BMWに新たに加わった4シリーズは、これまで3シリーズにあったクーペモデルの名称が「4シリーズ」になり、現行のF30系プラットフォームを使用する。3シリーズはセダン(F30)とツーリング(F31)、4シリーズがクーペ(F32)という構成になる。この新しいBMW4シリーズは、長年ミドルクラスのプレミアムパーソナルクーペという位置づけだった3シリーズクーペに置き換わるもの、というわけだ。
この変更に伴い、ボディサイズなども変更されよりプレミアムな印象が増したモデルとなった。そのボディサイズは先代の3シリーズ(E90系)に対し、全長で30mm延長(Mスポーツは+60mm)、全幅で+45mm、全高で-5mmとワイド&ローが強調されている。ホイールベースは+40mmでトレッドもフロント+45mm、リヤ+70mmと拡大され、ひとまわり大きくなっている。
現行のセダンF30の328iLuxuryと新型の428iLuxuryを比較しても、全長で+15mm、全幅+25mm、全高-25mm、トレッドでフロントが+20mm、リヤ+10mmとワイドになっている。ちなみにホイールベースは同じ2810mmである。試乗した428iLuxuryのサイズは全長4640mm×全幅1825mm×全高1375mmで装着するタイヤサイズはF:225/40-19、R:255/35-19となっている。もう1台の435i M Sportは全長がさらに長く4670mmであるが他は同サイズとなっている。また、車輌重心位置が500mm以下に下げられ、現行のBMWモデルの中でもっとも低い重心位置のモデルである。
スタイルは典型的なクーペスタイルで流れるルーフラインが美しく、ショートオーバーハング、ロングノーズなどにより、エレガントでダイナミックなプロポーションを持つモデルとなっている。
インテリアもBMWらしいドライバーオリエンテッドでありながらエレガントで上質なパーソナルクーペとしての高いレベルに仕上げてある。装備面でも歩行者検知機能付きの衝突回避・被害軽減ブレーキ、ヘッドアップディスプレイを標準装備し、ドライバーアシストを充実させてきている。また、カメラを装備し前車接近警告機能や車線逸脱を警告するレーンデパーチャー・ウォーンニングの機能などドライバー支援システムが標準装備されている。
モデルラインアップは428iと435iの2ラインでそれぞれに標準車、Sport、Luxury、M Sportというグレードがある。
428iに搭載するエンジンはN20B20A型の2.0Lガソリンターボで245ps/350Nmに8速ATというスペックで604万円(消費税込み)から644万円という価格設定。435iには待望の直列6気筒が搭載された。N55B30A型で3.0Lターボ+8速ATで306ps/400Nmというパワーだ。価格は738万円から774万円。
この3.0Lターボの直6エンジンは先代の335iにも搭載していたものと同型で、直噴、バルブトロニック、ダブルバノス、ツインスクロールタービン装着といったBMWの先端技術を満載したエンジンであり、滑らかに回るエンジンフィールと力強いパワーが特長であり、BMWと言えば直列6気筒というユーザーを満足させるスペックを持つユニットだ。
シャシーではF30系のプラットフォームを使用するが、フロントのダブルジョイントストラットにトーションバーが加わり、ボディとフロントアクスルの接続部分のねじれ剛性をアップし、コーナリング時の横方向の力がよりダイレクトに伝わるようになっている。これは、ボディとサブフレームにテンションを掛けることで、よりダイレクトなハンドリングとなるようにしているものだ。
■最上級のドライビングを楽しめる
さて、428iLuxuryと435iMsportに試乗したが、どちらも極太のタイヤ&大径サイズを装着しているにも関わらず、硬い入力のない乗り心地で、プレミアムカーに相応しいものだった。もちろん、ハンドリングには定評のあるBMWだけに、ドライビングマシンとしての潜在能力を発揮し、ドライバーを心地よくさせてくれる。
ドライビングを楽しむ快感はBMWの最も得意とする分野だ。タイヤのひと転がりから始まるステアリングレスポンス、常用域から高速域までドライバーの期待通りにクルマが曲がる。試乗した箱根のワインディングはBMW4シリーズを堪能するには絶好のステージだった。
428iに搭載するパワーユニットは328iに搭載するエンジンと同じものだが、エンジン自体の滑らかさが多少違うようにも感じた。というのは、328iはほんの少しではあるがザラツキのある回転域があるが、それを感じさせない滑らかさがあり、4気筒であることは皆目分からないレベルになっていると思う。もっとも、1万km程度走行をすると、このザラつき感はなくなり、滑らかに変わってくる。メディア向け試乗会に使われる車輌はほぼ1000kmから5000km程度走行のモデルが多く、いわゆる「アタリが出てない」や「ナラシ」などと表現される領域でもあり、長期レポートをしてみないと出てこない部分でもある。
もちろん6気筒の435iはシルキーシックスと言われるように、BMWの6気筒は滑らかに高回転まで回る。その気持ちよさはハンドルを握った人だけが味わうことのできる世界だ。300ps/400Nmをオーバーするパワーは十分にパワフルでありながら、静かに滑らかに走る。ボディ剛性の高さからくる安心感と、ドライバーの意思に忠実に反応するステアリング、シフトアップを感じさせないスムーズな8速ATと、高級車に相応しいモデルを開発したと実感する。
箱根のワインディングを右へ左へとコーナークリアし、ヘヤピンありと、ドライビングが楽しめる。静かな車内はいつも助手席との会話は朗々とでき、クルマとのコミュニケーションも心から信頼が置ける反応を示す。そこにはプレミアムな空間が存在し、ゆったりとしたプライベートな時間が流れる。そんなパーソナルプレミアムクーペの試乗だった。
■BMW 4シリーズ価格表