2012年7月5日、フェラーリ・ジャパンは東京でF12ベルリネッタの発表会を行うとともに受注を開始すると発表した。本国での生産もこれから開始されるため、日本でのデリバリー開始は12月頃に予定されている。なおフェラーリ599GTBの後継モデルにあたるF12ベルリネッタは、3月に開催されたジュネーブショーでワールドプレミアを行い、ヨーロッパでの受注を開始している。
F12ベルリネッタは、フェラーリの歴史の中で、最も高出力のV12型エンジンををフロントミッドシップに搭載し、リヤにトランスアクスルを配置した超弩級GTカーだ。フェラーリ社ではV12気筒のFRクーペが伝統的に最高位とされ、この2座席クーペは599の後継モデルであり、フェラーリのフラッグシップと位置付けられる。
F12ベルリネッタのデザインは、エアロダイナミック性能と、フラッグシップらしいエレガントなプロポーションを調和させ、典型的なフェラーリのフロント・エンジンGTのフォルムを備えている。デザインはピニンファリーナ、ボディワークはフェラーリ・スカリエッティによるものだ。
デザイナーとエンジニアが協力し、空気の流れをコントロールすることで、空気抵抗の低減とダウンフォースの発生を両立。またこれにより造形美と機能性を融合させているのだ。
前面からの空気は、フロント・フェンダーの頂点とボンネット中央との間の深い溝を通り、左右2つに別れて流れる。そして、ホイールアーチとAピラーの間に設けたブリッジの下側を抜けてボディ側面に流れ、さらに側面から後方へと跳ね上げることで空気抵抗とダウンフォースを両立させているという。また、フロント左右のブレーキエア入り口は電子制御式ガイドベーンが設置され、必要な時のみブレーキ冷却エアを導入する仕組みになっている。
リヤエンドは現代的なカムテール形状をつくり上げている。なお、Cd=0.299、ダウンフォースは200km/hで123kgを発生するという。これにより最高速を向上すると同時に燃費を低減させている。
F12ベルリネッタのインテリアは豪華すぎず、適度に洗練され、質感の高い仕上げになっている。スポーティさと機能性を追求した結果、室内空間は最小限ながら、快適なドライビング・ポジションを得ることができる。フェラーリらしいデザインは、ロジカルで人間工学に基づいたコクピット操作系のレイアウトに集約されている。
マン・マシン・インターフェスを重視し、ドライバーはステアリングから手を離すことなく、すべての操作スイッチにアクセスでき、必要な情報の全てが正面に表示されるようになっているが、これはまさにF1テクノロジーといえる。コクピット後方は、レザー製ラゲッジストラップで荷物を安全に収納できるレザー仕上げのリヤベンチが設けられている。
フロント・ミッドシップに搭載される排気量6262cc、65度V12気筒エンジンは、フェラーリFFと共通のユニットだが、V12型の自然吸気エンジンとして空前のパワーを発生する。最大出力740psで、リッター当たりの出力は118ps/L。また、最大トルクは690Nmで、2500rpmからその80%以上を発生させ、最高回転数は8700rpm。
F1エンジンと同様に、このV12型は慣性モーメントを小さく抑えているため、鋭いピックアップで吹け上がる。圧縮比は13.5。カムの鏡面加工、DLCコーティング・タペット、低フリクションコート被膜スカートなど、F1と同等の低摩擦設計を採用している。エアインテークは共鳴過給効果と、等長吸気となるよう設計されている。
車輌の重心を下げるためにクランクケースは新設計で、そのためエンジンの搭載位置は従来より30mm低くなり、前後方向でも599と比較してシャシー後方向に設置されている。
エンジンは200barの高圧直噴、マルチスパーク・イグニッション、さらにハイ・エモーション/ロー・エミッションのHELEスタート&ストップも採用し、燃費はヨーロッパ複合モードで15L/100km 、CO2排出は350g/kmと、599より30%改善させているという。なお、エンジン・サウンドのチューニングも入念に行われ、澄んだ高音のフェラーリ・サウンドが実現している。
デュアルクラッチ・トランスミッションはリヤアクスル直前に配置されるトランスアクスル方式で、このユニットは458イタリア、カリフォルニア、FFで使用されているものと共通で、高出力に合わせ専用クロスレシオとされている。またリヤデファレンシャルには電子制御E-Diffシステムを内蔵。
動力性能は、最高速340km/h、0-100km/hが3.1秒、0-200km/hが8.5秒と従来モデルを大きく凌駕する。フィオラノ・テストコースのラップタイムは599より3秒以上速いという。
パッケージングでは、前後のオーバーハングの短縮と軽量化、重心は25mm低められ、かつより後方に重心位置を変更。ボディサイズは599との比較で全長が-47mm、全高が-63mm、全幅が-20mmと縮小。車両全体では70kgの軽量化を行っている。なお前後荷重配分は46:54で、従来より1%リヤ荷重が増大している。ラゲッジスペースは320Lで、トランクとコックピット後部を一体化することで500Lにまで拡大できる。
ボディはアルミ・スペースフレーム、アルミ外皮のオールアルミ製だが、最新の航空機コンセプトが採用され、高強度押し出し成型材、鍛造材、鋳造材のパネルを最適に組み合わせている。599と比較してボディ重量は50kg軽量化され、剛性は20%向上、シャシーの局部合成は2倍になっているという。もちろん、ボディワークはスカリエッティ工場で行われている。
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンク式で、いずれもインホイールタイプ。ダンパーは最新世代のマグネチックダンピングで、高応答コイルと専用のソフトウェアを採用。
この結果、路面からの入力やドライバーの操作に対して反応速度が大幅に改良され、車体の反応はより俊敏になっている。またシャシーはフェラーリの統合制御システム(SCM、F1-Trac、E-Diff3、ESPプレミアム、ハイパフォーマンスABS、F1-DCTギヤボックス・ソフトウェアなど)と組み合わされることで圧倒的なハンドリング性能を実現している。またブレーキは最新世代のカーボン-セラミック・ブレーキを採用している。
フェラーリF12ベルリネッタ価格:3590万円