第2世代のBMW X3がジュネーブショーで発表され2011年3月末から日本でも発売された。
初代X3(E83)は2004年から発売されたが、大型クラスのX5と同様に成功をおさめ累計61万台という実績を残している。
X3が属するミドルクラスのクロスオーバーSUVカテゴリーは、アメリカ市場を主戦場として激しい競争を繰り広げており、X3のライバルとなるのはアキュラRDX、インフィニティEX35、キャデラックSRX、メルセデスGLK、アウディQ5などだ。これらのカテゴリーは、日本では十分大きなサイズではあるが、アメリカ市場では、プレミアムな小型クロスオーバーのカテゴリーとして分類されている。
つまり広義ではSUVであるが、クロスカントリー性能よりオンロード性能が重視され、しかもプレミアムクラスだけに、走りに関しては高性能であるとともに安心感や快適性、装備の充実や高い質感といった面でも高次元の要求されているのだ。なおBMW X3は、X6、X5と同様にスポーツアクティビティビークル(SAV)と称し、より高い運動性能を持つスポーティなクロスオーバーカーとしている。
コンセプト&デザイン
新型X3はフルモデルチェンジに伴い、製造プラントも変更された。初代X3は初代X5同様にオーストリアのマグナシュタイヤー社グラーツ工場で開発・委託生産が行われていたが、新型からはBMWのアメリカ工場であるスパータンバーグ工場に移管され、型式名もE83からF25となり、先代のX3との関係性は薄まっている。つまりX6、X5と同じ工場で生産され、プラットフォームも共通化され、ターゲットが明確化されたということだ。
新型X3の開発コンセプトは、クラスのベンチマークとなる最高レベルの運動性能を実現することで、これは初代のコンセプトと共通している。具体的にはクラストップレベルの俊敏性、運動性能、燃費向上とCO2 排出量の低減、多様途性を狙うとともに、快適性の向上と室内スペースの大幅な増大も開発テーマになっている。
ボディサイズでは全長4648mm(+83mm)、全幅1881mm(+28mm)、全高1661mm(+12mm)、ホイールベース2810mm(+15mm)とひとまわり大きくなり、初代X5とほぼ同サイズになっている。
デザインはX5と同一のテイストでまとめられ、力強さ、都会的なセンスを融合させサイドウインドゥのグラフィックスはウエッジフォルムとしている。しかしながらキャビンのスペースも最大限に追求しているため、やや腰高な印象を受ける。なおCd値は0.35である。
インテリアはセダンの3シリーズより質感を高めており、立体的な面構成を採用している。オプションの8.8インチ・ナビゲーションシステム・プロフェッショナルおよびヘッドアップ・ディスプレイとの組み合わせで装備されるメーター・パネルには、BMW7シリーズ、5シリーズ同様のブラックパネルを用いている。センターコンソールはドライバーオリエンテッドデザインである。
ラゲッジスペースは550L、最大1600Lというクラストップの容量を実現し、ゴルフバックは4セット搭載できる大きさを持っている。また、リヤシートバックは20:40:20分割式で使い勝手も考慮されたものになっている。
一方、クロスカントリー性能は、車高212mm、アプローチ/デパーチャー角は25.7度/22.6度、ランプ角は19.4度、渡渉深さ500mmとなっている。
シャシー
4WDシステムはX5同様に、前後アクスルに対して可変トルク配分ができるXドライブシステムを採用している。Xドライブは2003年にX3で始めて採用されたシステムで、トランスファー部にセンターデフを装備せず、電子制御油圧多板クラッチで前後配分を行う方式である。前後配分はそれぞれ0〜100対0〜100が可能になっている。
システム的にはDSC(ESPダイナミック・スタビリティ・コントロール)/ABSを協調制御することで、前後配分を変化させ、アンダーステア、オーバーステアを抑制するようにトルク配分を行う。 これは、油圧多板クラッチ制御に高速サーボモーターを使用し、カム型のアクチュエーターを作動させることで制御している。また同時に4輪独立で制御されるブレーキが作動し、ホイールの空転を抑制するシステムとなっている。なお、ブレーキによりLSD効果を得るため、前後のデフはオープンデフ構造になっている。さらにオプションの「パフォーマンスコントロール」を組み合わせると、コーナー内側の後輪には適切にブレーキがかけられることで他輪の駆動力が高くなり、極めてスムーズに旋回することができる。
サスペンションは、フロントがダブルジョイント式ストラット、リヤが5リンクアクスルである。パワーステアはXモデルでは初の全モデルに採用した電気機械式パワーステアリング(EPS)を採用している。このEPSについては【ZF】 BMWハンドリングの秘密 第3の電動パワーステアリング EPSapaを参照して欲しい。
このEPSは正確なハンドリングをもたらすとともに操舵時のみ電気モーターでステアリングアシストを行うため、燃費向上にも寄与している。また車速感応式のアシストを行うサーボトロニック機能を内蔵しているため、車速に応じて操舵フィーリングが変化する。また、35iグレードにはバリアブル・スポーツステアリングが標準設定され、これは低速時に操舵力を軽減するとともにギヤ比をクイックに変化させることができる。
DSC(ESP)はダイナミックトラクションコントロール、ダイナミックブレーキコントロール、コーナリングブレーキコントロール、電子制御オートマチックデファレンシャルロック、急坂用のヒルディセントコントロール機能を統合制御しいている。またオプションでダイナミックダンパー(ダンピング)コントロールも装備できる。
このシステムはXモデルとしては初の採用で、センターコンソールのスイッチで、「NORMAL」、「SPORT」、「SPORT+」と3 つのプログラムから選択できる。これによりダンパーの作動特性だけでなく、アクセルペダルの応答特性、エンジンの応答特性、ステアリングアシストの特性、DSC の作動限界値、さらにATのシフト特性も変更できる。
なおこの連続可変ダンパーシステムは、ZF社のCDCシステムそのものである。しかしダンパー本体のバルブ構造も改良され、ダンパー伸圧の切り替わり時にリニアで正確な減衰力を発生することでランフラットタイヤの乗り心地、ロードホールディングを高めている。
ブレーキはフロント328mm、リヤ330mm径のベンチレーテッドで、キャリパーは前後ともシングルピストンである。タイヤはランフラットを標準装備とし、サイズは245/50R18、または245/45R19(フロント)、275/40R19(リヤ)の組み合わせになる。
エンジン&トランスミッション
これまでのX3は、本国ドイツ仕様ではガソリンエンジンが直列4気筒/2.0L、直6/2.5L、そして直6/3.0Lが2種類あり、ディーゼルでは直4/2.0Lが3種類、直6/3.0Lが3種類とそれぞれに多数の仕様が存在した。これはエンジンがモデルライフの途中で変更された結果でもあるのだが。
これに対して新型X3は、ガソリンエンジンが直6/3.0L、直6/3.0Lターボ、ディーゼルが直4/2.0L、直6/3.0Lとなっている。いずれのエンジンも出力、燃費ともトップレベルを達成し、最もベーシックな2.0Lディーゼルターボは、184ps、380Nmを引き出し、0→100km/hが8.5秒、最高速210km/h、CO2排出量は147g/km(8速AT、6MTでは149g/km )というスペックになる。
日本に導入されるのは28i(直6/3.0L)、35i(直6/3.0Lターボ)の2機種で、ディーゼルは残念ながらラインアップされない。トップグレードたる35iに搭載される直6エンジンは、アルミ合金シリンダーのN55B型で、BMWの直6シリーズの最新仕様であり、クラストップのパワーと燃費レベルを誇っている。
メカ的には、バルブトロニック、ダブルバノス、高圧スプレーガイデッド直噴、ツインスクロールターボ×1。このスプレーガイデッド直噴はリーンバーン運転、成層燃焼運転も行うことができる。また、ツインスクロールターボ(BMWの名称はツインパワーターボ)は、3気筒分の排気ガスを分離してターボに導き、排気エネルギーをダイレクトにターボへ伝達でき、ターボ自体は低速型に設定している。さらに圧縮比は10.2ときわめて高く、最大トルク400Nmは1200〜5000回転で発生するワイドレンジタイプになっている。最高出力は306psで、加速は0→100km/hが5.7秒、最高速は245km/h。燃費は10・15モードでは12km/L(JC08モードで11km/L)、EU燃費は8.8L/100km、CO2排出量は204g/kmとなっている。
一方の28iは、自然吸気3.0LのN52B型だ。マグネシウム/アルミ合金シリンダーの軽量直6をベースにして、バルブトロニック、ダブルバノス、ポート噴射を装備した、いわば直6のベースエンジンといえる。出力は258ps、最大トルクは310Nmを2600〜3000回転で発生し、低速トルク重視型になっている。燃費は10・15モードで10.6Km/L(JC08モードで10.0km/L)である。なおいずれのエンジンも、ブレーキ回生充電システムを装備している。
またスタート&ストップシステムは35iに標準採用されている。トランスミッションはZF製の8速ATを新採用し、シフトバイワイヤー式になった点も新しい。8速ATは5シリーズから今回のX3へと順次採用が拡大されており、ワイド変速比幅とクロスレシオを両立させ、なおかつ軽量コンパクト、クイックシフト性能を実現している最新ユニットだ。ヨーロッパ仕様では6速MTも選択でき、このMTユニットもZF社で新開発され、ドライサンプで、軽量化をはかったミッションとなっている。
文:編集部 松本晴比古
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