BMWi3は長距離ドライブだって楽チンにこなす

マニアック評価vol367

BMWi3にはEVモデルと充電用エンジンを搭載したレンジエクステンダーモデル(航続距離延長)の2種類があって、国内でのメインはエンジン搭載モデルのほうが圧倒的に多いという。航続距離に不安のないレンジエクステンダーEVは、どこまで走行できるのだろうか?

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この観音扉は、スーパーの駐車所で横に止められると、後席から降りれなくなることも

 エンジンがあれば電欠の心配はない。本当に電欠しないのか? i3に搭載するエンジンは、走行ができないエンジン。バッテリーを充電するためだけのエンジンで、駆動用のシステムを持っていない。バッテリー残量が減ってくると、エンジンが自動で稼働して充電を始める。だから電欠はしないという理屈。

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EVで23km、ガソリンで44km走行可能で合計67km走れる。バッテリー残量のブロックの上に小さく▽があるのが「充電保持状態」を示す

 賢いのは、充電するより消費する電力のほうが勝る、ということにならないように、ちゃんと計算されていること。バッテリー残量を常に監視しながら、走行しているのだ。だから、電欠はしないという理屈を信じて、長距離ドライブに挑戦してみた。

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目的地は長野県・白馬村。東京を出発して350kmほどの距離がある。ルートは高速を中心に東名厚木~圏央道八王子~中央道岡谷~長野道豊科というルートを往路で使った。80%は高速道路を使うルートになるが、EVの走行可能距離は180kmと表示。とうてい届かない距離だが、途中エンジンがかかり充電しながら走るので、心配無用というわけ。でも、充電用エンジンのガソリンがなくなると、いよいよ電欠の危機となる。当たり前か。

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ここで、裏技と言うほどでもないが、バッテリー残量がある程度のところまで来たらエンジンを使って充電する、というモードを使った。これが「充電状態保持」という機能。これにチェックを入れると、一定の残量をキープする。何のことか? というと、バッテリー残量が残り何%になったら充電する、という任意でチョイスできる機能のこと。

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 この設定機能を使って往路は「残りEV電力量50%になったらエンジンを稼動し充電する」という乗り方で都内を出発し、横浜を経由して先ほどのルートで走った。すると、中央高速の双葉SAまでノンストップで走ることができたのだ。スタート直後は充電された電力を使ってEV走行をする。でも次第にバッテリー残量は減ってきて、バッテリーの残量が50%程度になると、その残量をキープしようとして、エンジンがかかる。

 すると、高速道路を走りながらも充電量を減らすことなく走行を続けるのだ。エンジンはけなげに、そして必死になって発電しバッテリーを蓄える。右足を踏み込むたびに、その電力は失われるのだが高速道とはいえアップダウンがあり、少し下り坂になると、回生ブレーキによりエネルギー回生され、そのエネルギーで充電をする。それを繰り返しているうちに双葉SAに到着したというわけだ。

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9.0Lのガソリンタンク容量
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こちらは充電口

 BMWi3のガソリン残量は1/4を切るカスカスの状態。タンク容量は9.0Lで、給油したら7.0Lだった。でもバッテリー残量は50%が保持されているから、さらに先まで行けるのは間違いない。が、バッテリー残量をゼロにし、ガソリンもゼロになったら、アウト。JAFのお世話になるので、そこまではギャンブルできない。

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ボンネットには充電用のケーブルが収まる。エンジンはリヤに搭載

 ガソリンを満タン補充し、再び白馬を目指す。すると、すると、もはやガソリンの補充なしに白馬に到着できたのだ。結果、1回の給油で白馬まで行ける、ということになる。これだと「少し前のガソリン車と同じじゃん!」という航続距離だ。ちなみに、この日は344km走って7.0Lの燃料消費ということになる。もともと100%充電してあったから、計算上49.14km/Lという燃費になる。

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低転がりの省燃費タイヤオロジック。幅細の大径でこれまでの概念を変えた

 白馬では急速充電が可能なので、バッテリーを充電するが、急速充電はバッテリーを痛めやすいので、80%程度にまでしか充電できないという保険がある。そして翌日、白馬から再び東京を目指すドライブをしたが、往路も含めた合計820km走って使ったガソリンは合計28.0Lだった。燃費は29.28km/Lという計算。充電は白馬で一度やったが、あとはすべて自前エンジンによる充電だ。

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パワーユニットのスイッチは右ウインカーの位置に。前進と後退それとニュートラルだけ

 そう考えると、外部充電できなくてもガソリンさえ給油できれば、当たり前だが長距離移動も可能ということがわかり、その燃費もプリウスを超える?省燃費ということもわかった。SAなどに設置された外部充電設備で充電できればもっと省燃費なのは言うまでもない。

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そうなると、つぎなる欲求も高まってくる。それは、「任意でエンジンを稼動できないのだろうか?」という日本人的な疑問。つまり、保険のかけ方をクルマ任せではなく自分でやりたいという心配性な日本人の気質みたいな欲求だ。

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全長4010mm×全幅1775mm×全高1550mm、ホイールベース2570mmで4人乗り

 国産のアウトランダーPHEVにはその機能がついていて、いつでもバッテリーを良好な状態にするようにできる。でもドイツ人気質だと、「なんで任意に稼動させる必要があるの?」ということなんだろう。i3はEV車だし電欠しないように造っているのだから、当然といえば当然の設定だ。アウトランダーの場合はエンジンでも走行するので、「深夜の住宅街をEVで走りたい」などいったケースを想定しているからで、i3はいつもEV走行だから、その必要もないということになる。そして、今回の長距離ドライブによって、i3をリージョナルヴィークルと決めつけているのは誤りだということにも気付いたのだった。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi

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