2014年2月17日、プジョー・シトロエン・ジャポンは、シトロエンのBセグメント5ドア・ハッチバック「C3」と「DS3」に新開発のエンジン、トランスミッションを搭載し、「C3」は同日から発売を開始、「DS3」は2月24日から発売すると発表した。新開発のエンジンは1.2L・3気筒のEB2型、新トランスミッションは5速シングルクラッチAMTのETG5だ。「C3」はこの新パワートレインの登場により、従来の1.6L/4ATは消滅する。また「DS3」は1.6Lターボ/6速MT仕様のSport Chicと、ETG5仕様のChicの2グレードとなる。
EB2型エンジンは、プジョー・シトロエン・グループが次世代のA~Bセグメント用として総力を挙げて開発され、従来のヨーロッパ仕様の1.4L・直4をダウンサイジングさせたエンジンとなる。開発コンセプトは、軽量・コンパクト、低フリクション、大トルクの実現と、大幅な燃費の向上である。オールアルミ製のEB2は、排気量1199.9cc、ボア・ストローク75.0×90.5m、圧縮比11、DOHC4バルブの3気筒エンジンである。3気筒の場合は近年はバランサーシャフトなしのエンジンがほとんどだが、EB2はバランサーシャフトを装備している。また燃料噴射はマニホールド噴射式だ。
吸排気カムには連続可変バルブタイミング(VVT)を装備。きわめて長い樹脂製吸気マニホールドを備え、118Nmの最大トルクを2750rpmと驚くほど低回転で発生するのが特徴だ。その一方で最高出力は82ps/5750rpm、最高許容回転数6750rpmと低回転トルク型にもかかわらずパワーも犠牲にしていない。
3気筒にしたことに加え、エンジン内部のフリクションも徹底して低減し、可変容量式オイルポンプ、2系統冷却を採用。ちなみに摩擦抵抗は4気筒1.4Lエンジンに比べ30%低減され、エンジン重量は20%軽量化となり、燃費は25%、パワーは15%向上しているという。また冷間始動時点火時期遅角も採用し、素早く排気ガス温度を高め、排ガス浄化性能の向上も図っている。
またこのエンジンはオン・オフのスイッチ付きストップ&スタートシステムも備えている。
5速AMTのETG5との組み合わせで、C3はJC08モード燃費はC3が12.1km・Lから19.0km/Lに、DS3 Chicは12.5km/Lから18.6km/Lへと大幅な向上を果たしている。JC08モード用のチューニングなしでのこの燃費は十分満足できるレベルにあるといえよう。
ETG5(エフィシェント・トロニック・ギヤボックス)と呼ばれるシングルクラッチの5速AMTは、従来からの軽量な5速MTに電動式クラッチアクチュエーターとギヤセレクターを付加した軽量・コンパクトなユニットで、ギヤ比も従来からのMTと同じで、ファイナルギヤ比のみが異なっている。そして、Dモードとマニュアルモードを備え、Dモードは早めにシフトアップする。フランスやイタリアのMT王国でコンパクトカーがAMT化されているのはAMTの方がMTより燃費が良いからだ。MTはドライバーが得てしてエンジンを引っぱりすぎるわけだ。このユニットは、クリープ機能、ヒルストップ機構も備えている。
このAMTは、シフトレバーを左側に倒すとシーケンシャルシフトになり、同時にC3もDS3もステアリング裏側のパドルでもアップ、ダウンの操作もできるようになっており、変速操作のしやすさは抜群だ。このA、Bセグメントでは日本ではCVTオンリーだが、よりシンプル・軽量なAMTの存在は改めて評価して良いだろう。
■C3 セダクション試乗
では、この新パワートレインを搭載した走りはどうか? まずはC3セダクションのステアリングを握る。Dモードで発進するが、ATやCVTのイメージでアクセルを踏み込むと、ガクッと発進のショックがある。どうやら自動クラッチ、変速はアクセルペダルの踏み込み情報をメインにしているようで、無意識なアクセルの踏み込みではクラッチがあわてて繋がるようだ。
そこで、意図的に発進時だけはアクセルの踏み込みの初期をゆっくりとすることで滑らかに発進できる。走り出してからのDモードでの変速は、CVTやATのようにアクセルを踏み込んだままでの変速ではAMTは逆にもたつくので、ギヤチェンジをしたいタイミングでアクセルを緩めるという操作さえすればもたつきなく加速していく。
しかし、やはりこうしたAMTはマニュアルモードにしてシフトレバーの前後操作によるシーケンシャルシフトか、パドルシフトを駆使してのマニュアルモードが真骨頂だろう。アクセルペダルを踏む右足を緩めてパドルを操作すると気持ちよくギヤチェンジができる。もちろん、シフトダウンすると自動ブリッピングが行なわれる。
C3に乗ってみると、同じユニットを搭載するプジョー208とは明らかにフィーリングが異なる。このあたりはシトロエン・ブランドの味付けをきっちりしているのだ。まずは、スロットルレスポンスがシトロエンC3の方がシャープだ。恐らくスロットルがやや早開きにしてあるのだろう。
EB2エンジンは低速トルクが十分に感じられ、同時に吹け上がりは振動感がない滑らかで気持ちよい吹け上がりだ。こうした吹け上がり感はスポーティ・エンジンといってもよいだろう。また市街地などで5速・1500rpmでもゆっくり加速加できるというフレキシビリティも味わうことができる。イメージ的には自然吸気の1.2Lとはとても思えないフィーリングだといっていいだろう。
ハンドリングは俊敏・正確で、その一方でサスペンションの初動がソフトで、そこからのストローク感がたっぷり感じられるのもシトロエンというブランドの主張だろう。またAピラー越しの斜め前方視界のよさも抜群だ。小さいクルマであっても視界の良さは運転のし易さは重要な要素だ。
C3は、Bセグメントのベーシックもデルだが、走りの楽しさ、小気味よさ、シャシーの懐の深さといった面でシトロエン独自のテイストをしっかり身に付けていることが印象的だった。
■DS3 Chic 試乗
ベースはC3と同じだが、DS3はデザイン、装備やインテリアの仕上げなどで、1ランク上であることが感じられる。小さなボディサイズながら高級車の雰囲気を漂わせ、より個性的で自分のライフスタイルを表現できるクルマといったポジショニングがダイレクトに実感できる。
だから走り出すと、C3とは同じ走りの方向性ではあるが、よりしっとりした味わいがあり、違いがあることが体感できる。なお、今回のパワートレーンの変更以外に、DS3の2グレードとも8スピーカーのHiFiオーディオが標準装備されている。
DS3のスロットル特性や変速フィールはC3と同じで、スポーティなドライビングプレジャーを味わうことができるが、インテリアのデザイン重視の作り込み、例えばダッシュボード左寄りにあるパルファムエアフレッシュナー(香料発生器)などのこだわりのひとつひとつがDSワールドに引き込んでくれるという一面も持つ。これがDS3の最大の魅力だろう。