【BMW】320dディーゼル、アクティブハイブリッド3試乗記 トルクフルで滑らかな320d、3シリーズを凌駕する上質感のアクティブHV3

マニアック評価vol143
BMW3シリーズのラインアップが充実してきた。2012年1月に新型3シリーズF30型は328iで国内デビューし、4月に320iセダンを投入。そして7月にはハイブリッドモデルのアクティブハイブリッド3を発表、8月に4WDモデルのxDriveを発表し、直後にディーゼル投入と続々とバリエーションが増えていっている。さらに9月には320d、328iにツーリングと充実のラインアップとなっている。その中で、今回は320dとアクティブハイブリッド3に試乗する機会があり、箱根のワインディンを走行してみたので、レポートをお送りしよう。

最初の試乗は320d Blue Performance。4気筒クリーンディーゼル搭載で日本のポスト新長期規制も欧州のユーロ6もクリアしているモデルだ。2.0L直噴ターボの出力は184ps/4000rpm、380Nm/1750rpm-2750rpmで最大トルクは6気筒ガソリン車に匹敵、パワーも320iと同等というスペックだ。

BMWは今後ガソリンエンジンとの部品共通化を進めていく方針で、このエンジンはアルミブロックを採用している。コモンレール式ダイレクトインジェクションに、高圧の燃料噴射インジェクターを採用。燃焼効率を追及したエンジンで圧縮比は16.5となっている。このエンジンンに可変ジオメトリーのターボチャージャーを組み合わせ、回転数に合わせて過給圧を制御している。

排気ガスはDPFによってPMが除去され、NOxはNSCフィルターによってクリアされる。X5に採用していたSCR尿素水還元装置のタイプではなく、NSCフィルターを使用している点が従来のディーゼルとは異なる。したがって、ある程度の走行距離によってアドブルー尿素水を補充する必要があったSCR方式に対して、NSCはメンテナンスフリーとなった。

ちなみにF30型の320dで、欧州で販売されてはいるものはユーロ5対応であり、同タイプの320dはオプション販売となっている。したがって実際はユーロ5対応モデルが販売の主力になっている。しかし、国内ではユーロ5対応ではポスト新長期規制に適合しないため、欧州のオプション仕様のモデルが導入されることになったのだ。

トランスミッションは他の3シリーズ同様ZF社の8速ATで、オプションのパドルシフトとも組み合わせることが可能だ。サスペンションも標準仕様で3段階の調整ができるアクティブサスペンションであるドライビング・パフォーマンス・コントロールがあり、スポーツ、コンフォート、ECOの調整ができる。

さて、その走りだが、レッドゾーンは5800rpm。マツダのスカイアクティブ・ディーゼルは5000rpmがレッドゾーンなので、それを上回ることになる。しかし、ディーゼルの特長は何といっても低回転域でのトルクであり、320dのトルク特性も2750rpmで最大トルクを発揮しているため、高回転側は主にドライブフィールで貢献していると思う。

エンジンをスタートする。ガラガラとディーゼルのアイドリング音がする。走り出すとすぐにシフトアップが始まる。スロットル開度にもよるが1300rpmまで上がればシフトアップする。不思議なことに、アイドル時に聞こえるガラガラ音が走り出すと聞こえなくなる。走り出しの瞬間の音だけはディーゼルだが、その先はガソリン車と区別がつかないほど静かになる。

アクセルを踏み込んでみると、なおさらディーゼルであることがわからなくなる。いままでのディーゼルはアクセルを踏むと回転の上がり具合の遅さやエンジンノイズが大きくなるので、ガソリン車との違いを明確に体感したものだが、このディーゼルでは体感できず、ガソリン車と変わらないほど滑らかにまわる。回転数も高回転までスムーズに回るので、その違いはさらに感じないだろう。

逆に低回転でトルクを発生するディーゼルなので、ゆっくり走っても乗りやすい。一般車の流れに乗って走行するときは1200rpmあたりでシフトアップされ、信号でとまればアイドルストップが働き、エンジンは停止する。極端に言えば走り出しのタイヤひと転がり分だけディーゼルの顔をだす。その後はシームレスにシフトアップが行われ、穏やかに滑らかに走行するというディーゼルだ。

一方、ワインディングを元気に走ってみても、ディーゼルのネガな部分がまったく分からない。パドルシフトとの相性もよく、レスポンスは小気味いい。レッドゾーンぎりぎりまで引っ張るような走り方をしても、何のストレスもなくエンジンは反応する。328iの4気筒ガソリンターボより重めのフィーリングだが、それも乗り比べて分かるというレベルだと思う。

380Nmという大トルクは一般路のワインディングはもて余すほどで、サーキットへ持ち込みたくなるほどパワフルに走れる。試乗車にはサスペンションが4段階に調整できるオプションのドライビング・パフォーマンスコントロールが装備されおり、スポーツモードでは、とても使い切るほどには走れない。もっとハイレベルで走れるよ、とクルマからつぶやかれているようで、ディーゼルであることが信じられないほどワインディングを楽しめた。もっともレース界ではディーゼルが主流になりつつあるので、そのポテンシャルはすでにガソリンエンジンを超えていても不思議はない。

次に試乗したモデルはアクティブハイブリッド3だ。3シリーズのトップグレードでもっともハイパフォーマンスなグレードという位置付けになる。国産でのハイブリッドはエコカーの代名詞であり、燃費がいいことが売りになっているが、BMWのフィロソフィでは、インテリジェンスを持ちながら駆け抜ける喜びを提供するのがハイブリッドモデルなのだ。

BMW3シリーズにはかつてシルキーシックスと呼ばれる6気筒エンジンが搭載されるモデルがあったが、ダウンサイジング化により4気筒+ターボが主流になった。しかし、このアクティブHV3には3.0Lの直列6気筒が搭載されている。先行して販売されている5シリーズのハイブリッドと共通のユニットになる。そのパワーユニットの配列は6気筒+ターボエンジン→クラッチ→モーター→クラッチ→トランスミッションという配列で、2クラッチタイプのパラレルハイブリッドである。

↑F30型はもともとバッテリーを搭載することが前提で開発されたので、トランク容量もしっかり確保。右はZFの8速ATのカットモデル

モーター走行も75km/hまで可能で、走行中はエンジンの停止、再始動を繰り返すがその変化はまったく分からない。また、国産のハイブリッドには装備されるケースが多い、EVモードという強制的にEVモードで走行できるスイッチはこのアクティブHV3には持たない。考え方の違いによるものだが、やはり、低燃費至上主義のモデルでなくパフォーマンスを重視した3シリーズのトップグレードだからでもある。しかし、バッテリーが十分な残量であればEVだけで3km〜4km程度のEV走行はするので、結果的には同様のパフォーマンスが可能なのだ。その機能を求めるユーザーの違いという理解か。

従ってタイヤもエコタイヤを履かない。ハンドリングが気持ちよく、ウエット性能も高く、スポーツドライブが可能なドライバーオリエンテッドというBMWのポリシーはここにも現れている。試乗車にはブリヂストンのポテンザ・ランフラットS001という銘柄を履いている。タイヤラベリングでも転がり抵抗はCランクで、スポーツ、乗り心地に適したタイヤという位置付けのタイヤだ。

もちろん、ハンドリングはBMWらしい、意のままにドライブできるハンドリングで魅了される。ほんの少しステアリングを動かすだけでクルマはキチンと反応し、ドライバーへインフォメーションを渡す。リニアに反応するステアリングに、アクセルレスポンス、そしてブレーキフィールまでもが思ったとおりに動くというBMWらしさをキッチリ堪能できるハイブリッドだった。

特にサスペンションフィールのしなやかさには惚れ惚れする。328iと同じようなフィールではあるが、エンジンの静かさからなのか、滑らかさからなのか、ワンランク上の上質感がある。ストローク感でもストロークする距離と時間が見事にリンクし、ロール感へと繋がる。3シリーズ最強のグレードに位置するアクティブHV3は、もはやかつての3シリーズのイメージをはるかに超える上質感を持ったモデルだった。

 

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