フェラーリ本社は2025年10月8日、9日にマラネロでフェラーリ初となる量産仕様の電気駆動スポーツカー「エレットリカ」のプラットフォーム/シャシーなど主要なコンポーネンツを初公開した。

言うまでもなくこの「エレットリカ」は、これまでの内燃エンジン・モデル、ハイブリッド/PHEVモデルに続く次世代モデルで、フェラーリのマルチエネルギー戦略における重要な役割を担っているモデルだ。
「エレットリカ」は、フェラーリ共通の比類のないドライビングプレジャー、ハイパフォーマンスと、最新のテクノロジーを融合させたEVスポーツカーであり、F1技術、これまでのハイブリッドやPHEVなどの電動技術を大幅に発展させて採用している。

この「エレットリカ」を実現するために60件におよぶ特許を取得し、プラットフォーム、シャシーからボディシェルまで75%のリサイクル・アルミ材を使用し、1台あたり6.7トンのCO2を削減しているという。
プラットフォームは、短いオーバーハングで、ドライバー・ポジションは前進しており、フロア全面にバッテリーパックを配置している。バッテリーの85%がフロアの最も低い部分に搭載されており、その結果大幅な重心の低下を実現。内燃エンジン車に比べると重心高は80mmも低められており、これにより傑出した運動性能がもたらされている。


リヤ・セクションはフェラーリ初の独立したサブフレームを採用している。これにより振動やノイズが低減でき、同時に高いダイナミック性能を生み出している。このサブフレームは弾性ブッシュ付きのアルミフレームで、フェラーリ史上初となる一体形の大型中空鋳造となっている。この大型鋳造フレームは従来より数kgの重量増となっているが、静粛性の大幅な向上と高い運動性能を両立している。
ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス(NVH)が大幅に低減でき、同時に横Gがかかった状態でも高い剛性を実現しているのだ。つまりブッシュは横方向には高剛性で、上下方向に柔軟な特性が与えられている。
「エレットリカ」の4輪にはそれぞれ独立した4基のモーターが配置されている、この4輪独立モーターにより、前後の駆動トルク配分、左右輪の駆動トルク配分を自在に行なうことができる。

各モーターは、フェラーリのF1技術をそのまま採用したハルバッハ配列で、磁極の方向を最適配置することで特定の方向への磁場強度を最大化するタイプの永久磁石同期モーターを採用。フロントモーターの出力密度は3.23kW/kgで、ピーク出力時のエネルギー効率は93%に達する。リヤ・モーターの出力密度は4.8kW/kgだ。これらのモーターにはF1技術が投入され、超高回転、高効率得、しかも軽量である。
出力はフロントが2基合計で210kW(286ps)/最高回転数は3万rpmで、前輪には最大3500Nmの駆動力を与えることができる。リヤは2基合計で620kW(843ps)/最高回転数2万5500rpm。ローンチコントロール使用時は、後輪に最大8000Nmという信じがたい駆動力が発生する。


通常モードでは常時4WDで走行するが、前後左右の各輪に最適な駆動力配分が行なわれる。eモードの場合、高速走行などではフロント部は機械的に遮断され、後輪駆動で走行し、エネルギーロスを最小化することができる。
フロントはモーターと減速ギヤと一体化したユニットで、9kgと軽量。そしてSiCインバーターは最大300kWを発揮できる。社内で組み立てられるバッテリーパックのエネルギー密度は195kW/kgと世界最高水準に達し、もちろん、バッテリーパックの温度、性能を管理するための冷却システムも内蔵している。
モーターでの走行モードは、航続距離重視のレンジ、通常走行時のツアー、スポーツ走行向けのパワーという3モードを持ち、パワー、エネルギー制御、駆動力を最適にコントロールすることができる。なお加速性能は5段階のモータートルクが設定されており、ドライバーが右パドルで任意に選択できるようになっている。一方、左のパドルは回生ブレーキの強さを選択することができる。
電動化されたフェラーリは、あのエンジンの高周波サウンドを失うが、その代わりに高精度センサーがパワートレイン各部の機械的な振動を検知し、それを電気的に増幅させることでダイナミックな走行状況をドライバーにリアルタイムでフィードバックさせるようにしている。
この結果、ドライバーはリアルな没入感のあるサウンドを体感することができる。一般的な電子合成のエンジンサウンドではなく、フェラーリはリアルなサウンドを活用しているのが特長である。なお通常走行時は極めて静粛に走行し、急加速時やパドルを操作するとサウンドが発生するようにしている。
「エレットリカ」のシャシーはホイールベースを2960mmとし、ドライバーの着座位置はフロントアクスル寄りに前進しており、このため、ダイナミックなフィードバックがより体感でき、同時に十分なスペース、快適性を確保している。
ただし、このレイアウトでは前方衝突時のエネルギー吸収性能に課題があるため、「エレットリカ」は、フロントのタワー部でも衝突エネルギーを受け止め、同時にフロントのe-アクスルで衝突エネルギーを分散させる役割を備えている。

最高880V、容量122kWhのバッテリーパックはフロア下部に搭載され、これにより低重心化と重量軽減としている。なお、バッテリーパックとサイドシルの間には隙間が設けられ、衝突時のエネルギーはサイドシルが負担し、バッテリーが保護されるようになっている。
車両制御ユニットは1秒間に200回のデータ更新を繰り返し、サスペンション、駆動力、ステアリング舵角を予測制御することが可能だ。これにより卓越した俊敏性、安定性、そして意ののままのハンドリング性能が実現している。

そしてサスペンションには第3世代となる48V電源によるアクティブ・サスペンションを採用。これにより、乗り心地の向上はもちろん、ボディのロールやピッチコントロール、コーナリング時の4輪に最適な荷重配分を瞬時に行なうことで運動性能を大幅に高めることができるわけだ。
「エレットリカ」の動力性能は0-100km/h加速が2.5秒、最高速度は310km/h。最高出力はブーストモードでは1000psに達する。また、航続距離は約530kmとなっている。
新型「エレットリカ」は2026年初頭には、エクステリアやインテリアの一部が公開され、春頃にワールドプレミアが行なわれる予定になっている。