【BMW】アクティブハイブリッド7試乗記 EV走行とコースティング機能を持つ新型登場

マニアック評価vol158
BMWのフラッグシップモデル、7シリーズが9月にビッグマイナーチェンジを行った。主な変更は環境性能と動力性能のさらなる向上とエクステリアデザインの一部変更である。中でも注目したのはアクティブハイブリッド7で、パワートレーンシステムが前モデルから大きく変更され、より環境性能を意識したモデルとなり、新しくなったので早速試乗してみた。

BMW アクティブハイブリッド7 フロント01

そもそも、このクラスともなればフツーの仕事をしている人では買えないクラス。ベースグレードで1022万円もする。ベースグレードという言い方すら違っていると思うが、そうなのである。もっとも高価なのが6.0LのV型12気筒+ターボを搭載する760iLだ。フツーにでかい7シリーズをさらにストレッチボディにしたモデル。これが1958万円である。このように1000万円オーバーのグレードが数多くラインアップする中で、今回試乗させてもらったのはアクティブハイブリッド7の同じくストレッチしたアクティブハイブリッド7L。1338万円というモデルだ。

BMW アクティブハイブリッド7 ロゴ

さて、7シリーズが高級車であることは価格を見なくともわかるが、超が付く高級車だけに「素晴らしい」のは当たり前だ。だから、いわゆるインプレッションでライバルとなるであろう、ベンツSクラスやジャガーXJ、アウディA8などと比較するというより、どこが気に入ったか?という購入する際、納得できる理由探しみたいなことが多い。したがって、今回試乗させてもらったアクティブハイブリッド7Lで、ここが気に入った!というポイントをレポートしてみたい。

BMW アクティブハイブリッド7 サイドBMW アクティブハイブリッド7 リア

BMW アクティブハイブリッド7 フロント02

まずはクルマまわりをグルッとひとまわりしてみる。そしてちょっと離れて眺めてみる。ビッグマイナーなので、エクステリアに大きな変更はない。細部の変更だけだがやはり圧倒的な存在感がある。それはボディサイズであり、迫力あるキドニーグリルであり、その佇まいでだ。ルームミラーにこの顔が接近したら、スッと走行車線に戻る自分が想像でき、ホテルの車寄せにアプローチすれば、バレーパーキングを、あるいは、後席から降りる姿を妄想できる。風格は申し分ない。

BMW アクティブハイブリッド7 センターコンソール

そして、BMWのフィロソフィにもなるが、すべてのモデルがドライバーオリエンテッドで駆け抜ける歓びを持っているというのがBMWだ。今回の7シリーズ、しかもストレッチボディとなればショーファードリブンな世界観であり、後席のインプレッションを、となるが、なんとドライバーズシートに腰を下ろしてみるとセンターコンソールやダッシュボードまわりがちゃんとドライバー方向に向いている。オーナードライバーを重視しているのがわかるレイアウトになっているのだ。だから運転手さんも楽しめるようにしている・・・違うか。

BMW アクティブハイブリッド7 フロントシート
ベージュと黒のコンビで品がいいインテリア  
BMW アクティブハイブリッド7 ペダル
右ハンドルだが、Aペダルの位置もオフセットしていない

 

ドライビングポジションを見てみると、ステアリングとアクセルペダルの位置関係も右ハンドルでありながら、自然な位置に右足が置ける。実はこのモデル、先代は左ハンドルしか用意されず、右ハンドルの要望が高かったという。したがってペダル位置をチェックしてみたのだ。つまり、右側はタイヤハウスがあるから左へオフセットしがちだが、BMWの全てのモデルはしっくりくるポジションにペダルがあり、このアクティブハイブリッド7Lも例外ではなかった。もっともこんだけサイズが大きいとタイヤハウスが邪魔になるか?というと、そうでもないらしいから、そこに感心しても・・・とも言える。

ステアリングの太さは、3シリーズ5シリーズより細い。これはきっと白い手袋をしたときにマッチするからだろう、と勝手に想像する。3シリーズ、5シリーズのMスポーツになるとさらに太くなるが、7シリーズが一番細いハンドルなのだ。もちろん、試乗した時は素手でドライブしたが、その太さが頼りないなんてことはまったくない。単に比較しての話だ。

さて大幅に変更されたハイブリッドユニットだが、エンジンは4.4LのV型8気筒ツインターボ+モーターから3.0L直列6気筒ターボ+モーターへと変更になった。そう、3シリーズ、5シリーズのハイブリッドと同じユニットになったのだ。がしかし、フラッグシップモデルだし、重量も2030kgと3シリーズや5シリーズよりも重い。したがってエンジン自体のパワーを10Kw(14ps)、50Nmアップし威厳を保つ。さらに前モデルとの大きな違いはEV走行ができるようになったことも自慢。

BMW アクティブハイブリッド7 メーター
EV走行は60km/hまで可能になった

これはパワーユニットが変わったというより、パラレル式ハイブリッドのレイアウトに変わったためで、このアクティブハイブリッド7はエンジン→スタート用クラッチ→モーター→クラッチ→ミッションといレイアウトになっている。そのため、モーターだけ独立した駆動が可能で、0-60km/hまでと、距離にして約4kmまでならEV走行が可能なのだ。ただし、国産車のように意図的にEV走行するためのスイッチは備えていない。ドイツ人のEV走行に関するこだわりだ。それは・・・別の機会に。

コースティング機能も働く。60km/h以上でアクセルを離すとエンジンとミッションは切り離され、エンジンは停止しエンジンの抵抗を受けずに転がり続ける。160km/hまではこの機能が働くので国内では全速域コースティング走行が可能ということになる。EV走行もできるからゼロエミッションの走行領域がかなり広いとも言え、CO2排出削減という環境を強く意識していることをアピールできるわけだ。知的財産だな。

BMW アクティブハイブリッド7 エンジン
直列6気筒+ターボ+モーターというアクティブハイブリッド7の心臓部

ちなみにエンジン出力は235kw(320ps)/5800rpm、450Nm/1300-4500rpmでモーター出力は40kw(54ps)、210Nmというスペック。システムトータルは260kw(354ps)、500Nmということになり、JC08モード燃費は14.2km/Lとセグメントトップの燃費になっている。直6エンジンは歴史あるシルキーシックスが進化したN55B30A型で、吸排気可変バルブタイミングのダブルVANOS、機械式可変バルブリフトのバルブトロニックを搭載した直噴ツインスクロールターボと組み合わされている。これに信頼性の高いZF製8速ATがドッキングし効率よくパワーを伝えているわけだ。

この新しいパワーユニットによってよりクリーンでパワーをという設計思想を具現化したモデルがアクティブハイブリッド7ということになる。走行中でもエンジンは止まるコースティング機能もある。もちろんアイドリングストップもするので大型車=燃費が悪いというイメージの人にもアピールできる。このサイズでリッター14km以上ですよ!未だ街中で多く走る15年前の2.0Lクラスのセド・グロ、クラウンなんて7km/Lぐらいだから、その倍は走ることになる。どっちが環境に優しく、エコなんだと胸を張れる。

そして平成27年度燃費基準を+20%達成し、平成17年度排出ガス基準も75%低減レベルとなり、エコカー減税対象となる。自動車取得税、重量税が75%減税、翌年度も自動車税が50%減税対象となるのだ。つまり、加速が良くなって燃費が良くなって、賢くなったことに対し、税金優遇するというご褒美付きだ。

サスペンションでもBMWらしさを感じた。以前はロングストレッチボディだけに採用していたリヤサスペンションのオートレベライザー機能を今回のマイナーチェンジで全モデルに標準採用している。さらに、サスペンションのラバーマウント、ボールジョイント、ダンパー減衰も変更というサスペンション自体のチューニングも行われているのだ。

BMW アクティブハイブリッド7 リアシート01BMW アクティブハイブリッド7 リアシート02

だいたいからして、ショーファーなクラスでありながらサスペンションのセッティングとステアリングレスポンスなどに影響するiDriveコントローラーを使ったドライビングパフォーマンスコントロールを装備し、5段階に変更できる機能まで搭載していること自体でドライバーズカーだという主張が伝わってくる。だって、エコモードを搭載するのはわかるがスポーツ+まであるのだから、どんだけ走るのが好きなんだ!ということだ。つまりスポーツ+の意味するのはESCのカットであって、単にサスペンションを締め上げ、ステアリングレスポンスをよくするだけではないのだ。ドリフトでもすんの?ジェームス・ボンドっか!ということだ。

そして新規にアクティブプロテクションとドライビングアシストプラスという機能が加わった。アクティブプロテクションとは、ドライバーのステアリング操作で疲労度を判断してディスプレイに表示し休息を促す。また、衝突の危険性が高まったときに、シートベルトを巻き上げ、オプションで電動シートであれば助手席、後席の着座位置を適切な位置にし、サンルーフを閉じてくれるのだ、恐れ入る。

BMW アクティブハイブリッド7 ドライビングアシスト
ルームミラー背後にはカメラも装備し、アダプティブ機能も増加している

ドライビングアシスタントプラスとは、4つの先進装備で、前方車両に追突の可能性があるとき、ドライバーへ警告とブレーキアシストがスタンバイになる(前車接近警告機能)。そして減速が不十分で追突の危険が高まったときは衝突回避、被害軽減のブレーキが機能する。こちらは40km/Lからの減速・停止を想定しており、フロントバンパーのミリ波レーダーとルームミラー内蔵のカメラで検知する。これらの装備でACCは、前車追従タイプのストップ&ゴーが可能となり、ほかにレーンデパーチャー車線逸脱警告の機能も装備されている。

こうしてビッグマイナーを受けた7シリーズは、BMWのアイコンであるキドニーグリルにLEDを使った4灯丸目ヘッドライトでアイデンティティを示し、L型テールランプなど独自の存在感もある。そしてクルマの大きさや佇まいで風格を醸し出し、さらに走り出せばオリジナリティにあふれた装備と機能で環境への配慮、明確で説得力のある走りが体験できる。ということで、自分なりのお気に入りポイントを探してみてはいかがだろうか。

BMW アクティブハイブリッド7 価格表

BMW アクティブハイブリッド7 主要諸元表01BMW アクティブハイブリッド7 主要諸元表02

BMW アクティブハイブリッド7 4面図

BMW アクティブハイブリッド7 公式サイト

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