテリア
GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4

 

前輪への駆動トルク分配は電磁式の湿式多板クラッチを使用し、レンジローバー・イヴォークなどと同様のハードパーツになるが、いわゆるフルタイムAWDではなく、あくまでもオンデマンド式であり、センターデフを持たないAWDということになる。このシステムにすることでドライ路面を走行する時の駆動抵抗を減らし、またコーナリング時には前後可変トルク配分を行なうことで安定性を高めることができるわけだ。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4

走行シーンは雪道、ワインディング、高速道路と多岐にわたりドライブできた。タイヤはミシュランのX-iceを装着。一世代前のオンデマンドAWDであると、スリップを検知して瞬時に駆動配分が行なわれているが、スリップ予測制御が採用されているためドライバーはスリップを感じることはない。

雪の状況はきれいに圧雪され、雪が少ない箇所では凍結しているという状況だ。この状況にプラス・アップダウンがあり、コーナーもあるいわゆる山道だが、キャデラックCTSはまるで雪がないかのように、普通に走れる。トラクションコントロールのスイッチをオフにして、わざと急加速しても滑る動きがでない。写真にもあるようにSUVの4WDでなければ侵入したくない状況の別荘地でも、全く問題なく走破する。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4

また、最新のオンデマンドAWDの開発目標には、雪道などの低μで安定した走行性能の確保というのはもちろんだが、舗装路での安定した走りをサポートする意味も強く持っている。CTSは通常FR駆動で走行している。そもそもCTSの走行安定性は高く、ニュートラルのハンドリング特性がある。路面のμやコーナリングフォース、舵角変化などでフロントへのトルク配分が行なわれても、ニュートラルな特性に変化はない。

雨や、雪、ワインディングなどさまざまな状況変化が起きても、常に安定した走行が可能であり、ドライバーにとって非常に安心感が高いと言える。急なハンドル操作、アクセル、ブレーキ操作をしてもクルマは安定して走るし止まる。もはやスピンとは無縁と思える。ただしタイヤのグリップ限界を超えるようなシーンでは、どんなデバイスでもコントロール不能になることはお分かりだと思う。

◆安全装備
さて、2015年モデルCTSには新しいブランドロゴマーク「キャデラック・クレスト」になっている。従来のキャデラックロゴマークは丸型だったが、平べったくなったデザインで、フロントグリルとバンパー下のデザインが新しくなっている。

安全装備の充実におけるハイライトは、レーンキープアシスト稼働時に車線内にステアリングを戻す機能が加わったことだ。ステアリングが自動で修正され、はみ出しを防ぐ。シングルのモノクロカメラとレーダーセンサーの制御で稼働している。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4
カメラ、レーダーをフル装備した最先端のドライバー支援システムが装備されている

これまでハンドルが自動修正されるクルマにはメルセデス・ベンツのSクラスやスバル・レヴォーグで体験したが、いずれもある一定時間ハンドル操作を人間が行なわないと制御が自動で終了し、ドライバーにハンドル操作をするように促す。が、キャデラックCTSにはその機能がなく、いつまでも自動で車線内に戻るのだ。

つまり完全自動運転が体験できるのだ。ただし、制御は車線内を維持する制御ではなく、はみ出しを修正するための制御であるので、実際には車線内を蛇行してしまう。そのため、ドライバーはハンドル操作をしなければならないわけだ。

先進インフォテイメント「CUE」も完全日本語表示に
先進インフォテイメント「CUE」も完全日本語表示に
ドライバー支援システムの表示はカラー表示
ドライバー支援システムの表示はカラー表示

そして全車速対応のアクティブ・クルーズ・コントロールが追加された。ドライバーの疲労軽減、安全走行という点では素晴らしく改良されたと思う。一般道での信号停止でもRES(リジューム)に触れれば、自動で追従を再開する。車間距離も設定できるので、渋滞時などでは便利だ。さらにパークアシスト機能として従来の縦列駐車機能に加え、並列駐車も可能になった。

もうひとつ注目なのは携帯電話のワイヤレス充電だ。専用のアダプターを装着すると、インパネ中央のパネル裏にある小物入れトレーに置くだけで充電する。スマホになってから充電は日に何度も必要になるケースもあり、便利な機能だ。

その他のCTSの魅力についてみてみよう。搭載しているエンジンはダウンサイジングコンセプトで作られた新世代エンジンで2.0L+直噴ターボ。可変バルブタイミングも持ち、BMWやメルセデス・ベンツ、アウディの2.0Lターボエンジンよりも高出力で276ps/400Nmというスペックだ。AWDのプレミアムグレードで、燃費は市街地で約7.8km/L、郊外燃費で約14.5km/L、総合の平均燃費で約11.0km/Lとなっている。ボディサイズは全長4970mm×全幅1840mm×全高1465mm、ホイールベースは2910mmで国内ではオーバーミッドサイズといった大きさになる。

GM キャデラック 2015 CTS プレミアム 4
2.0L・4気筒のダウンサイジング直噴ターボは、276psとライバルより高出力

また、プレミアムにはMRC=マグネティック・ライド・コントロールが装備される。これはダンパー内で磁性体がオイルの中で動く流体減衰制御と言われるもので、1/1000sec毎に減衰が可変する。乗り心地はもちろん、ハンドリングでも大きな効果をもたらすハードパーツだ。制御の切り替えではセンターコンソールにあるスイッチで「Touring Sport  Snow」の3段階の切り替えがあり、このMRCの変化に伴い、ステアリングのアシスト、シフトマネージメント、アクセルレスポンスが変化する。

フロントはダブルジョイント式ストラット、リヤはマルチリンク
フロントはダブルジョイント式ストラット、リヤはマルチリンク
MRC
磁性流体を使用した連続可変ダンパー(MRC)

体感的にはツーリングモードを標準とするとスポーツはステアリングのセンターの座りがしっかりし、コーナリングでも全体にしっかり感が増すフィールに変わる。スノーでは文字通り、雪道用で急なアクセル操作をしてもリニアには反応しないような設定になっている。

素材にも変化がある。ボディはこれまで通り超高張力鋼板やアルミ、マグネシウムなどが使用され、クラス最軽量の1680kg(プレミアムは1770kg)となっているが、インテリア素材でもリアル素材になっている。カーボン調のプラスチックやレザー風のビニールと言ったフェイクではなく、見たままの本物の素材ですべて作られている。またパドルシフトやハンドル本体もマグネシウム素材という拘りもある。ちなみに、左ハンドル仕様のみの導入となる。

新デザイン紋章「キャデラック・クレスト」
キャデラックの新デザイン紋章
「キャデラック・クレスト」
AWDであることを示す「4」
AWDであることを示す
「4」
テスト車に装着されていたミシュラン「X-ice」
テスト車に装着されていたミシュラン「X-ice」

キャデラックへのイメージはまだまだ、「アメ車」というイメージが強いかもしれないが、ドイツプレミアムモデルがライバルと公言するだけに、かつての「アメ車」ではなくなっている。デザインはキャデラックらしい特徴的なルックスであり、インテリアも同様個性的でもある。その装いでドイツ車的な走行をするモデルがCTSということになる。上級モデルのプレミアムで699万9000円(8%税込)というコスパに優れたCTS、お買い得だと思う。

<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

キャデラック CTS 2015年モデル 諸元表

キャデラック CTS 2015 年モデル 価格表

GM関連情報
キャデラック・ジャパン公式サイト

COTY
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