以前から予告されていたように、2013年3月5日から開幕したのジュネーブショーで、フェラーリの限定モデル「ラ・フェラーリ」の全貌が明らかになった。ネーミングからもわかるように、「ラ・フェラーリ」はF1グランプリを戦ってきたフェラーリの存在意義を大胆に盛り込んだもので、市販モデルの頂点に位置する史上最速の市販フェラーリとなる。なお「ラ・フェラーリ」は499台の限定生産モデルとされるが、価格は発表されなかった。
「ラ・フェラーリ」はフェラーリ市販モデルシリーズのフラッグシップとするため、6.3Lの排気量を持つV12型エンジンにF1チームが使用しているKERS(減速エネルギー回生/駆動システム)を組み合わせて採用している。またV12型エンジンにもF1グランプリチームが採用している技術が随所に採り入れられている。エンジンとモーターを組み合わせたシステムはハイブリッドKERS(HY KERS)と名付けられている。この結果、超高性能の動力性能とCO2排出量330g/kmを達成することになった。
F1テクノロジーを全面的に採用した結果、性能、エアロダイナミクス、効率、ハンドリングのいずれもかつてないレベルに到達したという。
ボディの設計にもF1チームが携わり、コンパクトなホイールベースながら理想的なリヤ荷重配分59%を実現している。すべての重量物はホイールベースの間にまとめられ、しかもできるだけ低い位置にレイアウトした結果、重心高はエンツォより35mm低下されたという。シートは固定式とされ、ペダル類とステアリングのポジションをドライバーに合わせて調整できるようになっている。
ドライビング姿勢はフォーミュラカーと同等で、これらはフェラーリのF1ドライバー、アロンソやマッサも細かくチェックしたという。ボディ骨格はプリプレグカーボン製で、F1製造工房で手貼りされ、成形された後にオートクレーブで加熱され硬化処理されている。こうした工法のためシートやバッテリーケースはモノコック部と一体化され、軽量化や剛性の向上に役立っているのだ。
空力システムはアクティブ可変式を装備する。フロント床下のディフューザー、ガイドベーン、リヤのディフューザーとスポイラーが走行状態に合わせて自動的に動き、空気抵抗の増大なしに最適なダウンフォースを発生するようになっている。またダウンフォースの大きさもこれまでの市販レベルを大きく上回るという。
ミッドシップマウントされる65度V12型ドライサンプ・エンジンは6.3Lで800ps/700Nmを発生し、最高許容回転数は9250rpmと、かつてないほど高回転となっている。圧縮比は13.5、リッター当たり出力は128ps/Lだ。このエンジンは連続可変式インテークダクト、空力形状のクランクウェブ、軽量クランクシャフト、鏡面加工されたカムなどを備える。
排気系はインコネル合金をハイドロフォーム成形により製造し、エキゾーストマニホールドは等長6-1集合としている。トランスミッションは7速DCTを装備。
トランスミッションの後端に直結されるモーターの出力は163ps(120kW)で、したがって総合出力は963psとなる。モーターは発進時からアシストし、エンジンとモーターの総合最大トルクは900Nmに達する。マニエッティマレリと共同開発されたモーターは2個組み合わされ、ひとつは駆動用、片方は補機用となっている。
バッテリーパックはエンジン前側の床下に格納され、15個のセルをまとめたモジュールを8個搭載する。この重量60kgのバッテリーパックは水冷・エアコン冷却システムを備える。バッテリーの組み立ては、KERSで経験を持つF1チームが担当している。ハイブリッドシステムとしてはパラレル式で、減速エネルギーを回生してバッテリーに蓄え、加速時にモーターの駆動力はエンジンのブースターとして使用されるのだ。電力のみでの走行モードはクルマのコンセプトに合わないとして採用されていない。
「ラ・フェラーリ」の最高速は350km/h以上、0-100km/h加速は3秒以下で、マラネロのテストコースのラップタイムもこれまでの市販フェラーリの中で最速タイムをマークしているという。「ラ・フェラーリ」は、「エンッオ」の後継モデルとされるが、これまでに登場したフェラーリ・モデルの中で最速であり、生産台数が最初から限られているため稀少モデルでもある。