
BMW X3が2024年11月にフルモデルチェンジをしている。北米を中心に人気を集め、BMWの屋台骨のひとつになる重要なモデルだ。したがって生産はアメリカ・カリフォルニア工場、南アフリカ工場で生産され、中国にはロングホイールベース化したX3が瀋陽の工場で生産されている。
モデルラインアップはEVも予定されているが、2025年8月の段階ではまだ登場していない。現在は2.0L 4気筒のガソリン&ディーゼルと3.0L 6気筒ガソリンの3モデルになっている。こちらの3モデルは従来のCLARプラットフォームを継続し、全長4755mm、全幅1920mm、全高1660mm、ホイールベース2865mmと、先代モデルよりやや拡大されている。また北米や中国をメイン市場とすると全幅が広くなる傾向であり、Dセグメントサイズでもアメリカのミッドサイズに迫る大きさになっている。





今回、このうちの2モデルに試乗してきた。1台はX3 20d xDrive M Sportで、2.0Lの4気筒ディーゼル・ツインパワーターボに48VのMHEV。最高出力145kW/400Nmで定番の8速ATを組み合わせている。M Sportグレードはスポーツサスペンションが組み合わされ、引き締まった乗り味になっている。


もはやディーゼルなのかガソリンなのか、という評価は何度も書いているが、ニューモデルになる度ににパワーユニットの違いがわからなくなってくる。アクセルを踏み込んだ瞬間のレスポンスもよく、そしてディーゼル特有のエンジン音が聞こえてこない。滑らかに加速し、静かに高速走行へと移行していく。
フロントのレザーシートのショルダー部にはアルカンターラが使われ、M Sportカラーの赤、青、白のステッチがシートバックに効果的に入れてある。


コックピットは横長のカーブドディスプレイがあり、メーターパネルとコントロール・ディスプレイを一体化させたモニターになっている。シフトレバーは廃止され、トグルタイプのレバーに切り替わり、センターコンソールはすっきりしている。またロータリー式のコントローラーは健在で、クリスタル調のデザインとピアノブラックのパネルで高級感を出している。またコントローラーの先にはスマホの置くだけ充電のQiがあり、CタイプのUSBも2個差し込み口が用意されている。


ステアリングはボトムをフラットにしたスポーツハンドルで握りはかなり太い。太さからくるスポーティな印象は今も変わらず好印象だ。また左側のパドルシフトには「Boost」があり、10秒間だけフルトルクの加速を楽しむことができる。ひとつの遊び心だ。


ドアパネルと一体化された空調口は新しいデザインが取り入れられていた。「X3」の文字とドットが4つ。これはタッチ式の空調口のサイズを決めるもので、ドットの上を指でスライドすると吹き出し量が調整できる。
試乗車にはオプションの「パノラマ・ガラス・サンフーフ」が装備されていたが、ガラス面積が大きく、前席ではあまり感じることはないが、後席だとオープンカー的な開放感を得ることができるサイズだ。





そしてもう一台はX3 M50 xDriveで、これは直列6気筒ガソリンエンジンを搭載しているモデルだ。Mパフォーマンスモデルであり、3.0Lツインパワーターボに48VのMHEVが搭載されている。出力は280kW/540Nmという大トルク。なんと言っても滑らかな直列6気筒エンジンが魅力だ。かつてシルキーシックスと言われていたように、シルクのように滑らかに回る直列6気筒エンジンが復活している。
エンジンレスポンスはEVと同等レベルに感じるほど俊敏だ。48VのMHEVがいい仕事をしているのだろう、瞬時の加速は本当にEVのように反応しダッシュするのだ。ある意味、アクセルからの信号にワンテンポ遅れて反応するのがICEのネガかもしれないが、かつてはそういうものだった。それがEVの登場で、もっと素早くレスポンスすることを知ってしまうと、そのワンテンポの反応は「遅れ」として感じるようになってくる。しかし、このX3 M50はモーターの反応をうまく利用し、EVレベルのレスポンスとBMWならではの、滑らかさを武器にしているのだ。




インテリアはよりM モデルらしく、ステアリングは赤レザーでセンターを示し、レザーステッチも赤、青を使って視覚効果も高くなっている。
エクステリアは基本見分けにくい違いがある程度で、バッジの違い、そして左右4本だしのマフラーがMパフォーマンスモデルであることを発見する。もっとも足元は全く異なり、タイヤサイズも20dは245/50-19で、M50は255/45-20とワンサイズ大きい。またブレーキキャリパーもM50は赤く塗られMのロゴも付いているので、スポーツモデルであることはすぐにわかる。




さて、エクステリアデザインでは、キドニーグリルの中に斜めのデザインが入るように変わり、その大型キドニー・グリルの周囲はアンビエントライトが点灯し、夜間での存在感が増している。M50のMパフォーマンスモデルは変更なく、従来のデザインのままになっている。
インテリアではアンビエントライトが効果的に高級感を演出するように変わっている。もともと上級車では取り入れられていたが、ヒエラルキーの裾野まで広がってきた印象だ。これは夜間に限らず日中も点灯しており、BMWの素っ気ないインテリアが変化をし始めている。北米や中国を中心に商品進化をさせると、ダイナミック性能にプラスして付加価値にも注力が必要になってくる。こうした変化は、欧州でも日本でも非常に喜ばしいことであり、BMWが色気に力を入れていることは歓迎できる。


X3 20 xDrive xLine 808万円
X3 20 xDrive M Sport 848万円
X3 20d xDrive M Sport 874万円
X3 M50 xDrive 1008万円