ステランティス・ジャパンは2022年3月17日、DSオートモビルの頂点に位置するフラッグシップ・サルーン「DS 9」を発売した。
プレミアム・ブランドのDSオートモビルは、これまでDS 3クロスバック、DS 4、DS 7クロスバックの3モデルをラインアップしてきたが、いよいよブランドの頂点に立つエレガントさを極めたエクスクルーシブ・サルーン「DS 9」が登場したのだ。
パリ発信のブランドとしての誇り、洗練された美意識を自動車の世界に持ち込み、フレンチ・ラグジュアリーカーの復興を担うDSオートモビルにとって、きわめて重要なモデルだ。また、このモデルは中国市場でのプレゼンスを高める戦略的なモデルでもあり、深セン工場で生産されている。
デザイン
「DS 9」は、ヘリテージとアヴァンギャルドというふたつの理念をベースにしており、エレガンスとフォーマル感を備える伝統的な3ボックスサルーンのプロポーションとなっている。「DSウィング」と呼ばれる表情豊かな造形のフロントフェイス、立体的でダイヤモンドのような輝きを演出するパラメトリック3Dグリルなど、DSオートモビルのデザイン手法を踏襲。
EMP2プラットフォームをベースにし、ボディサイズは、全長4940mm、全幅1850mm、全高1460mm、ホイールベース2895mmというD/Eセグメント・サイズとなっている。一条のキャラクターラインがサイドビューを貫き、ルーフラインは流れるように滑らかに、リヤのトランクへと溶け込んで、エレガントなラグジュアリー・サルーンであることを表現している。
フロントフード部分には、これまでもDSオートモビルの各モデルのインテリアに使われていた「Clous de Paris(クル・ド・パリ)」文様のクロームの装飾「セイバー(サーベルの意)」があしらわれており、リヤはDSバッジとトランクが同じような流麗な曲線で結ばれている。この部分に、パリのルーヴル・ピラミッド(ガラスのピラミッド)をモチーフとし、ひし形にレーザーカットされた彫刻的なリフレクターを持つテールランプが埋め込まれ、重層的でドラマチックな3D効果を演出されている。
またエクステリアに配されているクロームのデザインは、1930年代に栄華を誇ったフランスのコーチビルダーに捧げるオマージュとなっている。
インテリアは「DS 9」が、他のクルマとはまったく違うフレンチ・ラグジュアリーの世界観を主張している。ロングホイールベースがもたらす広々とした室内空間が生み出されており、ひざ下レッグスペースは約277mmの余裕ある空間を生み出している。リヤシートは、フロントシートと同等以上の快適性を提供する「DSラウンジ」と呼ばれるコンセプトで作り上げられている。そしてOPERA(オペラ)グレードにはルビーのような深紅が印象的なアールルビィと呼ばれるムラ染のレザーを貼り込んでいる。
インストルメントパネル正面と上面、前後ドアトリム上部、そしてDSオートモビルのシグネチャーともいえるウォッチストラップ・デザインのシートにナッパレザーを使用。
また、これら要所にオートクチュールのドレスの技法を由来とするパールトップステッチを配している。そしてルーフライナーはアルカンタラを全面に用いて高級感を生み出している。
RIVORI(リヴォリ)グレードには、シックなバサルトブラックのレザーにダイヤモンドパターンのステッチが施されたインストルメントパネルとシートを採用。どちらもインストルメントパネルには、ラグジュアリーカーの定番ともいえるウッドパネルをあえて使わず、左右に優美にアーチを描く視界全面にレザーを貼り込み、ステッチによるアクセントを施すなどこれまでにないラグジュアリーの空間を創造している。
8インチのタッチスクリーンの上部中央には、フランスのラグジュアリーウォッチ・ブランド「B.R.M」のアナログ時計を配し、下には、タッチコントロールスイッチと菱形に彫りが入ったボリュームダイヤルが配置。
スクリーンには主要な車両セッティングなどが表示される。このスクリーンとメーターパネルにも、菱形の反復によるグラフィックが用いられ、オリジナルフォントとあいまって1920年代にフランスで生まれたアール・デコ様式を想起させる。
OPERAグレードのシートはファーストクラスの快適性を目指し、リヤ左右席のシートヒーターに加え、クラス初となるベンチレーション機能を追加。さらに頭部をやさしく包み込むラウンジヘッドレストを装備している。
大型のセンターアームレストを倒せば、手元にUSBポートを備えたストレージとリヤシートの快適装備の操作スイッチが出現する。
室内の静粛性を徹底的に高めたことと同時に、フランスを代表するハイエンドオーディオブランド、FOCAL(フォーカル)とのコラボレーションによる14スピーカーと515Wの出力のサウンドシステムが、ピュアで解像感が高く、音楽的表情の豊かなオーディオ環境を実現している。
運転支援システムは、DSコネクテッドパイロットを搭載し、渋滞対応ACCではレーンキープ時に左右両側の白線の中央のみならず、ドライバーが任意に左右位置を決めることができるのが特長。
サスペンションは、路面をセンシングしてサスペンションを先読み制御するDSアクティブスキャンサスペンションを装備している。また6つの配光モードを自動で使い分けるDSアクティブLED ビジョンなど最先端のテクノロジーを満載している。
パワートレイン
パワートレインは、プラグインハイブリッド仕様のE-TENSEとガソリンエンジン仕様をラインアップ。
プラグインハイブリッドの技術バックボーンはフォーミュラE(DSテチータ・チーム)のテクノロジーで、ステランティス・グループにおける電動化戦略の先鋒DSオートモビルが担っているのだ。そして圧倒的な静粛性とともに発揮されるハイパフォーマンスは、Dynamic Serenity(静謐なるダイナミズム)というDSオートモビルならではの洗練されたスポーティさという世界観を示している。
プラグインハイブリッド(PHEV)はフロントに1.6Lの ピュアテック・ターボ・ガソリンエンジン(200ps/300Nm)と、81.2kW/110psのフロントアクスル用モーターを組み合わせている。システム総合出力250ps/360Nmのパフォーマンスを持ち、0-100km/h加速は8.1秒。EVモードにおける最高速度は135km/h。
搭載するバッテリーの容量は15.6kWhで、リヤシート下に配置されている。バッテリー電力のみでの航続距離は61km(ヨーロッパWLTPモード)。このバッテリーの満充電時間は、3kW/200Vで約5時間、6kW/200Vで約2.5時間となっている。
ガソリンエンジン・モデルは、定評ある1.6Lのピュアテック・ターボエンジンを搭載。軽量コンパクトで、優れた燃費性能を持ちながら、最高出力165kW(225ps)/5500rpm、最大トルク300Nm/1900rpmというパワーとトルクを発揮する高性能パワーユニットだ。
このエンジンは、直噴、ツインスクロール・ターボ、吸排気可変バルブタイミングなどの先進テクノロジーを搭載。ウェイストゲートバルブの電動化、ガソリン微粒子フィルターの採用により、高効率性と良好な燃費、そして環境性能を実現している。