FFのBMWに「BMWらしさ」はあるのか M235ixDrive試乗記(4WD 8速AT)

BMW2シリーズに4ドアのグランクーペが導入されたのは2019年11月。最上級グレードとなるM235i xDriveは2.0Lの横置き4気筒ガソリンエンジン+ターボに8速ATを搭載。そのもっともホットなM235iに試乗してきたのでお伝えしよう。

BMW M235ixDrive Gran Coupe FFレイアウトの4ドアクーペ

FFのBMWは「らしさ」はあるのか

クルマ好き、BMW好きの間では2シリーズグランクーペがFFであることから、BMWらしさがないという先入観や懐疑的なイメージを持つ人は多いと思う。試乗したM235ixDriveはFFベースの4WD。搭載する2.0Lガソリンターボエンジンは306ps/450Nmの出力を持ち、コンパクトなボディを力強く走らせる。

2.0Lターボ4気筒エンジンを横置きに搭載

さらにトルセンLSDを備え、ARBという新たな制御システムで車両姿勢を安定させている。このARBは、タイヤのスリップコントールをエンジンECUで行なうものであり、スリップを感知した時、DSCを経由せず3倍の速さでエンジンへ伝達してトルクダウンさせ、姿勢を安定させるシステムだ。

こうした装備もあり横置きのFFとかFRであるといった駆動方法の違いによる運動パラメータの違いは感じられない。厳密には、あるいは極限領域ではその違いがあるかもしれないが、制御によって姿勢は安定方向へ補正される。もちろん、高速域だけでなく低速も含めた常用域でも姿勢は制御されているので、駆動方式の違いによるコントロール性を語るのはマニアのこだわりだと思う。

だから、ワインディングでのライントレース性や、高速走行での直進安定性、旋回からハンドルを戻していくときの滑らかさなど、どれをとってもBMWらしいのだ。それでもFRにこだわるのであれば2シリーズのクーペという選択がある。言い換えればグランクーペは4ドアとするために、キャビンスペースを確保するためにFF方式を選択し、BMWらしさを損なわないモデルづくりをしたと言えるだろう。

その努力は、ATからも見て取れた。8速ATは横置きエンジンのため、BMWとは蜜月関係のZF製ではない。ZFのFF用ラインアップは9速だけだからだ。しかし、滑らかな変速、ダイレクト感に不満はなくスポーツドライブも楽しくなる8速ATと言える。

実はZFの8速FR用ATは、シフト操作が独特で、ボタンを押して「P」、手前に引くとドライブ。奥に押すとリバースで、シフトレバーは常にセンターにポジションしているという構成。マニュアルモードのシーケンシャルもFR用ATと同じく前に倒してダウン、手前に引いてアップシフトであり、このFF用8速ATも同様の仕様になっているので、他モデルとの統一性はあった。

ドラポジやインテリア

コンパクトなFFになると左へオフセットするペダルレイアウトの問題が起こる場合がある。2シリーズグランクーペはUKL2プラットフォームを採用し、そうした課題はクリアしていた。FRのBMWと何ら変わりなく自然なポジションだった。さらにシート位置の低さもBMWの特徴だと思うが、グランクーペも十分に低い。

シートポジションは3シリーズほど低くないものの、十分スポーティなポジションになる

そしてインテリアのドライバーオリエンテッドと言われるインパネまわりが、ややドライバー側へ傾けてあるところも踏襲され、コックピット感のあるドラポジが取れる。フルデジタル表示のメーター類は、視認性はいいがタコメーターは逆回転表示になっている。

クライメートコントロールやドライブモード選択、ナビ、オーディオ、そしてACCの操作などの配置は従来モデルとの違いはなく、すぐに馴染める。こうしたレイアウトもプレミアムモデルならではのポイントだろう。

ドライバーオリエンテッドなインパネ周りはBMWらしい

都会で乗りやすいサイズ

ボディサイズでは、本来2シリーズはCセグメントサイズだがDセグメントとの中間サイズになっている。全長4526mm、全幅1800mm、全高1420mmでDセグと言えるかもしれないが、ホイールベースは2670mmでやはりCセグメントか。

C・Dセグメントの中間サイズ。シルエットはクーペライクでセダンとは一線を画す

このサイズはE46の3シリーズと比較すると全長4490mm、全幅1755mmで、ボディサイズでは2シリーズグランクーペの方が大きい。が、ホイールベースは2725mmあり、やはり3シリーズはDセグメントであることがわかる。

ちなみにE90の3シリーズでは全長4540mm、全幅1800mm、全高1410mmでホイールベースは 2760mm。そしてF30型3シリーズでは全長4625mm、全幅1800mm、全高1430mmでホイールベースは2810mmと大きな差はある。

前述のように2シリーズのグランクーペはFFとしたことでFRの2シリーズクーペと比較して後席の足元スペースは33mm拡大し、ラゲッジスペースも40L大きく430Lの容量を確保している。

後席の足元はクーペよりは+33mm広いが、5名乗車は厳しい

存在感の増したエクステリア

外観の特徴はなんといっても流麗でクーペライクなルーフラインとキドニーグリルだろう。アイコニックなキドニーグリルはワイドに広がり存在感が強い顔になった。年々大きくなっている。そして格子状に配置されたキドニーバーは、シルバーに黒のアクセントラインでBMW初のデザインということだ。

ボディサイドは陰影を際立たせたラインが目立ち、力強さとスピード感のあるプレスライン目立つ。テールは台形型デュアルエキゾーストパイプがM235i専用装備で、スポーティなリヤエンドで仕上げている。

リヤエンドマフラーは台形型のデュアルエキゾースト

2シリーズラインアップ

2シリーズは最初FFのグランツアラー、アクティブツアラーから国内デビューしているため、スポーツイメージはなくファミリーやマルチパーパスなモデルのイメージだった。だが、その後デビューする2シリーズクーペはFRレイアウトをとり、M2が登場したことで一気にスポーツカーのイメージがアップしたと言ってもいい。

このように、2シリーズにはいろんなバリエーションがあり、ひと口に2シリーズといっても同じカテゴリーには属さない複雑さがある。中心となるのはFRレイアウトの2ドアクーペモデルだ。これはBMWのモデル構成のルールにならい、偶数シリーズはクーペ、奇数は4ドアセダンで、2シリーズはクーペになる。

そして約半年前に、4ドアのグランクーペが加わったことで、偶数=クーペとも言いにくくなる。4ドアセダンとはことなるシルエットで、クーペスタイルとしながら実用的な4ドアの装備を持たせたモデルという理解になる。

2シリーズグランクーペは国内導入には大きく分けて2つモデルラインアップがあり、218iとM235iだ。218iはさらに3グレードあり「標準車」、「PLAY」、「Mスポーツ」とある。いずれも1.5L 3気筒ターボで7速DCTを搭載している。そしてM235iはM社が監修するスポーツモデルでBMWの量産ラインで生産されるホットモデルということになる。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

デザインは一新されているものの、機能スイッチの場所移動は少ないのはプレミアムモデルならでは
オプションの電動パノラマガラスサンルーフを装備していた。15万円也
FF用8速ATだが、FR用と操作パターンは統一されている
10.25インチのフルデジタルナビパネル
メーターもフルデジタルで、タコメーターは逆回転
クライメートコントールやオーディオ類の操作パネルもBMW共通のレイアウト

M235i xDriveグランクーペ試乗車スペック

●全長4540mm、全幅1800mm、全高1430mm、ホイールベース2670mm
●エンジン:2.0L 4気筒ガソリンターボ
●最高出力:306ps(225kW)/5000rpm
●最大トルク:450Nm/1750-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
WLTCモード
●市街地モード:8.6km/L
●郊外モード:11.9km/L
●高速道路モード:14.2km/L
JC08モード:14.4km/L

価格(税込)

●車両本体価格:665万円

装着オプションリスト

●メルボルンレッド:7万9000円
●パーフォレーテッドレザー:19万円
●ビジョンパッケージ:27万円
●デビューパッケージ:11万円
●電動パノラマガラスサンルーフ:15万円
●Hi-Fiスピーカーシステム:5万円
◆総額84万9000円
車両合計価格:749万9000円

COTY
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