【フォード】エクスプローラーエコブースト試乗記 アーバンテイストでお洒落だが、力強い新ユニット by津々見友彦

マニアック評価vol91
パワーと燃費の両立・・・。各自動車メーカーが抱える必須要綱のひとつだ。国内ではハイブリットをはじめとするハイテク技術で挑んでいるのに対し、VWを筆頭とするヨーロッパ勢は“ダウンサイジング”という巧みな知恵で対抗している。

フロントイメージ

その方程式は・・。

1)エンジン容積の小型化(ダウンサイジング)
2)ターボチャージャーの活用
3)直噴
がそれだ。エンジンをサイズダウンして機械的ロスを小さくする。だが、それではパワーダウンとなる。それを補うのにターボを使用。すると、ノックを起こしやすくなる。で、直噴でシリンダー内の温度を下げノッキングを防止する・・というのがこの方程式のミソ。この潮流はSUVのエクスプローラーにまでおよび、「EcoBoost」と呼ばれるバージョンが登場した。ちなみにEcoBoostはもともとこの2.0Lターボ・エンジンの名称だが、エクスプローラーでは車名にも使用されているのだ。

正面真後ろ

真横リヤ7:3
「エクスプローラー XLT」はV6型、3.5L、216kw(294ps)/6500rpm、345Nm/4000rpmの出力を持つ4WDバージョンだ。一方、「EcoBoost」は直列4気筒2L、179kw(243ps)/5500rpm、366Nm/3000rpm.のFF仕様。車重は110kgも軽量だ。

いつもながらエクスプローラーのエクステリアは実にお洒落。ヨーロピアンテイストの軽快感があり、モダーン。都会派の香りがしてスマートだ。

インテリアもエクステリア同様、シャープでスッキリとした雰囲気があり、泥臭さはなく、やはりスマート感に溢れる。メーターパネルもセンターにスピードメーターを配し、左右にカラーディスプレイで美しいグラフィクスのハイテクイメージとなる燃費計、タコメーター、コンパスを表示するなど、モダーンだ。更に個人的に私が好きなのがセンターパネル。「My Ford Touch」と呼ぶi-Padのようなタッチパネルでオーディオや空調などの操作が可能で、実に楽しい。・・・もっとも運転中に使いやすいかどうかは別の話だが・・でも、個人的には大好きだ。

フロント全体ドライバーズシート

リヤシート3列目

さてラグジュアリーなレザーシートに収まり、キーを捻ると4気筒2Lエンジンが目覚める。アイドリングは静かで、特にバイブレーションを感じることもなく快適だ。Dレンジでアクセルを踏込み走りだすと、力強いエンジン音となり、走りの質感もなかなか良い。
気になるエンジン特性だが、低速からのトルク感も充分にあり、パワー不足、トルク不足は感じない。停止から発進させると殆ど気になるタイムラグはなく、スムーズかつ力強く走りだしてくれた。もっとも、厳密に言えば、一泊のラグはあるのだが、しかし、それも気になるほどではなかった。

Ti-VCTと呼ぶ、吸排気の可変バルブタイミングシステムやコモンレールタイプの直噴システム、ピックアップの良いターボシステムなどで大きく不満のないエンジンの応答の良さがある。40km/hぐらいでの速走行中も、充分なトルク感があり、ストレスを感じさせないのは嬉しい。ダウンサイジングエンジンの特徴で、低速からターボを効かし低速でのトルクを高め、実用性を重んじる設定なのだ。

エコブースト
エコブーストエンジンは4気筒2.0L+ターボで6速ATとの組み合わせ

さて、80km/hから急激なフルスロットルを試すと、一瞬エンジンのラグ感とミッションのシフトダウンが行われるために、加速に移るのは一瞬遅れるものの次にはスムーズに加速する。こんな意地悪な急加速ではなく、フツーに加速させる限り、全くストレスを感じない。

100km/hクルージングも得意な分野。軽くスロットルに足を乗せるだけで快適に走ってくれ、充分なトルクのゆとりを楽しめる。また高回転まで引っ張ってもバイブレーション感はなく、その意味でも気持ちよく伸びるエンジンだ。停止からの0m-400m発進加速は、二人乗車で手元の時計では17秒を切る様子。厳密に言えば、3.5L仕様がやや速そうだが、ほとんど同レベルと言えそうだ。エンジンパワーは50ps低いものの、何といっても車重が110kgも軽いのは大きい。

タイヤはP245/60R18のミシュラン、ラティチュードを履く。走り出すと、乗り心地は悪くない。しっかり感はあるのだが、突起乗り越えでも衝撃はあるものの、辛くなく、不満なく使える。
予想外だったのはハンドリングの応答だ。以前ドライブした4WD仕様のつもりで、100km/hでコーナリングを試みると、以外や、クイックな応答でスポーティーなイメージなのだ。 100km/hのレーンチェンジでは小さなステアリングの切り込みでスーッとノーズが動く。まるで初期のBMW X5をドライブした時のような雰囲気なのだ。4WD仕様の場合は、もっと大人しく、アメリカンSUVのスタンダード的な操縦性に対して、BMWを彷彿させるスポーティーな挙動に仕上がっていた。
FF仕様となり、駆動系の重量が110kgもの軽量化がされ、その結果運動性能が大きく進化したものと思われる。もっとも個人的にはもう少し大人しくても悪くはないが、慣れるとスポーティーな走りが楽しめる。またワインディングに入った時には更に楽しいだろう。

シフトレバーAピラー

電動パワステは相変わらずナチュラルで好感が持てる。油圧のそれのように粘り気があり、適度な重さ感が高速でもストレスを感じさせない。またブレーキもコントロールしやすく効きの良さに安心感があった。ちょっと気になるのはAピラー両サイドのミラー。サイズが大きく後方視界は抜群によく見えるのだが、右左折の際、死角ができるのは否めない。それを補うためか、フロントカメラの画像が右のAピラーのディスプレイに写し出される。良いアイディアだが、ちょっと画面が遠いのは惜しい。
シートはゆったりと座れ、さすがにアメリカンだ。セカンドシートはリクライニングもでき、ロングドライブも楽しめよう。3列シートもニースペースが狭いものの、意外に座れるスペースがあるのだ。

僕のお気に入りで使いやすいのが3列シートの折り畳み。電動で簡単にフラットフロアーに変化できとても便利だ。スタイリッシュでお洒落なエクスプローラーだが、更に低燃費性(EcoBoost8.1km/L、XLT7.6km/l/10・15モード燃費)で旧型4LV6型に対し25%向上と言うユーザーニーズに配慮するSUVだ。

フロント

文:津々見友彦

■フォードエクスプローラー エコブースト主要諸元

●価格 440万円(消費税込) ●全長5020mm×全幅2000mm×全高1805mm WB2860mm ●ハンドル位置=左のみ ●駆動形式=FF ●直列4気筒2.0Lターボ ●最大出力179kw(243ps)/5500rpm 最大トルク366Nm/3000rpm ●6速AT ●タイヤサイズ=245/60-18

フォード公式サイト

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