GMは2021年9月下旬、GMのマーク・ロイス社長は、アルティウム・シリーズのEVで駆動を担当する新開発した3種類のモーターを発表した。
3種類のモーターはモジュラー設計
GMが設計した3種類のモーターのラインアップは、180kW(245ps)の前輪駆動用モーター、255kW(347ps)の後輪/前輪駆動用モーター、62kW(84ps)のAWD駆動のアシストモーターで、これらがアルティウム・ドライブ・ファミリーとされている。アシスト用モーター以外はいずれも高出力タイプであることは注目だ。
これら3種類のモーターはすべて、アルティウムのEVシリーズで最高レベルの性能を発揮できるよう設計・開発されている。そしてもちろんモジュラー設計が採用されており、共通の製造ラインで共通の製造ツールで生産が可能になっている。
ロイス社長は、デトロイト地区商工会議所が主催する会議で、「我々は20年にわたる電気駆動システムの開発と100年以上にわたる量産車のエンジニアリングにより、従来の内燃エンジン自動車から電気自動車へと迅速に移行することが可能なのです。ハードウェアとソフトウェアの両方のこの分野での垂直統合により、我々の今後の行末が明るくなり大きな競争力をもたらしてくれます」と語っている。
180kWと255kWのユニットは、レアアースの使用を最小限に抑えて設計された永久磁石式モーターで、62kWのユニットは誘導式モーターを採用している。いずれも優れたトルク特性と出力密度を備え、ハイパフォーマンスカーから作業用トラックまで幅広い車種に対応することができる。
また、アルティウムEVでは1台のEVに最大3個のモーターを搭載することも可能で、2022年に発売する計画の「GMCハマーEV」の高出力モデルでは、255kWのモーターを3個搭載し、最高で1000psの出力を実現するとしている。
ウルティウム・ドライブのソフトウェア開発
GMは、最小のコンポーネントで様々なタイプの車両のニーズに応えるための鍵となる、アルティウム・ドライブ用のパワーコントローラ用のソフトウェアも開発している。
ウォーレン(ミシガン州)にあるGMのグローバル・テクニカルセンター、ポンティアック(ミシガン州)にあるグローバル・プロパルジョン・システムズ、ミルフォード・プルービンググラウンドが拠点の開発部門という3拠点で、合計1万1000人がソフトウェア開発に従事している。この開発エンジニア数は今後も増えることが予想され、ソフトウェアの開発はGMのビジョンであるオール電動化の未来を支える重要な柱とされている。
このチームは、CADとバーチャルエンジニアリングを駆使して、スピーディに、そしてコスト効率よく作業を進めながら車両制御の熟成を行なっている。人工知能と機械学習により、「GMCハマーEV」のような大出力の3モーター駆動システムのトルクを最も効率的に配分する方法を決め、極めて高いオフロード性能を持つと同時に一般道路でも快適に走行できることを目指している。
GMのEVモーターに搭載されている制御ソフトウェアは、様々な用途に利用を拡大することができるという。
また、GMはバッテリーからの直流電圧を交流電圧に変換してモーターに供給するパワーコントロールモジュール(インバーター)など、主要なパワーエレクトロニクス部品のソフトウェアも設計している。ハマーEVの0-100km/h加速性能などは、モーターとモーター制御、パワーエレクトロニクスなどの能力に加えて、電気駆動ソフトウェアによるところが大きいという。
インバーターやその他のパワーエレクトロニクス(アクセサリーパワーモジュールやオンボード・チャージングモジュールなど)は、GMの現行EVではドライブユニットの外側に配置されているが、アルティウムEV車両では、これらのパワーエレクトロニクスはモーターユニットと統合され、コンパクト化、コスト低減と製造のシンプル化を実現している。
またパワーエレクトロニクスのユニット自体も、現在のGMの同等品と比較して質量と体積が50%減少し、性能は25%向上しているという。
これらの新しいEVモーターとアルティウム・ドライブ・ユニットに組み込まれたパワーエレクトロニクスの第1弾は、今年後半に発表される2022年型の「GMC ハマーEV」だ。もちろんアメリカ市場で協業しているホンダもこれらのユニットを使用することは間違いない。