2012年2月29日、フェラーリは新世代V型12気筒モデルとなる「F12ベルリネッタ」を、3月8日から一般公開されるジュネーブ・モーターショーに出展することを明らかにした。「599」シリーズの後継となる新型車で、6.3LのV型12気筒エンジンをミッドフロントに搭載。100km/hまでの加速は3.1秒という、フェラーリ史上最速の新しいフラッグシップの誕生だ。
F12ベルリネッタはトランスミッションをリヤに配置するトランスアクスル・レイアウトを採用。ホイールベースが短縮され、エンジンやダッシュボード、シートなどを低く配置する一方で、リヤ・サスペンションとギアボックスに新たなレイアウトを採用することで、リヤセクションをコンパクトにすることに成功している。
さらに新設計のスペースフレーム・シャシーとボディシェルには、自動車部品用として初めての新素材も含めて12種類の軽合金を使用。その結果、従来モデルの599XXよりもボディ剛性を20%高めつつ、70kgも軽い1525kgの車重を実現。前後荷重配分も46対54という理想的な数値になっている。
搭載される排気量6262ccの 65度V型12気筒エンジンは、自然吸気の12気筒エンジンとして前例のない性能と回転数を発揮する。最高出力は740ps/8500rpmで、最大トルクは690Nm/6000rpm。その80%のトルクが、2500rpmという低回転域から発生。トランスミッションはクロスレシオのF1デュアルクラッチだ。一方で燃料消費量は、CO2排出量を350g/kmに抑えることによって30%も削減している。
F12ベルリネッタは空気力学面の開発でも優れた結果を達成している。大規模な計算流体力学(CFD)シミュレーションと膨大なウィンドトンネル実験を実施。その成果、ダウンフォースは76%も増えた一方で、ドラッグ(抵抗)は飛躍的に減少(Cd値 は0.299)。
具体的なアイテムとしては、ボンネットでダウンフォースを発生させるエアロ・ブリッジが挙げられる。空気の流れを車両上部から側面に誘導し、ホイールアーチからの乱流との相互作用によって空気抵抗を低減させるものだ。もうひとつの注目はアクティブ・ブレーキ・クーリングで、ブレーキ冷却用のエア・インテークを高温下でのみ開くシステムで、ドラッグの低減に貢献している。
さらにF12ベルリネッタは最新のカーボンセラミック・ブレーキ(CCM3)を採用。磁性流体サスペンション制御システムは599のSCMから「SCM-E」に進化。E-Diff、ESC、F1-Trac、ハイパフォーマンスABSなども装備している。
その結果、静止状態から100 km/hまでの加速に要するタイムは3.1秒、同じく200 km/hまでの加速タイムが8.5秒を実現。フィオラーノ・サーキットのラップタイムは1分23秒で、フェラーリのロードカーにおいては史上最速だ。
デザインは今回、フェラーリのスタイリングセンターとピニンファリーナのコラボレーションによるもの。フェラーリのV12型フロント・エンジンの特徴である、調和の取れた比率による空気力学の完璧なバランスを具現化。洗練され、アグレッシブなラインを描くクーペボディは、そのコンパクトな外部ディメンジョンとは相反する室内スペースと快適性を確保している。
またポルトローナフラウのレザーを使用した新しいインテリアは、細部に至るまで洗練された手作業で設えられ、そのバランスのよさが目を引く。軽量で傾きのあるダッシュボードの中央部には新しい意匠のカーボンファイバーを用いて、航空分野のデザインからインスピレーションを受けたアルミニウムの空気孔がデザインされている。
キャビンは、シート後部に設けられたラゲッジスペースを含めて、車内スペースの使いやすさを追求。このスペースにはテールゲートのデザインにより空間が確保されたため、簡単に手が届くのが美点だ。またコクピットはすべてのフェラーリ・モデルと同様に最大の人間工学を保証するため、すべての主要コマンドがすぐに手にする範囲にグループ化するヒューマン・マシン・インターフェス(HMI)が適用されている。
■フェラーリF12 ベルリネッタ主要諸元
●ディメンション:全長×全幅×全高=4618×1942×1273mm/乾燥重量=1525kg(軽量パーッケージ車) ●エンジン:65度 V型12気筒DOHC/排気量=6262cc/740 ps/8500 rpm/690 Nm / 6000 rpm ●パフォーマンス:最高速度=340 km/h以上/0→100km/h加速=3.1 秒/ECE+EUDC複合サイクル燃料消費=15 L/100km/同CO2 排出量=350 g/km (HELEシステム搭載車)