2014年8月に国内発表したBMW X4はミドルサイズのSUVとして登場した。納車は同年10月を予定しているということだが、ひと足先に試乗することができたのでレポートしよう。
BMWが放つXシリーズはSAVと呼称され、スポーツアクティビティヴィークルを意味している。一般的にはSUVにカテゴライズされるが、性格としてはユーティリティよりはスポーティを推しているわけだ。
SAVのBMW X4はなんといってもその個性的なエクステリアデザインが魅力だ。特に真横から見たときのスタイルはクーペのルーフラインを持ち、確かに他のSUVよりアクティブに映る。BMWのXシリーズX1とX3と比較してみても、そのデザイン性の違いは一目瞭然だ。
この個性的なデザインはX6にそのルーツを持ちつつ、X4のボディサイズはX3と似たようなサイズになっている。全長は4680mmでX3より+15mm長いが、全幅は1880mmで同じ。ホイールベースも2810mmで同じだ。全高は1625mmでX3より-50mmと、ここは大きく異なっている。クーペルックのラインを持っているX4の特徴的な部分でもある。
さて、ポジショニングだが、ライバルとなるモデルは何か?やはりこれだけ個性的なデザインであれば、X4が欲しいというユーザーがすなわちターゲットカスタマーであり、ライバル不在といえるのではないだろうか。アウディやメルセデス、レクサスが存在するものの、果たして比較してみるのだろうか。
この個性的なデザインは走行性においてもターゲットがしっかりしていて、オンロードにおけるズバ抜けた運動性能、優れた安定性を強調している。しかもインテリジェント4輪駆動システムxDriveを装備し、コーナリング性能、操縦安定性をアピールし、スポーツドライブの楽しさを訴求する。もちろんアウトバーン育ちだけに高速での安心感、安定性、そして長距離、長時間運転でも疲れないことは織り込み済みである。
新型BMW X4のグレードは xDrive28iとxDrive35iの2モデルで、それぞれにスタンダードとM Sportが設定されている。xDrive28iには直列4気筒2.0Lターボエンジンが搭載され245ps/350Nmの出力を持つ。JC08モードは13.7km/Lというスペックだ。搭載するN20B20A型は現行F30型の3シリーズから搭載されリーンバーン(希薄燃焼)をする最新のユニットである。
xDrive35iは直列6気筒3.0ターボが搭載され、こちらは306ps/400NmというスペックでJC08モード燃費は12.1km/Lとなっている。この3.0LターボはN55B30A型でバルブトロニック、ダブルバノスにスプレーガイドインジェクターを使用する直噴のツインスクロールターボを搭載するエンジンでBMW6気筒の最新ユニットとなっている。ともに8速ATが装備され、途切れのないスムーズで素早い変速ができるスポーツATだ。
■インプレッション
試乗できたモデルはxDrive35iのほうで、6気筒3.0LターボモデルのM Sportだ。フロントバンパーの左右に大きく口を開けたダクトが印象的で、厚みがあり迫力のあるフロントフェイスになっている。また、ヘッドランプがキドニーグリルに繋がる最新デザインの流れとなっている。
ドライバーズシートはBMWに共通のドライバーオリエンテッドなレイアウトで、コックピット感がある。SAVではあるがシート高がそれほど高く感じなく、乗用車ライクな印象だ。フロントウインドウからの眺めはスッキリしていて、ワイパーブレードなど視界を邪魔するものなど一切ない。他のBMWと同様プレミアムモデルらしい装備を備えている。
後席は天井高が低い。当然クーペのルーフラインを持つからだ。だが決して低すぎることもない。180cmの筆者でも特に圧迫感があるという印象はない。ドイツ人はもっとデカいし…。座面は後傾角がしっかりあるため、後席では背もたれにゆったりと身をゆだねることができ、落ち着きのあるポジションが取れる。膝前の広さも充分にあり、小柄なひとであれば足が組める広さもある。
試乗車はオプションの20インチでフロント245/40-20、リヤ275/35-20を装着していた。標準はすべてのモデルでフロント245/45-19、リヤ275/40-19を装着している。乗り心地では、20インチという大径化のネガな部分は全く感じられなかった。高速道路の継ぎ目などは経験しなかったが、固い突き上げがあるとも思えないような印象だ。
ハンドリングは言うまでもなくBMWらしい、正確で期待どおりにクルマが動く。xDriveはインテリジェントの名前がつくように、ステアリングの切れ角やホイールの回転速度などの車両データから、オーバーステア、アンダーステアなどの兆候を察知すると電子制御の多板クラッチを装備したトランスファーが、瞬時に前後のトルク配分を変え車両を安定させる。また、4輪コーナーリングブレーキ機能により、イン側タイヤにブレーキを掛けるなどして安定したコーナリング、ロードホールディングをするシステムも搭載している。そのためドライバーは安心してコーナリングができ、常に安定した走行を体験することになる。
このBMWらしいハンドリングはモデルを問わず、すべてのBMWで同じようなハンドリングが味わえ、それがまたプレミアムモデルにふさわしいプロダクトアイデンティティだと思う。したがって、新しいBMW X4もBMWらしい走りが味わえ、BMWらしいインテリア装備を持ち、誰が見てもBMWだと分かるエクステリアデザインを持っている、というのが新型車BMW X4ということになる。
実はこの、どのモデルも統一した印象が持てるクルマ造りというのは意外に難しく、いわゆるドイツプレミアムモデルが得意とする分野でもある。そこを狙ってもエントリークラスとトップクラスでは別物になってしまう、というメーカーが多いのが実情。逆にBMWに要求するとしたら、この「BMWらしさ」を持ちつつも、モデルごとの特徴づけというものが、もう少しあってもいいのではないかと思う。もちろんやり過ぎれば、統一した印象は崩れてしまい、ブランドイメージを壊すことになってしまうが。
■BMW X4価格表