【シトロエン】C3試乗記 ファッションの国フランスが生む個性派のコンパクトカー

マニアック評価vol85
2009年のフランクフルトショーでデビューし、国内では2010年5月から販売が開始された2代目C3に、試乗してきた。ラインアップされるグレードはC3とC3エクスクルーシブの2モデルとなる。C3のその最大の特徴はスタイリングだろう。中でも体験したことのないような大きなフロントウインドウは圧巻だ。この大型ウインドウはルーフまで回りこんでいるのだが、サンシェードが内側にあるので、サンルーフと同じような使い方ができ、日差しが強すぎると感じれば、調整できるようにはなっている。

 

試乗会場となった横浜エリアでは、高層ビルの上部まで車内から見上げることができ、確かに新鮮な感覚を覚える。ゼニス(頂上)・フロントウインドウと名付けられたフォルムは外観からもその特徴が良く分かる。クルマ全体のラウンドしたデザインとよくマッチし、かわいらしい雰囲気を持ったデザインになっている。もともとC3はシトロエンの傑作車である「2CV」をモチーフにデザインされているので、2CVが持つキャンバストップに触発されたゼニス フロントウインドウなのだろう。

シトロエンC3
シトロエンC3 個性的なデザインで魅力的。ゼニス フロントウインドウという大きなウインドウが特徴的

ゼニス フロントウインドウからルーフへ続くラインはゆるやかにラウンドし、テールエンドまでキレイなラウンドシェイプにデザインされている。そのため、リヤの居住性もコンパクトなボディでありながら確保されていることがわかる。

C3リヤC3サイド

インテリアでは、エクステリアのフォルムから、腰掛けて運転するようなドラポジをイメージするが、そこは欧州車の基本はしっかり押さえられており、シート座面の後傾角がキチンとついていて、体重を腰と背中に分散されるようになっている。ゼニス フロントウインドウの影響もあるのか、ヘッドクリアランスも大きく感じ、ゆとりを感じる広さがある。とくに足元のスペースには余裕があった。

全体的におだやかな印象のインテリアなのだが、ステアリング下部を水平にカットしたデザインで、レザー巻きとあわせて、ドライブすることを意識したデザインを取り入れている。メーターの視認性も高く、デジタルとアナログの組み合わせも見やすい。ただ、唯一シフトレバーが下方すぎると感じた。

メーターインテリア

搭載されているパワーユニットは両グレードともに、1.6Lに4速ATが組み合わされ、88kw(120ps)/6000rpm、160Nm/4250rpmという出力。10・15モード燃費は12.3km/Lというスペックだ。ご存知のように、シトロエンではこのエンジンとミッションの組み合わせが、日本導入の主力となっている。もちろん、欧州ではこのC3にディーゼルやマニュアルミッションを搭載したモデルなどが主流で、多くのバリエーションを選択できるのだが、日本ではこのユニットだけになる。

その背景には、国内ユーザーのAT好き、ディーゼル嫌いという部分が大きいのではないだろうか? マニュアル好きは既に高年齢のマニア層に限られ、ディーゼルにいたってはイメージの悪さと圧倒的走行距離の少なさというのがある。そのためメリットを感じられなったりするわけだ。

その結果、導入されるパワーユニットはこの仕様に限定されているわけだ。市街地や首都高速での試乗だったが、4ATであるデメリットは感じない。ワイドレシオのギヤ比はカバーする車速域が広く、無駄に変速しないという見方もできる。ドイツ車が多段化していく流れを気にすると、気になる部分だろうが実用的には問題ない。

ひとつ気になるのが乗り心地で、装着されるタイヤが195/55-16という設定で、試乗はミシュランのエナジーセイバーを履いていた。決して乗り心地が悪いと言う話ではないが、クルマのキャラクターからして60偏平の15インチという選択肢はないのだろうか?もちろん見た目の印象は16インチのほうがカッコよく、スタイリッシュに見えるのだが。

ゼニスフロントウインドウ
ゼニス フロントウインドウ 頂上を意味するゼニス。 開放感が高い

ライバルとなるVWポロのエントリーモデルは1.4L+ターボに7速DSGで武装しているが、出力はC3と大差なく、馬力でC3のほうが15ps高く、トルクで15Nm少ないという差なのだが、タイヤは185/60-15をスタンダードとしている。ディメンションはほぼ同等で、車重でC3が90kg重くなっているという違いがある。

 

C3は乗るほどに個性が際立つデザインの魅力だけではなく、ドイツ車とは明確に異なる世界を持つユニークな、愛らしいキャラクターを持っていることが実感でき、個性的であるがゆえにファッショナブルに感じてしまう1台だった。

 

●全長3995mm×全幅1730mm×1530mm WB2465mm ●価格C3 209万円 エクスクルーシブ239万円 ●10・15モード燃費12.3km/L ●最大出力88kw(120ps)/6000rpm 最大トルク160Nm/4250rpm

COTY
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