【シトロエンC5 X 試乗記】これぞシトロエン 〜走りとデザインの独創性〜

シトロエンC5 Xは驚きの乗り心地とデザインを持つこれぞフランス車というインパクトを受けた。

シトロエンブランドのフラッグシップとしてデビューしたC5 XはDセグメントサイズで、2016年にC experience conceptが発表され、2021年中国でデビューしている。そして2022年に欧州デビュー、次いで国内は10月1日から販売が開始されるモデルだ。生産は中国の東風シトロエン成都工場で生産され、欧州、日本に輸出する。世界中で中国マーケットのシェアが大きくなっていることを実感するデビューだと思う。

試乗車はSHINE PACK(ボディカラーはオプションのグリアマゾニトゥ)

そしてラインアップはガソリンとPHEVモデルで、フランスでは一時ディーゼル車が7割を超えるほどの人気エンジンだったが、このC5 Xには設定がない。それは国内だけでなく、本国も中国にもないのだ。その理由をステランティス・ジャパンに聞けば「フランスではLEV(低公害車)車が購入できない人向けにガソリンが用意されており、ディーゼルのシェアはもはや1割程度にまで下落しています」という。

なんともショッキングであり、極端なEV化シフトになっていることがわかる。したがって、国内にもガソリンモデルとPHEVが導入されるわけだが、今回試乗できたのはガソリンモデルだけだった。御多分に洩れず、PHEVモデルは部品調達などに苦戦し生産が遅れているという状況だ。

さて、このC5 Xはご覧のように独特のデザインで独創的だ。ボディサイズは全長4805mm、全幅1865mm、全高1490mm、ホイールベース2785mmで、セダン、クーペ、ワゴン、そしてSUVの要素を持ったデザインのクロスオーバーだ。こうしたデザイン要素の融合で独創性を出せるあたりがシトロエンらしさでもある。そしてC5の後ろに付く「X」はこうしたクロスオーバーという要素と、70〜80年代にヒットしたシトロエンのプレミアムモデル「CX」をオマージュしてのXというわけだ。

PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)の乗り味

走行性能においても革新的で独創的だった。シトロエンにはハイドロニューマチックという一世を風靡した乗り心地をつくるシステムがあったが、時代の変化ともに終焉を迎え、それに代わるシステムとしてPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)が登場した。

このシステムはダンパーインダンパー構造で、バンプラバーの位置にさらにダンパーを仕込んだもので底付きをしないロングストロークな乗り味を作るものだ。しかしながら当初はそのストロークの長さには感心させられるものの、ハイドロニューマチックと同等というには違和感はあった。

サイドまで回り込むコンビネーションランプ
大型スポイラーを上下に備えたテールゲート

しかし、今回C5 Xに搭載されたPHCは、まさにシトロエンの乗り味再来と感動した。また、そうした過去を経験していない人でも、この乗り心地には驚きを得ると思う。

しなやかに動くサスペンション、ゆったりとした乗り心地なのに直進性が高く、どっしりとした安定感がある。シートにも「らしさ」が満載で、高密度ウレタンをベースに厚さ15cmのスポンジを乗せたシートは、包み込まれる安心感と、姿勢保持の安定感があり、路面からの振動も吸収しシトロエンらしい乗り味をさらに魅力的に推し上げている。

この独創的な乗り心地をもつC5 Xのエクステリアもひと目でシトロンと判定でき、またDセグメントに相応しいロングノーズのデザインにもなっている。さらにフェンダーアーチを黒くカバーすることでSUVの雰囲気もあり、まさにセダン、クーペ、ワゴン、SUVのいいとこ取りをしたデザインにまとめている。

19インチホイールとブラックのフェンダーアーチが存在感を放つ

日本人の女性が担当したインテリア

インテリアも独創的だ。日本人の女性が担当ということで、発表会会場にも登場していた。シートにシェブロンから想起されるステッチを入れたり、和風テイストなデザインを盛り込んだりしているあたりも斬新だと思う。

インテリア全体のコンセプトは、装飾を省いたミニマル思想のデザインということだが、そこはシンプルなデザインという印象で水平基調のダッシュボードなど、感覚的には受け入れやすいデザインに感じる。またドアに回り込むウッド調のデコラティブパネルの装飾など高級感を作り好ましい。

12.3インチの大型モニターはタッチパネル式でスクロールもスワイプもできる現代性のあるタイプだ。ただし、インターフェイスは分かりづらく慣れるまで大変。これはナビなどのエンタメに限ったことではなく、シトロエンやプレミアムブランドのDSからも感じることで、日本人の常識は通じないと思うことが多々あるのだ。

彼らの合理性や現代性、革新性、そしてステータス性で作られているのだろうが、一言で言えば価値観の違いがあり、そこをストレスと感じるか、尊重できるかによって、受け入れるか受け入れないが決まるだろう。ただし、最新の予防安全や運転支援機能、エンターテイメントは搭載しており、スペック上で見劣りするようなことはないことはお伝えしておく。ただ、使いにくい。

「この発想はどこから?」と感じたものをひとつご紹介すると、HUD(ヘッドアップディスレイ)が装備されていたが、表示する高さ調整がなかなかできなかった。数多くの新型車に乗ってきた経験から、インパネ右側に何かしらのスイッチがある、あるいはモニターをさわり、車両設定の中に調整機能があるという経験則だ。そのため試乗時、調整に手間取りなかなか出発できない。埒が開かずスタッフに聞くと、スタッフも無線を使って他のスタッフに聞いている。。。。

このジョイスティックが実は…

答えは右のドアアームにドアミラーの調整ノブがある。ジョイスティックタイプで、左右の調整と折りたたみのスイッチが周囲にあり、左ミラーの絵をクリックしてジョイスティックで調整する。そこまではわかる。驚くのはこのジョイスティックをニュートラルな中立の位置にして上下に動かすとHUDの表示が上下するのだ。これは見つけ出すことはできなかった。この日本人の常識に凝り固まった頭では予測すらできない場所にその機能があったのだ。ただし、一度わかってしまえば二度と迷うことはないが。

お伝えしたいのは使い勝手の悪さではなく、そのユニークさ、独創性、革新性といったものの表現を楽しめるかという投げかけであることをご理解いただきたい。

ユーティリティ&スペック

さて、ユーティリティを見るとロングホールベース化されたメリットを後席の広さに使い、ゆったりとした足元スペースを確保している。そしてトランクの大きさも特筆ものだ。フロアにはレールがあり、重いものでも容易にスライドできる工夫も盛り込まれている。またリヤテールゲートは足の蹴り込み動作をすると自動で開閉する機能もあり便利だ。

ハンズフリー電動テールゲートを標準装備

スペックをおさらいすると、ボディサイズはDセグメントサイズでプレミアムモデルと比較してもいいだろうが、この独創性は他に類をみないものでありライバル不在と言える。そして独創的なエクステリアデザインはSUVにも見えるが地上最低高は165mmで、SUVと呼ぶには低すぎる。やはりアーバンクロスオーバーだ。

1.6L PureTech ガソリンターボエンジン

プラットフォームはEMP2ver3で電動化に対応すべくバッテリー搭載を考慮したプラットフォームになっている。今回試乗したガソリン車はピュアテック1.6Lの4気筒エンジンで、180ps/250Nmに8速ATが組み合わされている。

各社電動化へシフトしていく中で「らしさ」の模索をし、特徴づけに心血を注ぐ努力している中、これだけコンベンショナルなパワーユニットながらインパクトを与えるモデルも珍しいと感じる。ぜひ、この独創性を多くの人に味わってもらいたい。


The Mortor Weekly

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