GMデトロイト本社は2022年11月4日、アメリカ国内の工場を含む全施設に供給するのに必要な電力を、2025年までに100%再生可能エネルギーとする調達契約を締結したと発表した。これは、2021年9月に発表した推進目標に沿ったもので、2021年初めに発表していた2030年より5年早まり、2016年に設定した当初目標である2050年よりも25年前倒しで達成できる見通しとなったのだ。
この目標を達成することで、GMは2025年から2030年の間に発生する推定100万トンのCO2排出量を削減できる見込みで、これは、45万4000トンの石炭を燃焼した際に排出されるCO2に相当する。
GMのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのクリステン・シーメン氏は、「私たち、お客様、そして地球の未来にとって、より持続可能な世界に近づくために努力を重ね、意欲的な目標を達成することが不可欠であると信じています。目標達成に必要な再生可能エネルギーを確保することは、ビジネスのあらゆる面においてGMのCO2排出量削減のための具体的な進展を示し、最終的にはゼロエミッションの未来というGMのビジョンに一歩近づくことになります」と述べている。
GMの脱炭素化計画にとって再生可能エネルギーの調達はきわめて非常に重要な要素だ。GMの再生可能エネルギー戦略には、次の4つが策定されている。
・エネルギー効率の向上:GMのエネルギー目標は、まずエネルギー効率の向上による消費量の削減から始まっている。GMはその取り組みが評価され、11年連続でEPAエナジースター・サステンド・エクセレンス・アワードを受賞している。
・再生可能エネルギーの調達:GMは施設の運営に必要なエネルギー量を最小限に抑える一方で、直接投資、自家発電、グリーン料金、電力購入契約などを通じて、再生可能エネルギーを調達している。こうした取り組みにより、GMは再生可能エネルギーの目標を達成しつつあり、今回の発表に繋がっている。
・電力供給の断続性への対応:GMは、電力消費が外部変動の影響を受けないようにするため、中長期的に再生可能エネルギーを貯蔵する技術を開発している。
・政策の提言:送電網の拡大、再生可能エネルギーの導入を支援するマイクログリッドの構築、カーボンフリーで回復力の高い電力システムを市場に導入しやすい電力価格で実現するといった取り組みが不可欠だ。GMは、カーボンフリーで災害に強い電力システムを実現するための政策を支持している。
GMの再生可能エネルギー調達は、現在10州にわたる16カ所の再生可能エネルギー発電所からの調達契約を結んでおり、自動車業界最大の再生可能エネルギーの購入企業として、すべての自動車メーカーを凌駕している。また2017年以降、これらの契約により、7500万ドルを超えるプラスのキャッシュフローを生み出している。
2019年、GMは米国最大の再生可能エネルギー購入企業団体であるClean Energy Buyers Association(CEBA)の創設メンバーになった。CEBAは、企業の再生可能エネルギー市場への参入に協力し、あらゆる規模の組織が再生可能エネルギーを購入する際にコスト効率の良いルートを見つけられるよう支援する組織だ。
CEBAのミランダ・バレンティンCEOは、「GMは10年以上にわたり、生産施設における企業のクリーンエネルギー調達の先駆者的な存在です。2025年目標を達成するのに必要なエネルギー確保に関する今回の発表も、そのリーダーシップを示す一例です。しかし、それ以上に印象的なのは、GMが学んだことを共有し、その後に続く他の企業を指導することに尽力していることです。競争の激しい世界にあって、このようなコミュニティ志向は本当に素晴らしいと思います」と述べている。
2021年、GMはCO2排出量削減のための「Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)」を発表し、2040年までにグローバルな製品、オペレーションにおいてカーボンニュートラルを目指すことを発表した。さらに、2035年までにアメリカで販売する新型乗用車(LDV)のテールパイプからの排出ガスをゼロにする目標としている。
また、2025年までに電気自動車(EV)と自動運転車(AV)に350億ドルを投資すると表明しており、2025年末までに北米と中国それぞれで、年間100万台以上のEV生産能力を達成する計画としている。
こうしたGMの明確な取り組み、戦略は自動車業界の先頭に位置しており、こうした点では日本の自動車メーカーはスロースターターと考えざるを得ないのである。