マラネロのフェラーリ本社は2022年5月5日、跳ね馬のワンオフシリーズ最新作となる「SP48 Unica(ウニカ)」 を発表した。マラネロのスポーツカーの中で最もエクスクルーシブな位置付けの特別な、世界で唯一無二の1台で、ひとりの顧客の指示に従って作り込み、その要望を明確に表現するようデザインした完全な特注モデルだ。
SP48 Unica は、チーフ・デザインオフィサーのフラヴィオ・マンゾーニの指揮の下で、フェラーリ・スタイリングセンターが F8トリビュートのプラットフォームをベースにデザインした2座席のスポーツ・ベルリネッタだ。その引き締まったラインとアグレッシブなスタンスはオリジナルモデルを即座に感じさせるものの、矢尻のようなフロントの形状によって独創性を表現。この独自のデザインはヘッドライトのデザイン変更と、それに伴うブレーキ用エア・インテークの位置変更の効果で生み出されている。
金属の彫刻ともいえるスタイリング
このユニークなデザインで不可欠な役割を果たしたのが、最新のプロシージャル・パラメトリック・モデリング(3次元CG)技術と 3Dプロトタイピング(3次元プリンター:積層造形法)の幅広い活用だ。フェラーリ・スタイリングセンターのデザイナーやマラネッロのエンジニアは、これを駆使して、フロント・グリルとエンジン用エア・インテークをオリジナル設計した。この先進的工程によって、ひとつの塊から削り出されたような完全に3次元のグリルが誕生している。
SP48 Unica のボディワークには、プロシージャル・グラフィックの技術が採用され、グリルとダイレクトに呼応し、ウィンドウ、ルーフ、エンジンカバーなどの黒からボディカラーへと移行する部分でその特長が生かされている。
フロントで目を引くバイザーのイメージは、サイド・ウィンドウの縮小とリヤ・スクリーンを削除することでさらに強調され、ひとつの金属塊を彫り込んだようなSP48 Unicaの力強さが強調されている。
真上から見ると強調されるのがルーフ中央部で、そのグラフィックは、リヤウイング手前のカーボンファイバー製エンジンカバー後部に設けられたエア・インテークと対応している。この角度で見ると、フォルムによるシンメトリーとラインの相互作用により洗練された金属の彫刻ともいうべき高度なスタイリングであることがわかる。
SP48 Unicaは熱流体力学にを完璧に磨き上げ、車両各所の冷却要求を満たしただけでなく、空力バランスの変更も実現。ベースモデルのF8 Tributoのスタイリングと最も異なる部分として、フロントバンパー、リヤスポイラー下にあるエンジン冷却用エア・インテークなどが挙げられる。その深いグリルは、プロシージャル手法によって、通過する空気の量が最大となるよう各部分が最適な角度になっているのだ。
車両の構造によりインタークーラー用インテークをサイド・ウィンドウのすぐ後方に配置でき、これによってボディ側面のインテークを縮小。また、リヤのオーバーハングを延長したことで、ルーフエリアによるリフトが低減され、リヤのダウンフォースが増大している。
ディテールにこだわったインテリア
キャビンは、リヤ・スクリーンを除いて、ベースモデルの印象を受け継いでいるが、ディテールにこだわり、SP48 Unicaの流線型でスポーティーでアグレッシブな個性を反映した、カラーとトリムを選択。その好例が、特別に開発されたレーザー・パンチング加工の黒いアルカンターラ表皮だ。シートをはじめとするインテリア・トリムのほとんどに使われており、その下には、エクステリア・カラーにマッチした、虹色に輝く赤みの強いオレンジのファブリックが配置されている。
ここには、エクステリアにも使用されている六角形のモチーフが取り入れられており、インテリアとエクステリアをイメージ的に統一。コックピットに入ると、同じ六角形のモチーフが、光沢のあるシルカバーにレーザー・エンボス加工で配置されているのがまず目に入る。また、マット仕上げのカーボンファイバーによって、テクニカルでしかもエクスクルーシブな雰囲気がコックピットに満ち、それをグリジオ・カンナ・ディ・フチーレ(ガンメタル・グレー)のアクセントが引き立てている。
長年の顧客のためにデザインされ、完成までの全段階でクライアントが深く関与したワンオフ・モデルのSP48 Unicaは、フェラーリのレースの魂とスピードに関する奥義を巧みに組み合わせ強調し、既存モデルを効果的に変貌させるという目標を達成した特別な1台として完成している。
フェラーリの「スペシャル・プロジェクト」プログラムは、顧客の要望に添ってエクスクルーシブなデザインが作り出され、顧客は唯一無二のモデルのオーナーとなることができるシステムだ。顧客のアイデアを出発点として、それをフェラーリ・スタイリングセンターのデザイナーチームが発展させ、車両のプロポーションとフォルムを決定した後にデザインを詳細に検討し、スタイリング用クレイモデルを製作してから、新ワンオフ・モデルの製造に取りかかる。
全プロセスには平均1年以上を要し、その間、顧客はデザインの評価や検証プロセスに密接に関わることができる。こうして、跳ね馬のロゴを装着したマラネロ生まれの他モデルと同等の卓越したレベルで設計された希少なフェラーリ・ワンオフ・モデルが誕生するのである。