シトロエン ベルランゴ 個性的なデザインと極上の乗り味(FF 1.5Lディーゼルターボ+8AT)

シトロエン ベルランゴという個性的なデザインのマルチアクティビティヴィークル(MAV)に試乗してきた。

シトロエンらしい独創性の高いベルランゴ

ミニバン、SUV、ワゴンを融合したMPVで、フランス本国でも人気の高いモデル。ボディサイズは全長4405mm、全幅1850mm、全高1850mm、ホイールベース2785mmでEMP2プラットフォームを使ったモデルだ。搭載するエンジンは国内では1.5LディーゼルターボにアイシンAW製の8速AT「8EAT」を組み合わせている。

2019年11月にファーストエディションをオンライン予約で開始したが、わずか5時間半で完売という人気で、グループPSAジャパンでは急遽、一ヶ月後に追加のオンライン注文を受け付けるなど、話題を呼んでいる。そして2020年10月からは正式にカタログモデルとしてラインアップすることになり、試乗することができた。

シトロエンのブランドコンセプトである「極上の乗り心地」は、このベルランゴにも踏襲され、シトロエンらしいストロークのあるサスペンションが特徴的だ。量販モデルであり、商用ベースということもあり豪華さや上質という狙いよりも、実用性や利便性を訴求しながら快適性も追求したモデルという印象。

試乗車はベースグレードのFEELで部分的には商用的な印象を受けるものの、全体には個性あふれるシトロエンらしさがある。グレード構成は「FEEL」「SHIN」「SHIN XTR PACK」とあり、レザーステアリングやヘッドアップコンパートメント、カラーシートなど豪華さが足されていく。

樹脂部分が多く商用車感があるものの、細部までデザインされている
ゴムマットの装備も商用車的

見ての通り、非常に個性的なデザインでシトロエンらしさはこうしたデザイン、乗り心地で表現されている。全幅と全高が同じサイズだから正面から見れば正方形というユニークかつ愛嬌を感じる形で、なおかつ、個性的な顔つきは独特の世界観と魅力を放っている。

ボディサイドは両側スライドを採用し、シトロエンのアイコンデザインとも言えるエアバンプでデコレートしている。インテリアもすべてがデザインされている。メーターはオーソドックスな2眼式で見やすく、ドライバーオリエンテッドのようにコンソールがややドライバー側に向けてあるレイアウト。

ダイヤル式のシフトと隣の穴は何用?
後席は独立した3席になっている

シフトレバーはなく、シフトダイヤル式になっていて、一度Dモードに入れたら駐車するまで一切手を触れないドライビングスタイル。かと思いきや、なんとパドルシフトが装備されていて、こうした価値感もユニークだ。

またドリンクホルダーは装備されているものの、ペットボトルを入れることはできず、こうした細かいことは日本車には及ばないものの、気に入らなければ国産車が向いている嗜好と理解し、フランス車らしいという前向きな捉え方をしたい。

リヤラゲッジは商用ベースということもあり、広大な荷室がある。5名乗車でトノカバー下でも597Lもの容量があり、2列目シートを倒した状態では2126Lまだ拡大する。またグレードによって頭上にも収納スペースがあり、独創性のかたまりを感じる。

走行シーンでは、やはりストロークのある乗り心地が印象的だ。しっかりとしたドイツ車とは正反対とも思えるしなやかで、どこまでも伸びていくようなサスペンションには、シトロエンらしさを感じる。そのため初期のロールは大きめに感じるが、ある程度ロールするとそこでしっかりと支えられるので不安定さは感じない。また装着タイヤがミシュランのプライマシーで、205/60-16はその扁平率からも乗り心地には効果的だ。

ロードノイズはそれなりに侵入してくるものの、商用車のようではない。エンジン音も同様に聞こえるというレベルでやかましいとは言えない。このレベルの音であれば高速道路でもっとうるさくなるのかという危惧もあるが、実はそうならない不思議がある。逆に直進性の高さと滑らかさのほうが際立ち、走行音はやはりそれなりの音、という程度にしか感じない。

1.5Lディーゼルターボに8速ATパドルシフト付き。さらに先進運転支援システムも搭載
配送伝票でも置くのだろうか?頭上におおきな物入れがあり実は便利?!

直進性の高さはある意味フランス車の特徴でもあるが、ワイドトレッドを感じさせ踏ん張り感があり、どっしりと走る安心感がある。130ps/300Nmの出力でもディーゼルターボという特性を活かし、高速でもレスポンスよくエンジンが反応し、合流加速や追い越し加速でも気持ちよく走れる。ストレスとは無縁だ。

こうした乗り味は、長距離移動も快適で楽しくなり、さらに先進の高度運転支援システムも装備されているので、渋滞時や巡航時の運転疲労軽減も期待できる。

見た目、走り、使い勝手など、どれをとっても独創的であり、シトロエン ベルランゴはクルマに個性を求めている人に最適なモデルと言えるかもしれない。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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