【BMW】“顔”も新たに新時代を創り出すか ノイエクラッセ第1弾「iX3」を世界初公開

BMW本社は2025年9月8日、ミュンヘンで開催されている「IAA 2025」で、かねてから開発を進めてきた次世代のラインアップを意味するノイエクラッセ(新カテゴリー)の第1弾「iX3」を世界初公開した。

モデル概要
「iX3」は次世代EVのスポーツ・アクティビティ・ビークル(SAV)で、第6世代BMW eDriveテクノロジーや800kmの航続距離、高出力400kWに対応できる急速充電システム、新境地を拓く個性に満ちたザイン言語、そしてBMWパノラミックiDrive、さらに総合的なサステナビリティを備え、ブランドを象徴するドライビング・プレジャーも兼ね備えており、BMWが新たな時代へと突入したことを象徴している。

なお、ノイエクラッセとは直訳では「新しいクラス」となる。それは、かつて1961年に登場した「BMW1500」セダンのデビュー時に使用されたキャッチフレーズだ。第2次世界大戦後、経営危機に陥ったBMWの救世主となったのが、当時の先進技術を投入した「1500(1961年)」や「1800(1963年)」、「1600(1964年)」、「2000(1966年)」のノイエクラッセ・シリーズであった。

これらの販売の成功により企業として復活し、プレミアムカーメーカーの基礎を築いた。したがってノイエクラッセとは従来の常識を覆す新たなカテゴリーの画期的なクルマという意味を持っている。

「iX3」は先進的なエレクトロニクスとソフトウェア・アーキテクチャーを搭載してる。ドライビングダイナミクス、自動運転システム、インフォテインメント、基本性能やコンフォート性の向上などを網羅する4個の高性能ゾーン型コンピューター「スーパーブレイン」により、未来的なデジタル化、SDV化が実現されているのが大きな特長だ。

また、ドライブトレイン、ドライビングダイナミクスの制御システム「Heart of Joy(ハート・オブ・ジョイ)」により、かつてないダイナミズム、走行安定性、高効率を実現している。

ボディサイズは、全長4782mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2897mmで、従来からの3シリーズのサイズにまとめられている。またラゲージ容量は520L/最大1750Lで、ボンネット下には容量58Lの追加収納スペースを用意。ルーフ・ラックも取り付け可能だ。

BMW AG取締役会会長のオリバー・ツィプセは、「ノイエクラッセは、未来を見据えた当社史上最も大規模なプロジェクトであり、テクノロジー、ドライビング・エクスペリエンス、デザインにおける大きな飛躍として位置付けられます。すべてが刷新されているにもかかわらず、ノイエクラッセは今までで一番BMWらしいクルマです。搭載されるドライブ・システムにかかわらず、当社の製品範囲全体が、ノイエクラッセがもたらす革新の恩恵を受けます。大胆な構想として始まったものが、今では現実となりました。iX3は、ノイエクラッセとして量産される初めてのモデルとなります。我々は、BMW史上最も成功した電気自動車の1つを次世代モデルの形で路上へと送り出すだけではなく、BMWの新たな時代を切り開くのです」と、コメントしている。

第6世代BMW eDriveテクノロジーとSDV
第6世代のBMW eDriveテクノロジーにより、出力、効率、航続可能距離、充電能力が大幅に向上。また、エレクトロニクスおよびソフトウェアに関する新たなアーキテクチャーの下で、従来の20倍もの処理能力を発揮する4個の高性能コンピューターを採用したソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)となっている。

SDVの象徴となるのが、ドライブトレインとドライビング・ダイナミクスの制御システム「Heart of Joy」で、BMWダイナミックパフォーマンス・コントロール・ソフトウェアにより実現している。

BMWオペレーティング・システムXをベースとする、BMWパノラミックiDriveと自動運転を実現する最新システムが搭載され、ユーザーによるカスタマイズ性も実現されており、ドライバーと車両が従来よりも集中的かつ直感的に協働できるようになっている。これに加え、新型「iX3」は、素材からリサイクル可能性の検討、製造プロセスに至るまで、原材料の責任ある利用と再循環という点でも大きな進化を遂げている。

エクステリア・デザイン
「iX3」には新たなデザイン言語が採用され、これは今後BMWブランドの全モデルに応用される予定だ。この新たなデザインの採用により、BMWは従来の伝統的なスタイルからモダンなスタイルへと刷新される。

ブランドの新たな顔を備えたアップライトなフロントエンドが採用され、垂直に配置されたLEDヘッドライトを装備。フロント中央の縦型デザインのキドニーグリルは、1960年代のノイエクラッセを参考にしているという。

クロームの代わりに照明が採用され、昼にも夜にも光り輝く個性豊かなアクセントとなる。ヘッドライト、横型デザインのライト・サーフェス、キドニーグリル、ダイナミックなライト・エフェクトにより、夜間でも一目でBMWと分かるようになっている。

ボディ面は一体感のある張りのあるサーフェスと数本の緻密なラインにより、端正なシルエットを生み出している。コンパクトで引き締まったグリーンハウスは、車両のエアロダイナミクス(Cd:0.24)を向上させ、ホイールアーチの視覚的なインパクトを増大させている。

そしてフラットなドアハンドルとガラス・サーフェスを採用。リヤ・エンドも力強くスポーティだ。リヤの中心まで延びるテールライトは、BMWらしいL型ライトに水平方向の新解釈を加えている。

インテリア・デザイン
水平基調で構成されたコックピットは、乗員を包み込むかのような効果を生み出している。インテリアのハイライトとなる新機能は、新たなコントロール/オペレーション・システムとなるBMWパノラミックiDriveである。

このシステムは、斬新なドライバー重視の操作系とカスタマイズ性を実現。つまり適切なタイミングに適切な場所で、適切な情報をドライバーに提供できるようになっている。ディスプレイ、ライト&サウンド・デザインが融合して乗員を包み込む。インスツルメントパネルはフローティング・デザインを新採用し、ドライバーのポジションはSAVらしくアップライトで、乗員を包み込むような形状の調和がとれた表面仕上げだ。

また、モード選択により照明やサウンド、ディスプレイの内容を自由に組み合わせて調和させ、好みに応じた室内演出が可能になる。またインテリアは豊富なカラー・ラインナップが揃い、エクステリア・カラーとのコンビネーションが可能になっている。

さらにHypersonXと呼ぶサウンド総合制御により、新たなドライビング・サウンドやサウンド・エフェクト、サウンド・シグナルが実現している。

そして、新たに搭載されたBMWパノラミックiDriveは、新開発されたBMWオペレーティング・システムXにより実現しており、デジタル機能と物理的エレメントをバランス良く融合させることで、「手はハンドルに、視線は道路に」の原則をベースにドライバーはストレスのない直感的な操作を可能にしている。

操作系は、スイッチやボタンなどのアナログ制御と、タッチ操作やボイス・コマンドなどを最適な形で組み合わせられている。例えばワイパーやウインカー、ドアミラー、音量コントロール、ギヤ・セレクター、ウインドーデフロスターには触覚反応スイッチを採用。その他の機能も、タッチ操作やボイス・コマンド、またはマルチファンクション・ステアリング・ホイールでの操作ができる。

BMWパノラミック・ビジョンも採用され、左右Aピラー間のフロントウインドウ下部の、ナノ・コーティングが施された黒色のサーフェス(幅110cm)に運転情報が投影される。重要度の高い情報は、ドライバーの視線の先にある、BMWパノラミック・ビジョンのエリアに表示され、ドライバーはセンターディスプレイを操作して、BMWパノラミック・ビジョンの表示内容をカスタマイズすることが可能だ。またオプションで3Dヘッドアップ・ディスプレイも選択できる。

デジタル・サービスと高度なカスタマイズができるBMWオペレーティング・システムX
BMWパノラミックiDriveを支えているのが新開発されたBMWオペレーティング・システムXである。このシステムは、多彩なカスタマイズ範囲、インテリジェントなドライバー支援、多種多様なデジタル機能、My BMWアプリ経由の広範なコネクティビティ、そして無線通信ソフトウェア・アップデートを可能にしている。

BMW IDをBMWデジタル・キーもしくは物理キーと紐付ければ、BMWパノラミック・ビジョンの設定、QuickSelectウィジェットの選択内容や配置、ルーティン、お気に入りのメディア、シート設定と乗降時設定などの多くの車両設定が、自動で有効化される。

また、BMW Mapsのナビゲーション・システムが標準装備され、最適な充電を提案するインテリジェントなルート案内などが実現している。

エンターテイメントは、広範なオプションを選択できる、Spotifyなどの音楽配信アプリ、AirConsoleでの手軽なゲーム・プレイ、ディズニー+やYouTubeを始めとした国際的/地域的なオンデマンド/ライブ動画配信プラットフォームなど、多彩なエンターテインメントを楽しむことが可能。停車中には、Zoomアプリでのビデオ通話も可能であり、ビデオ入力端子を接続しなくとも、ドライブの間、シームレスに会話を続けることができる。

パワートレイン
新開発された第6世代BMW eDriveテクノロジーは、極めて高効率の電気モーター、円筒型バッテリー・セルを搭載した新たな容量108kWhの高電圧バッテリーと800Vテクノロジーが採用されている。「iX3 50 xDrive」の駆動モーターは、フロント・アクスルとリヤ・アクスルに1基ずつ配置され、トータルで345kW/470psの出力と645Nmのトルクを発生。0-100km/hの加速は4.9秒、最高速度は210km/hとされている。この車両はWLTPモードで最長800kmの走行が可能である。

なおモーターは、リヤ・アクスルには大幅にアップデートした電気励磁交流同期モーター(EESM)、フロント・アクスルには新型の非同期誘導モーター(ASM)を採用。またインバーターは800V対応のSiCパワー半導体を採用している。

電気駆動システム全体では、従来のEVに比べてエネルギー・ロスを40%、重量を10%、製造コストを20%カットしているという。

充電は、最大400kWの急速充電が可能で、800V直流(DC)急速充電ステーションでは10分間で350km以上も走行できるエネルギーを受電できる。また、双方向充電機能も搭載され、V2L、V2H、そしてV2Gの電力供給源としても機能する。

Heart of Joy:新たな「駆けぬける歓び」
4個のメイン・コンピューターの1個である「Heart of Joy」は超高速演算により、ドライブトレインとドライビング・ダイナミクス・マネジメントの役割を担い、パワートレイン、ブレーキ、エネルギー回生、ステアリング機能を最適制御する。

BMWダイナミック・パフォーマンス・コントロールのソフトウェアと連携することで、ハンドリングの正確性、俊敏性を発揮しながら、同時にドライビング・ダイナミクスに関わるあらゆるパラメーターが計算されサポートし、バックグラウンドで制御を行なう。

また高性能コンピューターにより、自動運転および自動駐車機能がすべて統合制御される。「自動運転のスーパーブレイン」はその優れた処理能力を発揮。AIを活用し、人間と車両の協調的なインタラクションを最適化しているのが特長だ。

システムはドライバーの意思を正確に検出して実行できるようになっている。例えば、アクティブクルーズコントロール・システムは、ブレーキ・ペダルを軽く踏んだだけでは解除されず、ドライバーが強くブレーキをかけた時にだけ解除される。より進化したBMWハイウェイ・アシスタントは、高速道路に入った瞬間から出る瞬間までドライバーをサポートし、ステアリングホイールから長時間手を放すことが可能となっている。

コーナーやラウンナバウト走行時にドライバーを十分にサポートし、信号機も検出でき、自動で停車と発車を行なうことが可能である。

この革新的な「iX3」の生産は、ハンガリーにあるBMWグループのデブレツェン工場にて開始される予定だ。新設された組み立てラインで製造された後、2025年暮れ以降にデリバリーが開始される。

その皮切りとなるのは、出力345kW/470ps、航続可能距離800km(WLTPモード:暫定値)、電動4輪駆動が特徴の「iX3 50 xDrive」だ。これに続く形で、エントリーモデルを始めとした他のEVモデルが製造される。また、「iX3」の主要な市場はヨーロッパとアメリカであり、中国におけるニーズを取り入れた「iX3」中国仕様バリエーションも、早ければ2026年に瀋陽工場で生産開始となる見込みとなっている。

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