BMW5シリーズが7年ぶりのフル・モデルチェンジを行った、数えて6代目である。デザインではこれまでのクリス・バングル氏からファン・ホーイドンク氏にバトンタッチされることになり、先代5シリーズでは主張の強いデザインであったために、好き嫌いという話題が多くのメディアとマニアの間では飛び交っていた。今回のデザインはややコンサバにも感じるが、みなさんはいかがだろうか。
ファン・ホーイドンク氏
豊富なエンジンラインアップ
さて、導入されている5シリーズは、528i 535i 550iの3ラインアップに遅れて523iが加わった。搭載さるエンジンは、それぞれ直列6気筒2.5Lと3.0L、それにV型8気筒4.4Lだ。
詳しくみると、523iと528iは同じエンジンで排気量違い。N52Bというタイプが採用されておりZ4-23やX3-25、X3-30、630i、130iと共通のNAである。BMWの直6にはこのN52Bのほか、N53、N54、N55とあり、数字が大きいほど新開発されたことを意味している。
このN52Bは直6のDOHCで、バルブトロニックとダブルバノスがあり、排気量は2.5Lと3.0Lがある。いずれもNAエンジンである。N53Bエンジンは3.0Lで直噴エンジンとなっている。そのため、バルブトロニックはなくなり、リーンバーン運転をするNAエンジンだ。搭載は5シリーズにはされておらず、325iだけである。N54Bエンジンは、N53Bと同じく3.0Lなのだが、こちらは直噴ターボになっている。このエンジンに使われるインジェクターノズルはプレシジョン噴射のピエゾ・アクチュエーターによるスプレーガイデッド式高精密噴射である。ただし、リーンバーン運転はしておらず、従来式のツインターボを装備している。こちらも5シリーズには搭載されず、740i、Z4-35iに積まれている。そしてN55Bエンジンは最新のエンジンで3.0Lバルブトロニック、ダブルバノスを持ち、ツインスクロール式のターボを1基装備する。ちなみに、インジェクターはピエゾ・アクチュエーター式ではなく、小型噴射弁を使用している。つまり、リーンバーン運転ではないからだ。搭載車種の代表は535i、535GT、X5-35i、X6-35iなどである。
左)通常の倍200気圧で噴射するピエゾインジェクター。右)ツインンスクロールターボ
直6ツインターボ
5シリーズにV8型を搭載する550iは、N63B44Aという直噴V型8気筒DOHCツインターボを積んでいる。このユニットの特徴は通常、V型8気筒の場合、バンクの外側が排気で内側が吸気となっているが、BMWは外側が吸気、Vバンク内側が排気と、通常とは吸排気を逆転したレイアウトになっている。だから、このレイアウトのために排気マニホールド、吸気経路がともに短く、エネルギー損失や圧力損失を最小限でき、エンジンのレスポンスを向上させている点にある。
V8ツインターボ・レイアウト
8速AT、マイクロハイブリッドを搭載
5シリーズのすべてのモデルに共通するのがZF社製の8速ATだ。素早いシフトチェンジと約7.1というワイドレシオが自慢だが、最大の特徴は6速ATと同じ大きさにとどめることができたことだ。つまり、8速でありがならも軽量であり、コンパクトなのだ。
ZF社製8速AT。7.1というワイドレシオだ
さらに全グレードにマイクロハイブリッドが装備され、バッテリーの充電状況をモニターし、オルタネーターの稼動を制御するシステムが導入されている。その結果、エンジンにかかる負担を軽減でき、省燃費へとつなげている。ちなみに523iと528iはエコカー減税対象モデルである。
ステアリングアシストでは油圧から電動となり、車速に応じてフロント・ホイールとリヤ・ホイールの切れ角を最適にコントロールするインテグレイテッド・アクティブ・ステアリングが採用されている。60km/h以下のときはリヤタイヤがフロントとは反対に切れ、最小回転半径を小さくし取りまわしがよくなっている。また、60km/h以上のときは、前後のタイヤは同方向に切れ、走行安定性向上にふっている。
ニュー5シリーズに標準装備されたダイナミック・ドライビング・コントロールは、「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」のモードが選択でき、スイッチを押せば、エンジン・レスポンス、ミッションのシフト・タイミング、パワーステアリングのアシスト量などの設定が連動して調整される。さらにオプションでシャシーコントロールシステムであるアダプティブドライブ(可変スタビライザーがロールを制御)とダイナミック・ダンピング・コントロール(乗り心地を快適に保つ可変ダンパーシステム)を装備すれば、さらに「コンフォート」モードも追加され長距離移動にも快適性を発揮する。
左)80km/hで1100rpm程度、右)100km/hでも1500rpmを下まわり、省燃費も期待できる
つまりコンフォートを選べば、ステアリングアシストが増え、ハンドルは軽くなり、ダンパーも柔らかく感じソフトな乗り心地を感じる。スタビライザーもフロントが強くリヤが弱くなりアンダー傾向になり、リラックスした走りになる。逆にスポーツプラスを選べば、DSCの介入レベルも変化し、フットワークを楽しむクルマにかわっていき、懐の深さを感じることができるのだ。
文:編集部 高橋明
関連記事