2014年2月に発売となった新モデルBMW2シリーズのM235iと220iに試乗できたので、そのレポートをしよう。
◆ポジショニング
BMWが放つプレミアムコンパクト・クーペが2シリーズで、Cセグメントにカテゴライズされるモデルだ。ライバルはメルセデス・ベンツがAクラス、アウディはA3であり、いずれもセダンやハッチバックスタイルでの展開で、BMWだけクーペでのスタイルをとっている。さらに、セグメント唯一のFRモデルというのもポイントとなる。もっともこの先、2シリーズにグランクーペがもし加わるとすれば、メルセデス・ベンツのCLAが直接のライバルとなるわけだ。
ご存じのようにBMWはセダンを奇数の数字で、クーペを偶数の数字で表し、2シリーズは1シリーズのクーペモデルでカブリオレも展開される予定だ。ボディサイズは全長4440m(Mスポーツは4470mm)×全幅1775mm×全高1420㎜、ホイールベースは1シリーズと同じく2690㎜となっている。国内で取り回すには、ちょうどいいサイズ感だと思う。
モデルラインアップは大きく分けて220iとM235iの2モデルで、220iは2.0L4気筒ターボ、M235iは3.0L直列6気筒ターボエンジンを搭載している。220iは「SPORT」と「M Sport」の2グレードでともに8速ATを搭載。主に装備の違いがあり、457万円(8%消費税込)と481万円(同)となっている。M235iは6速MTと8速ATが用意され、MTが601万円(同)でATは615万円(同)というプライスだ。
◆インプレッション
M235iの6気筒ツインスクロールターボエンジンは(N55B30A型)は、バルブトロニック、ダブルバノス、スプレーガイドインジェクターを装備する直噴エンジンで、BMW6気筒エンジンの中でも最新のエンジンである。試乗車はZF製8速ATにパドルシフトが付き、エキゾーストノートも迫力あるものになっている。
高回転まで回るときのサウンドは気持ちよく、また滑らかなシルキーシックスも堪能できる。高級車御用達とも言えるZF製8速ATはその滑らかなステップ式シフトチェンジで、よりしっとりと滑らかさに磨きをかけている。パワーは326ps/450Nmと強烈でしかもウエイトは1550㎏だから、強烈な加速Gが味わえるのだ。
7000rpmのレッドゾーンまで実に滑らかに吹け上がり、気持ちよさはこのうえない。直進時の微小舵角とコーナリング中の微小舵角が同じように動き、クルマの反応がまさに意のままに操舵できるため、突き抜けた気持ち良さを味わえる。ボディサイズもかつての3シリーズくらいの印象で、振り回すにはちょうどよい大きさだと感じ、峠を走り回るには最適なモデルだと断言できる。
サスペンションは電子制御式ダンパーを備え、ステアリングギヤ比、アクセルレスポンス、ギヤのシフトエレメントなどが統合制御され、好みでハンドリングや乗り心地を調整できる。ただし装着するタイヤはフロントが225/40-18、リヤが245/35-18と超扁平でもあるため、しっかり締まった印象の乗り心地と感じる。とはいえ、ガツンといった硬い入力はなく、スポーツサスペンションなりにソフトにいなしているフィールはある。
ボディサイズとタイヤのパフォーマンスから、すこぶる軽快感がありワインディングでの走行を心から楽しめる。さらにオーバーパワーとも思えるM235iのエンジンは滑らかで気持ちよく、トルクフルな走りを披露する。この気持ちよさや満足感は他に類を見ない。さらにインテリアの質感もスバ抜けて高級とはいかないが、プレミアムクラスでしか味わえない品質で仕上げてあり、走りが大好きな人には気に入るモデルに違いない。
220i M Sportも同じく8速ATを搭載したモデルに試乗した。こちらは装着するタイヤがフロント225/45-17、リヤが245/40-17で乗った瞬間M235iよりマイルドで、ある意味ホッとする。搭載するエンジンは2.0Lターボ(N20B20B型)で、320iや328iにも搭載しているエンジンだ。出力は184ps/270Nmというスペックだが、これでも十分速いと感じる。4気筒でありながら滑らかで、しっとりしたフィールがありプレミアムスポーツの名にふさわしい印象を持つ。
ハンドリングはM235iもそうだったが全体に軽く、3シリーズよりは操舵感の軽いセッティングになっている。ハンドリングマシンの異名があるBMWだけに、直進時からの動きだしは粘りのあるしっとりとした動きだしで、そこから手応えが徐々に強くなってくるという味付けは電動パワーステアリングとはとても思えない、フィールが掌に残る。
220i M SportのサスペンションはM235iより当然コンフォートであり、コーナーでもサスペンションのストロークが感じられる好ましい乗り味になっている。ステアリング操舵の開始と同時に始まるロールと、外側へかかる荷重、徐々にヨーモーメントを感じ始めつつステアリングに伝わるインフォメーションと、まさにドライバーの期待値どおりに動き、クルマへの愛情が深まる瞬間だ。M235iよりも動きが大きい分、わかりやすく安心感がある。それも速度域が高くなれば、逆にM235iのほうが安心感は強まるという当たり前の変化も感じ取ることができた試乗だった。
さて、居住性だが4人乗りの2シリーズクーペの後席は乗る人を選ぶ。畳の上であぐらをかき、立ち上がるときに自然と「よっこらしょっ」と言ってしまう人は乗らないほうがいい。助手席がベストだ。後席のルーフ高はそれなり確保してあるが、その分、エクステリアを真横から眺めるとリヤセクションの処理がすっきりと感じなのは私だけだろうか。
操作系では他のBMWと同系統であるため、BMWオーナーであればコックピットドリルを必要としない。こうしたセグメントを超えても同じ価値観で統一されているあたりが、一流ブランドの特徴でもあり、ドイツプレミアムモデルの美点と言えるだろう。
BMW2シリーズ価格表