BMWからプレミアムミドルクラスにまた、新たなモデルが加わった。
「また」というのはもう区別ができないほどのラインアップが揃い、どれがどれだか?というほど充実のラインアップ。今回試乗したのは2014年6月に販売が開始されたクーペスタイルの4ドア、「グランクーペ」だ。
◆ポジショニング
冒頭ラインアップの充実を言ったが、3シリーズと4シリーズは同じプラットフォームを使用しているため、当初はセダンとツーリング(ワゴン)が3シリーズでクーペボディ(2ドア)が4シリーズだと思い込んでいた。ところが見る見るうちにラインアップが増えた。
3シリーズはセダン、ツーリングの後「グランドツーリスモ」というハッチバックスタイルの5ドアがデビュー。4シリーズはクーペが最初に発売され、その後カブリオレが出て、そして今回、3シリーズ・グランツーリスモと同様5ドアハッチバックのクーペルッキングの「グランクーペ」がデビューした。
トータルでボディタイプは6種類あり、エンジンもガソリン、ディーゼル、ハイブリッドがある。さらに、マニュアルミッションという選択肢まで加わり、ユーザーの好みは必ずこの中にある、というユーザー囲い込みのようだ。
今回の4シリーズ・グランクーペのモデルラインアップには420i、428i、435iがあり、420iには4WDのXDRIVEが設定された。だが、現時点で認証が取得できていない420iシリーズはなく、428iと435iの試乗となった。
428i、435iともにグレードは3種類でスタンダード、ラグジュアリー、Mスポーツの3グレードになる。このグレードは主に装備違いになる。428iには2.0L直噴ターボを搭載し245ps/350Nmで328iと同じスペック。価格は627万円から668万円。435iは3.0Lの直列6気筒ターボを搭載し、出力は306ps/400Nmで766万円から803万円(消費税別)。3シリーズの同グレードより30万円前後高い価格となる。また、3シリーズには335iが導入されていないためハイブリッドと比較し24万円の差となっている。また、ディーゼルは今回未導入となっている。
さて、セダン、クーペ、ツーリング、カブリオレはそれぞれ特徴がはっきりとしており、どちらを購入するか迷うことはないと思うが、5ドアのグランツーリスモ(GT)とグランクーペ(GC)は迷うかもしれない。だが、実際は性格の異なるモデルなので、検討してみる価値はある。両者の違いはこの後、少し説明している。また、なぜここまでラインアップを拡充しているのか?という疑問だが、BMWジャパンの説明によれば、モデルごとの価値観を妥協なく提供することで、ユーザーにジャストフィットするモデルがあるという選択肢の広さでライバルに対抗していくということだ。
◆インプレッション
試乗したのは428iラグジュアリーで2.0Lターボ。ミッションはシリーズ共通の8速AT。インテリアは各モデルに共通のドライバーオリエンテッドなドライバーズエリアはBMWらしい空間。このグランクーペは後席の左右をラウンドさせ後席での居住性を高める工夫がある。またクーペに対してルーフを112mm後端へ伸ばし、ヘッドスペースを確保している。
エクステリアはフロントのキドニーグリルやエアダクトなど微妙に各モデルでデザインが異なるが、もはや区別がつかない。BMWであることは一目瞭然であるものの、3シリーズ、4シリーズの区別は難しい。とはいえ、真横からのルックスはクーペスタイルをベースにしているだけに、セダンよりはなだらかなルーフラインは美しい。
ディメンションでは全長4640mm(4625mm)×全幅1825mm(1800mm)×全高1395mm(1440mm)、ホイールベースは2810mmで、3シリーズよりわずかに大きいもののホイールベースは同じ。しかしトレッドを3シリーズより拡大し、よりスポーティな走りを目指しているのが分かる。4シリーズ・グランクーペのフロントトレッドは1550mm(1520mm)、リヤ1600mm(1560mm)という違いがある。(注・カッコ内は3シリーズセダン)
3シリーズのGT(グランツーリスモ)はホイールベースを3シリーズセダンより110mm長くし(2910mm)、トレッドは20mm拡大、4シリーズGC(グランクーペ)はホイールベースは同じでトレッドを35mm広げている、という違いがあり、GTはアグレッシブさというより名前の通りグランドツーリングを得意とするゆったり系を得意としている。一方のGC(グランクーペ)はよりスポーティさを求めたスペックとしている訳だ。
3シリーズのセダンと比較してみると、スペックで示すようなアジリティやスポーティ度の違いを感じ取ることは難しく、似た印象というのが正直なところ。ただ、クラスとしては1クラス上まではいかない0.5クラス上のモデルだという印象になる。「よくもまぁ、これだけ微妙な違いを造れるものだ」という印象で、それぞれのモデルですべて印象が異なることの驚きがあり、しかもわずかな違いであり、3シリーズ、4シリーズのパッケージからは逸脱しないレベルの差異を造り分けているということに驚く。
これがBMWの言うユーザーのニーズ必ずマッチするモデルがあり、期待に応えられる幅広い、間口の広い充実したラインアップという答えなのだろう。
■BMW4シリーズ・グランクーペ価格