システム使用の可否がドライバーに明確に伝わるのか?
ドライバーがそのシステムを使用すべき状況か否かを、リアルタイムでどの程度明確にドライバーに表示しているかをテストした。
キャデラックのスーパークルーズは、優れたシステムとなっていた。クルマのコントロールが難しい場所では使用できないようになっており、GMが既にマップしているハイウェイでのみ利用が可能で、システムの起動ができない場合、その理由も表示される。
合流する車線、上り坂など難しい交通パターンに近づくにつれて、運転手に十分な警告を表示できたのは、テスト車の中では、唯一のシステムとなっている。
他社のシステムには早期の警告がなく、使用が厳しい場所でも使用できてしまう。テスラのオートパイロットは狭い道路では車速は制限されるが、システムの使用は可能だった。貧弱なレーンマーキングを伴う曲がりくねった道路でも使用が可能で、システムは完全にオフにならず、断続的動作する。悪天候ではすべてのシステムは起動できないが、日産のプロパイロットとボルボのパイロット・アシストは中程度の雨の中でもシステムは起動しなかった。
キャデラックのスーパークルーズとテスラのオートパイロットは、かなり強い雨になるとシステムは起動できないが中程度の雨まではシステムが作動できた。
ドライバー状態をどのように判断しているかを評価
ステアリング操作とスピードコントロールをシステムが自動的に行なう場合、ドライバーは運転に関する注意を払うのをやめたり、注意散漫になる可能性が高くなる。だからこそ、これらの半自動運転システムはドライバーが運転に関わっていることを保証する方法を持つことが重要だ。
運転者への警告は、キャデラックのスーパークルーズの4秒から、テスラのオートパイロットの24秒まで、メーカーにより大きな違いが見られた。
キャデラックのスーパークルーズは、ドライバーの視線モニターによりドライバーがきちんと運転していることを確認している。他のシステムはこのドライバーモニタリングの装備はなく、ドライバーがステアリングホイールを握ったり、触れているかを検知するシステムだけになっている。これは、ドライバーの注意度合いを察知するには不十分な方法で、居眠りしているドライバーが目を覚ますという保証はほとんどない。
テスラのオートパイロットは、車線の中央維持をする能力が高いため、ドライバーにとってはそれほど神経質になる必要はないが、ボルボのパイロット・アシストと日産のプロパイロットは、ドライバーがステアリング操作を行なわないと、直線道路を除いて車線を逸脱する恐れがある。
テスラのモデル3は室内カメラを装備しているが、テスラの広報担当者からは、それは現時点ではドライバーが何をしているかをモニターするために使用されていないという。将来のソフトウェアではその機能が追加されるだろう。ボルボは、ドライバーが運転操作を維持すべきとの考えから、手放しをするとシステムはオフになるようにしある。
ドライバーが運転に注意を払わない、または運転できない場合のシステムは?
ドライバーが運転に注意を払わない、または運転できない場合のステアリングの作動、車速、ブレーキのコントロールはどうなっているのかをテストした。
ドライバーが警告の後に応答しなかった場合、各メーカーのシステムは大幅に異なる動作をした。キャデラックのスーパークルーズとテスラのオートパイロットは、2種類の視覚的な警告とそれに続く警報が発せられ、その後ブレーキをかけてレーン内に停止し、ハザードランプを点灯させた。
その後、スーパークルーズは自動的に緊急連絡電話を呼び出し、システムが遮断されて再始動されるまでシステムはロックアウトされる。同様に、オートパイロットは走行中に警告を3回行なって、システムはオフになる。
日産のプロパイロットは、ブレーキをかけて完全停止する前に、強いブレーキをかけるプロセスがある。ボルボのパイロット・アシストは、視覚と音による警告を発した後でもステアリングの操作が確認できない場合は、システムはオフになるだけで、自動ブレーキやレーンアシストは行なわれない。
ドライバーがパイロット・アシストシステムとは独立して設定できるレーンキープ機能を有効にしていた場合にのみ、車両は車線逸脱を検出してステアリング操作が行われる。ボルボによれば、急病時のようにドライバーが完全に意識を失う可能性は少なく、ドライバー自らが停止させる必要があるという。
ACC(アダプティブクルーズ・コントロール)機能に対する取り組み
コンシューマーレポートの専門家は、このシステムが自動運転ではないことを強調しているが、長時間の高速道路やストップ&ゴーが連続する市街地の交通環境では、ドライバーの疲労やストレスを軽減するのに役立つとしている。しかし適切でない、安全でない状況や、ドライバーが注意すべき交通環境でシステムを起動した場合は、リスクが高まることも警告している。
ACC総評
コンシューマーレポートは、4メーカーのアダプティブクルーズ・コントロールを評価して、その技術的な完成度だけではなく、ドライバーの運転状況のモニタリングのしやすさや、ドライバーが警告に応答しない場合にどうシステムが反応するかという点も評価の基準としている。
それは、コンシューマーレポートの研究によれば、アダプティブクルーズ・コントロールを使用して走行している場合、ドライバーは注意が散漫になり、自動ステアリング機能とスピードコントロール機能を過度に頼る傾向があることが分かっているからだ。
「我々は数年前からこれらのシステムをケースバイケースで評価してきましたが、現在はこうした進化したアダプティブクルーズ・コントロールはメインストリームになりつつあります。様々な評価を積み重ねことで、各メーカーのシステムは大きな違いを見ることができました。 最適なシステムなら危険なシーンを招かないようなロジックにより、運転しているドライバーの負担やストレスを低減できるでしょう。適切な安全を保つロジックがない場合は、ドライバーはシステムに対する過度の信頼を抱き、結果的にドライバーは危険にさらされることになります」とコンシューマーレポートのディレクターは述べている。
また、コンシューマーレポートは、こうした先進的なアダプティブクルーズ・コントロール・システムにあまりにも依存しているドライバーにも関心を向けており、自動車メーカーがどのように市場にアピールしているかを注意深く監視している。
コンシューマーレポートのエンジニアたちは、自動車メーカーがアピールしているこれらのシステムが自動運転なのか、あるいは自動運転につながる機能なのかという点にも注意を払っているのだ。
例えば、コンシューマーレポートはボルボUSAに同社の「パイロット・アシスト」システムについて、なぜ同社のWEBサイトで、「自動運転」の項目の下に、自動運転システムではないパイロット・アシストシステムが記載されているのかを質問した。このアクションに対応し、ボルボはWEBサイトを変更し、パイロット・アシストと自動運転との関連部分を削除している。
ホンダやトヨタなど、他の自動車メーカーも同様のアダプティブクルーズ・コントロールを市場に導入しているが、自動運転を強調するようなアピールは行なっていない。
消費者が新しいクルマに買い替え、SUV、ピックアップトラックでもうこうした先進機能を利用できるようになり、 わずか数年で何万人ものドライバーがこの革命的なシステム使用するようになるため、コンシューマーレポートはメーカーに可能な限り誤解がなく、安全に技術を展開するよう促しているのだ。