BMW X3 xDrive30e 役割を明確に粋に乗りたいBMWのPHEV試乗記(2.0L+8速AT+モーター 4WD)

BMWのミッドサイズSAV(スポーツ アクティビティ ヴィークル)X3のプラグインハイブリッドモデルが2020年4月に国内導入された。国産のPHEVとBMWのPHEVでは、「プラグインハイブリッド」に対する考え方の違いがあり、合理的なBMWと欲張りな国産という違いがある。

BMW X3 xDrive30e プラグインハイブリッドがモデル追加された

X3は北米、中国をメインマーケットとしたミッドサイズSAVで、ボディサイズは全長4720mm、全幅1890mm、全高1675mm、ホイールベース2865mmで、国内で乗るには少し大きい。ハイブリッド燃費消費率はWLTC11.8km/L、EV走行航続距離WLTC44kmというスペックになっている。

ミッドサイズSAV。北米、中国市場がメインマーケットで滑らかで静かに、そしてパワフルに走る

PHEVへの考え方の違い

さて、通常のハイブリッド(HEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の違いは、外部充電が可能かどうかという違いで、それに伴い、搭載するバッテリーの大きさも変わってくる。当然、大きいバッテリーを搭載すれば、EV走行距離が長くなりガソリン消費量は減る。反面、重量増とコスト増というネガがあるわけだ。

そして外部充電には200Vの普通充電と急速充電の2パターンがあり、アウトランダーやプリウスのPHEVにはいずれも急速充電機能が搭載されている。一方BMW X3のPHEVには急速充電機能はなく、普通充電だけだ。もっとも最新のトヨタRAV4PHVには急速充電は装備されていない。

充電は普通充電のみ。それでも3.5時間で80%充電できる

急速充電設備は国内では一般家庭には設置できないルールで、ディーラーや店舗、高速道路のSAなどに設置されているものを利用する。また普通充電はどの家庭でも設置可能だ。通常は100Vが家庭に送られている電圧なので、若干の工事は必要となるものの、どの家庭にも設置は可能。またドイツでは一般家庭での電圧は200Vが利用されている。

さて、どの程度の容量のバッテリーを搭載するか?だが、X3には34Ahという容量で44kmEV走行が可能な電池容量を搭載している。またEVでの最高速度は140km/hまで対応で、そう考えるとリージョナルで利用した場合、例えば通勤や買い物、送り迎えといった日常であれば、EV走行だけで賄うことができ、ガソリンを1滴も使わずに済むことがわかる。

長距離へ出掛けた時はエンジンで走行し、さらにそのエンジンでも充電はするので、蓄電状況次第で出先でもEV走行を交えながら、ハイブリッド走行が可能になるわけだ。だからBMWのPHEVの使い方想定としては、通勤はEVで、長距離ではエンジン併用という使い方になり急速充電機能は不要という判断をしている。さらに充電口や専用ケーブルも不要になるわけで、実に合理的な考え方をしたものづくりであることを感じる。高速SAでBEVオーナー達の視線を感じながら、急速充電器を利用する必要もないというわけだ。

2017年に国内導入されているX3だが、大きなキドニーグリルは新鮮さがある

静かでパワフルで

BMW X3 xDrive30eの乗り出しは満充電状態。駐車場からの滑り出しはまさに滑り出したように滑らかにモーターで動き出す。地下の駐車場にエンジン音が響くこともなく静かに。高速ランプETCの料金所を通過し加速させると、静かに、そしていきなりドカンと蹴飛ばされたような加速をする。エンジン音がないだけに身構えることが遅れ、唐突な加速力に全身が飲み込まれるのだ。

そして100km/hの制限速度まであっという間に到達。なおかつエンジンは稼働していない。わずかに聞こえるロードノイズだけがスピード感を作っている。もはや44kmのEV走行可能距離まではBEV車として走行していくのだ。

目的地の箱根を目指し、高速道路を走行しているとやがてバッテリーを使い切り、エンジン駆動が始まる。だが、エンジン走行へと切り替わったのかどうか、明確にはわからないのだ。同乗者と話をしていたら間違いなく気づかない。アクセルペダルの反応や耳を澄ませ、EVからICEへの切り替えを意識しなければ気づけないほどの滑らかさと静かさをキープしている。

搭載するエンジンは2.0Lガソリン4気筒で184ps(135kW)/5000rpm、最大トルク300Nm/1350-4000rpmとモーターは109ps(80kW)/265Nmの最大出力、最大トルクを発揮し、システム合計最高出力292psを発揮している。34Ahのリチウムイオンバッテリーは、約3.5時間の普通充電で80%充電でき、100%は4.3時間で可能となっている。

「MAX eDrive」「AUTO eDrive」「Battery Control」の3つのモードがセンターコンソールにある。マックス イー ドライブはいわゆるEV走行モードでモーター走行優先モードだ。オート イー ドライブは最適なハイブリッド走行モードで、バッテリー コントロールモードは、充電状況をなるべく高い次元に維持するモードでエンジン走行が中心で充電もするモードで、さまざまな使い分けも可能になっている。

ラゲッジ下にリチウムイオンバッテリーを搭載しているため、若干荷室床面が高い

次世代車への入り口

もちろん、安全機能や運転支援システム、コネクテッドドライブなどの装備も充実し、それらの詳細内容は既報の記事をご覧いただきたい。

関連記事:BMW X3 にプラグイン・ハイブリッド・モデルを発売 

こうしてX3のPHEVの試乗をしてみると、さらに面白いことに次世代モデルへの入り口であることも感じ取れた。それは、パワートレーンへのこだわりをどうするか?という課題に対し、エンジンへのこだわりが強い一部のユーザーには、エモーショナルな工夫が施され、エンスージアストに響くモデルを継続提供していくと思う。だが、一般的なクルマ好きユーザーへの提供価値はエンジン(ICE)を使わないでも何ら魅力をスポイルすることがないモデルを提供していくということだ。

2.0Lの4気筒エンジンとモーターが組み合わされている。ミッションは8速AT

BMWのキャッチフレーズは「駆けぬける喜び」。これを具現化するために必要なパワー、トルク、そしてハンドリングなどがBMWらしさであり、これまでどおり継続提供されていく。そのためのツールのひとつだったICEは、モーターへと変わったとしてもBMWの提供価値には違いがないということだ。

BMW X3というモデルに求める価値は、パワーやトルク、ハンドリングもそうだが、いかに滑らかに静かに走り、X3らしいハンドリングと乗り心地、ダイナイミック性能を満喫できるかが大事であり、エンジン走行なのか、モーター走行なのか、そこが大事なのではないと分かった。

さらにプレミアムモデルとして高級なインテリア、エモーショナルなエクステリアなど所有欲を刺激する要素があることも伝わってくる。そして「お!今はエンジンで走行している」と話すことの粋の無さも感じていたのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

主な車両諸元

BMWX3xDrive30e
全長: 4,720mm、全幅 1,890mm、全高 1,675mm、ホイールベース 2,865mm
車両重量:2,060kg、車両総重量 2,335kg
排気量:1,998cc、直列 4 気筒ガソリン・ エンジン
最高出力:184PS(135kW)/5,000rpm
最大トルク:300Nm/1,350rpm-4,000rpm
ハイブリッド燃料消費率WLTC 11.8km/L
充電電力使用時走行距離WLTC 44.0km

価格

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