シトロエンC4にクリーンディーゼルエンジンが搭載され、国内デビューを果たした。シトロエンC4 FEEL BlueHDi は1.6Lディーゼルターボ。カタログ燃費とほぼ同等の燃費を記録する省エネエンジンだ。もはやガソリンなのかディーゼルなのか、判別できないレベルの静粛性を持ちつつトルクフルな走りも体感した。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
スペックは120ps/300Nm で、馬力だけみると、たいしたことない数値だが300Nmというトルクはこのエンジンの特徴を物語っている。青信号で発進し、ゆっくりアクセルを踏み込み車速を乗せる。周りの交通の流れに従い、速くもなく遅くもない程度に加速する。すると2000rpm付近でシフトアップをする。数度のシフトアップで制限速度に達する。アクセルは一定車速を維持するため、やや緩める。タコメーターは常に1500rpm以下を指し、交通の流れに乗って走ることができる。
高速道路の合流車線で車速を一気に100km/hまで加速させる。アクセルを踏んだ瞬間に力強い加速を体感する。シートバックに身体を押し付けられる感じだ。まさにディーゼルらしい力強さだ。余裕をもって本線に合流し100km/hの制限速度で走る。タコメーターは1700rpmを指す。組み合わされるミッションはアイシンAWの6速AT。
市街地でも高速でもこれだけ低回転で走行すれば、燃費もいいはずだ。カタログでは20.2km/Lとなっているが、今回の試乗では400km程度の走行距離で平均19.2km/Lだった。もっとも今回はワインディングでの試乗はせず、あくまでも日常使いでの走行での燃費だ。それだけに、お財布には相当優しいと感じられるだろう。
日本では軽油価格も安いので、かなりコスパがいい。ちなみに、装着されるタイヤはミシュランのエナジーセーバーでエコ性能の高いタイヤでありながらウエットブレーキ性能もしっかりとした欧州基準のエコタイヤだ。タイヤサイズは205/55R16 。16インチというのも乗り心地に好影響をもたらしているのは間違いない。
■シトロエンらしさとは
途中助手席にも座ってみた。するとエンジンがディーゼルなのかガソリンなのか?全くわからないことに気づく。ドライブしているときは、いくら静かになったとはいえ、ディーゼルであることを感じながら運転していた。それはアクセルペダルに伝わるゴロゴロとしたディーゼル感と、少しのアクセル開度でトルクがグッと立ち上がる特性を感じていたからだ。
ところが助手席でただ座っているだけだと、そのあたりの雰囲気を一切感じない。静かで、シトロエンらしい優しい乗り心地とシートの座り心地の良さに気を奪われ、エンジンが何であるか?全く気にもならない。
全長は4330mm×全幅1790mm×全高1490mmはCセグメントど真ん中で、シトロエンが誇る量販モデル。それでいてシトロエンらしさが随所にあり、「へ~」とか「ほ~」といった感心感嘆がおきる。
スピードメーターとタコメーターの照明はホワイトから濃いブルーまでグラデーションの無段階調整が可能。ターンシグナルの音すら、独特の音を奏でる。オートライトや雨量感知式ワイパー、左右独立のエアコンなど装備は豪華だ。また、ヒルスタートアシストやバックソナーなども備え、プレミアムモデルとの装備差は感じない。
かつてのシトロエンほど個性的ではなくなったと、シトロエンをよく知る人には映るかもしれないが、グローバルモデルであり世界中の多くの人が「欲しいな」と思えることが要求される量販モデルであることを思えば、十分他のCセグメントモデルよりは個性的であり、シトロエンらしさを持ったモデルだと思う。
■ベストバイは乗り方、使い方で判断
最新の輸入車の右ハンドル仕様は違和感のないドライビングポジションを取れるモデルが増えたが、シトロエンはその点がまだ甘い。キャビンフォワードの影響もあり、ペダルの位置とハンドルの位置がしっくりとしない。ステアリングに合わせるとペダルが手前に感じてしまい、ペダルに合わせるとハンドルが遠くなってしまう。また、ペダル配置もやや左にオフセットもしている。おそらく左ハンドルではこうした「気になる点」というのは存在しないだろうが、右フロントタイヤのホイールハウスがすべてを難しくしていることがよくわかる。
乗り心地はシトロエンらしく、ゆったりとした乗り心地でフランス車に対するイメージの期待を裏切らない。期待通りの乗り心地を味わうことができる。操舵感も量産モデルにふさわしい穏やかなフィールでありつつ、ボディのしっかりとした剛性感を感じ、塊で守られている安心感は高い。
シトロエンC4には従来からのガソリンモデルがあるが1.2Lの3気筒ターボで259万円、この4気筒1.6Lディーゼルターボは279万円で、20万円の差はあるが長距離を乗るユーザーであればこの差分はすぐに埋まるだろう。
また、高速を低回転で走る気持ち良さ、楽と感じるトルク感を考えればおすすめモデルはディーゼルだ。逆に一回の走行距離が短いチョイ乗りの多いユーザーであれば、ガソリンモデルのほうがおすすめだ。