
BMW2シリーズのグランクーペに試乗してきた。2025年3月にフルモデルチェンジを行ない、MパフォーマンスモデルのM235 x Driveとプレミアムでありながら、実用性も期待される220d M Sportの2モデルをテストしてみた。
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BMWの2シリーズにはさまざまな車型があり分かりにくいが、キャラクターは全く異なっているのもユニークだ。2シリーズにはクーペがあり最もレーシーなM2がラインアップし、カブリオレもある。そしてアクティブツアラーとグランツアラーというMPV的なセミ・トールワゴンも2タイプある。そして4ドアクーペのグランクーペがあるといった具合だ。

そのグランクーペは2019年10月に欧州デビューし、当時は1シリーズセダンの後継モデルという位置付けでF40型をベースにUKLプラットフォームの進化版FAARのプラットフォームでデビューした。そして今回2024年10月に第2世代が欧州で発表され、日本には2025年3月に導入されている。型式はF74型となった。
基本の駆動方式はFWDで、試乗した220dはFF。またM235 xDriveは唯一のAWDでMパフォーマンスモデルだ。M社のハイパフォーマンスモデルに追従するハイスペックなパフォーマンスモデルで、それが2シリーズのグランクーペにも設定されている。
2シリーズの国内ラインアップは、1.5Lの3気筒ガソリンターボ+MHEVの「220 M Sport」と2.0Lの4気筒ディーゼルターボ+MHEVの「220d M Sport」そして2.0Lの4気筒ガソリンターボAWDの「M235 x Drive」となっている。いずれも7速DCTを搭載している。






ボディサイズは全長4550mm、全幅1800mm、全高1435mmでホイールベースは2670mmとなっており、F30系3シリーズに迫る大きさになっている。セグメントはCセグメントになるが、ボディサイズはDセグメントに近いレベルだ。また全幅1800mmは国内の機械式駐車場の多くに対応できるサイズであり、3シリーズからのダウンサイジングにはピッタリ収まるサイズと言える。


M235xDriveの出力は221kW(300ps)/5750rpm、最大トルク400Nm/2000-4500rpmで、左側のパドルを1秒間引くと全てのパワートレインとシャシーシステムが最もスポーティな設定に切り替わり、この「Mスポーツ・ブースト」は10秒間のカウントダウンと共にパワーが発揮される。



これはスポーツモードをセレクトしていると、俊敏に反応するのでおすすめ。どのモードでもブーストは効くのだが、設定の切りかえに多少のタイムラグが生じるので、スポーツモードでのドライブ中だと瞬時にパワーが発揮される。
一定のアクセル開度のままMスポーツ・ブーストを引くだけで、力強い加速に変わる。またブーストと同時にアクセルを踏み込むと瞬く間に風景を溶かし、周囲のクルマを置き去りにする。身体はシートバックに押し付けられ、10秒間は非常に長いと感じる加速を体感するのだ。
そのフルパワーをかけた瞬間だけ、フロントデフに組み込まれたLSDからのトルクステアが感じられるが、それも敢えてのセッティングのようだ。EPSでそうした入力は制御できるはずだが、遊び心を残したのではなないだろうか。
そしてブレーキキャリパーはMのロゴが入った赤いキャリパーが備わり、ブレーキディスクはホイールサイズいっぱいの大径ローターが装備されている。それだけでどれだけのストッピングパワーが出せるのか分からないながらも、安心材料として目に映る。
もちろん220dのディーゼルモデルはそうした迫力はないが、110kW(150ps)/4000rpm、360Nm/1500-2500rpmのスペックは、ディーゼル特有の低回転での大トルクが発揮されるため扱いやすい。1560kgの車両重量で360Nmのトルクは十分力強く、パンチの効いた加速は期待できる。



この220dにもMスポーツ・ブーストが装備されているが、こちらはそれなりの加速を見せてくれるといった印象だ。ただ、このディーゼルエンジンは5000rpmまで許容されるディーゼルの高回転型エンジンになっていることにも驚きがあった。
このいずれもが、ワインディングでのライントレース性が気持ちよく、これほどまでコーナリングを手の内化できる快感はない。特に回頭性、旋回性が高くリヤタイヤの存在が常にインフォーメーションとして伝わり、フロントタイヤのグリップ感、イン側タイヤの接地感がステアリングを通して伝わってくる。
そしてコーナーを追い込みジワリ操作からの踏力増しでローターを挟み込めば、想定どおりの減速Gが立ち上がり、スッとノーズがインを向いていく快感は「たまらん」とゴチる。そこからの旋回ヨーとロールが身体に溶け込むように一体となってコーナーを立ち上がっていく爽快感がある。

インテリアデザインでは、シフトレバーはなく、iDriveのダイヤル操作もなくなった。センターコンソールにはトグルタイプのレバーがシフトセレクターで、その横にあったiDriveがなくなった。これは1シリーズと2シリーズに共通する仕様で、3シリーズより上級モデルにはiDriveは継続している。
iDriveの操作系はタッチパネルとタッチスイッチに振り分けられ、機能的には旧来より多機能になっていることは言うまでもない。ただ、ダイヤル操作があるが故に、BMWのどのモデルに乗っても迷いなく機能が選択できたことで、プレミアムブランドとしての共通アイコンに感じていたが、いざなくなってしまうと、少し寂しい気持ちも湧いてくる。
その分Amazon・アレクサの搭載や、BMWのインテリジェント・パーソナル・アシスタントの進化などで機能自体は拡張し、ユーザビリティは向上しているのは間違いない。
M235 xDriveはそれなりの気持ち良いエンジン音が聞こえてくるが、市街地を走行しているときは十分高い静粛性がある。また220dは何度も言うが、ガソリンエンジンとの区別がつかないほど滑らかで静かに走る。
その一方で、ワインディングを走らせると内燃エンジンとハンドリングの一体感はEVでは味わえない快感が伴う。M235 x Driveが駆けぬける喜びを提供しているのは、だれもがイメージできると思うが、驚くのはディーゼルターボだ。おそらく220dではマイルドハイブリッドのモーターサポートが瞬間のレスポンスをサポートしているのか、もはやディーゼルのネガがどこにあるのか皆目検討がつかない気持ちよさを味わえるのだ。

M235 x Drive












◆試乗車スペック
M235 x Drive Gran Coupe
全長4550mm×全幅1800mm×全高1435mm
ホイールベース2670mm
AWD
最小回転半径5.5m
WLTCモード 12.6km/L
市街地モード 9.0km/L
郊外モード 12.9km/L
高速道路モード 15.0km/L
試乗走行距離 199.8km
平均実燃費 11.6km/L
直列4気筒ターボ
221kW(300ps)/5750rpm
400Nm/2000-4500rpm
7速DCT
235/40R-19(全輪)
グッドイヤーイーグルF1BMW専用☆マーク付き
220d Gran Coupe M Sport












◆試乗車スペック
220d Gran Coupe M Sport
全長4550mm×全幅1800mm×全高1435mm
ホイールベース2670mm
FF
最小回転半径5.5m
WLTCモード 21.1km/L
市街地モード 15.0km/L
郊外モード 21.8km/L
高速道路モード 24.9km/L
試乗走行距離 230.1km
平均実燃費 16.8km/L
直列4気筒ディーゼルターボ+MHEV
110kW(150ps)/4000rpm
360Nm/1500-2500rpm
7速DCT
225/45R-18(全輪)
グッドイヤーイーグルF1BMW専用☆マーク付き