マニアック評価vol327
新生GMを象徴するモデル、キャデラックATSにクーペが加わった。2015年3月から国内での発売が開始されたが、一足先に試乗してきたので、レポートしよう。＜レポート：髙橋 明/Akira Takahashi＞
キャデラックブランドはアメリカを代表するラグジュアリーブランドとして、長くポジショニングしてきたが、グローバルに販売するモデルとして生まれ変わってもいるブランドだ。ATSはボディサイズとしてはDセグメントで、先にセダンがリリースされていたが、CTS同様クーペボディも投入することになった。ボディサイズは、全長4680mm×全幅1845mm×全高1400mmで1580kgとこのクラスではかなり軽量となっている。ライバルはBMW 4シリーズ、アウディA5といったあたりのラグジュアリースポーツクーペになる。
インテリアはラグジュアリーブランドに相応しい豪華さを持ち、見た目や触感でも満足度の高い仕上がりになっている。ダッシュボード周りやトリムなど樹脂を使用しているが、レザー調に全体を仕上げ硬質感は薄く、部分的にはソフトパッドを使用するなど工夫があり、高級感がある。もちろん、ピアノブラックのパネルやシルバーの加飾などの使い方がうまい。ドイツ高級車ブランドとは一線を画すインテリアであり、アメリカ車らしい内装になっている。
ドライバーズシートに座ると太めのハンドルが目に留まる。握った感触はスポーツカーのようにしっかりとしたフィールで、レザーの感触もいい。シートもオールレザーで試乗車はアイボリーの内装で車内は明るく、ハイセンスな印象だ。メーターはデジタルとアナログの併用で、速度計、回転計、燃料、水温はアナログ表示。同時にデジタルでも速度などが表示される。またヘッドアップディスプレイも装備されているので、インフォメーションは豊富だ。
マニアックなところでは、装備されるパドルシフトがマグネシウムを使用している点。操作感が軽いかどうかは分からないが、硬質な感触は手に残り、スポーツカーをイメージさせる。また、センタークラスターにはGMが開発するインフォテイメントのCUEが装備され、日本語のナビも稼働している。操作系はタッチ式を多用しているため、走行中の操作としてはあまり優れたもののようには感じないが、好みもあるだろう。
搭載するエンジンはセダン同様の2.0L直噴ターボのダウンサイジングエンジンで、276ps/400Nmと高出力だ。組み合わされるミッションは6速AT。パドルシフトを使いスポーティに走りを楽しむことができる。GMのこのダウンサイジングエンジンは10ベストエンジンにも選ばれた実績がある、定評のユニット。低速から力強いトルクを発揮し、パワフルに走る。力不足を感じる場面は全くないだろう。
ハンドリングも欧州基準とでもいうのか、シッカリとした手ごたえがあり特に切り始めがしっかりしていて、逆に言えば直進の座りがよく安心感の高いニュートラルとも言える。操舵フィールはアメリカ的ではなくドイツ勢のハンドリングに似たフィールを持つ。ATSセダンで感じるそのままがクーペになっても同様に仕上げてあるイメージだ。ちなみに電動パワーステアリングはZFレンクシステムの第3世代EPSapaを採用している。
サスペンションにはマグネティックライドを装備し、磁性流体による可変ダンパーでツーリングモードをセレクトすれば、日常使いでも全く不満はない。スポーツを選択するとクーペに似合ったスポーティなサスペンションに変わり、しっかりと締まった印象に変わる。ワインディングを試すと面白いだろう、という印象を持った。
スポーティな走りを楽しめるATSクーペにはブレンボのブレーキも装備されている。加速Gよりも減速Gが勝るようにセッティングしてあるため、安心感が高く、コーナーを思いっきり攻めることもできる。
走りの性能はドイツの高級車をライバルに据える方向の仕上げがされ、インテリアやエクステリアではアメリカ、キャデラックブランドを存分に主張した個性的な仕上がりとなっていて、ハマる人にはドンピシャなクーペだ。さらに509万円からという価格も大きな魅力なであり、お気に入りの一台に加わることは間違いない。
