【BMW】 新型1シリーズ〜プレミアムCセグメントにおける新たなベンチマークが誕生



新型BMW1シリーズは2011年6月にベールを脱ぎ、日本では9月22日に発表されて発売が開始された。初代1シリーズはBMWとしては初めてプレミアムCセグメントに投入したモデルで、クラスで唯一の後輪駆動車として2004年にデビュー。そして7年目となる今年、第2世代に生まれ変わったのである。

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第2世代となっても1シリーズは後輪駆動を維持し、エンジンは直列4気筒に加えて6気筒もラインアップ。セグメントの中で異彩を放つ存在であることに変わりはない。さらに初代の成功を踏まえた上で、デザインやプラットフォーム、エンジンにトランスミッション、ステアリングなどをすべて一新している。

 

基本のプロポーションは初代を踏襲も…

デザインは、初代が当時の担当役員のDr.クリス・バングルの手法を色濃く反映していたため、2ボックスのハッチバックでありながら独特の癖の強いフォルムになっていた。しかし新型は新しいデザイン担当役員のDr.アドリアン・ファン・ホーイドンクの指揮のもとで練り上げられている。しかし、初代モデルからの継続性と新しいデザインテイストの融合には、かなりの苦労があったと推測される。

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↑スタイルはクローム仕上げのキドニーグリルが特徴
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↑リアスカートもスタイルは専用デザインだ

エクステリアを子細に見ていくと、わずかに前方に膨み前傾角を持つ大きなキドニーグリルなどに新しさが込められ、サイドビューではシンプルなエッジが強められたショルダーラインは後ろ上がりに形成されている。またリヤホイールハウスの張り出しが強められ、これがリヤトレッドの拡大も可能にし、後輪駆動らしいダイナミックさも表現しているといえる。

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↑スポーツのグリルはワイドブラックバー仕様となる

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↑ホイールのデザインもスタイルとスポーツでは異なる

もちろんロングノーズ、ロングホイールベース、後寄りのキャビン、Cピラーのホフマイスターキンク処理(デザイン)など、1シリーズの基本プロポーションに変化はない。しかし、デザイン手法のひとつとして、今回はオーナーのカスタマイズ指向を重視し、『スタイル』と『スポーツ』という2種類のエクステリア&インテリア・デザインを設定しているのは新しい試みと言える。特にインテリアではスタイルとスポーツは明確に区別され、シート形状や生地、トリム材からサイドシルプレートまでそれぞれ専用とされる(欧州モデルではスタイル=アーバンライン、スポーツ=スポーツラインとなる)。

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↑スポーツのインパネ。ステアリングなどにレッドステッチが付く
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↑スタイルのインパネはシックなモノトーン基調

インテリアはドライバーオリエンテッドのコンセプトを守り、センターコンソールもドライバー側に傾斜している。また仕上げや質感は上級の3シリーズをかなり上回り、精緻さや高質さを強調している。細部では収納スペースを増大させ、ドアポケットには1Lのペットボトルが収納できる。さらにフロントシート背後の収納ネット、リヤドアの大型ポケットなどを含むストレージパッケージも用意されているなお、6:4分割のリヤシートバックを倒すと、ラゲッジ容量は最大1200Lとなる。

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↑40:20:40に3分割式はオプション設定。標準は60:40

すべてがブランニューでサイズアップ

新型1シリーズのプラットフォームは新開発されたFタイプで、型式名も従来のE8シリーズからF20型へと変更されている。この新型プラットフォームは1シリーズだけではなく、今後はこの1シリーズより下の新たなモデルや将来のBMW MINIにも採用されると噂される(後輪駆動/前輪駆動兼用の)ウルトラフレキシブルタイプと噂されているのが興味深い。
ボディサイズは全長4324mm(初代+85mm、以下同)、全幅1765mm(+17mm)、全高1421mm(±0mm)、ホイールべース2690mm(+30mm)とややサイズアップ。トレッドはフロント(+51mm)、リヤ(+72mm)とも大幅に拡大されている。このマージンは狭かった後席の足元の拡大やカーゴスペースの拡大に充てられており、ラゲッジ容量は30L増えて360Lになっている。

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新型1シリーズではエンジンもまったく新しくなり、エフィシェントダイナミクスのテーマに合わせた2種類の4気筒ガソリンターボ、3種類の4気筒ディーゼル、すなわち120d(184ps)、118d(143ps)、116d(116ps)が設定されている。しかし、日本に導入されるのはガソリンターボのみとなる。

ガソリンエンジンは2種類とも新開発の1.6L+ツインスクロールターボを採用。BMWはこれをツインパワーターボテクノロジーと呼んでいるが、ツインターボではなくツインスクロールターボを意味している。ちなみにBMW初のターボエンジン車、BMW 2002ターボ(1973年)もツインスクロールターボを採用していた。

 

最新テクノロジーの結晶と言える1.6Lターボ

今回搭載される1.6L+ツインスクロールターボは、いうまでもなくダウンサイジングコンセプトに従って開発されたもので、高効率、低フリクション、低中速重視型のトルク特性、低回転化を目指している。この新1.6Lエンジンは従来の1.6L、2.0Lの自然吸気N43B型の後継となり、N13B16型と呼ばれる。同じ排気量のBMW MINI、プジョー/シトロエン共同開発のエンジン(コードネーム=プリンス)の発展型とも言えるが、共通点はアルミ製のシリンダーブロックと、ボア77×ストローク85.8mmと1598ccの排気量という数値のみで、N13B型は新規に開発された新世代エンジンである。

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吸気可変バルブリフト(バルブトロニック)、吸排気可変バルブタイミング(ダブルVANOS)、さらに新世代の高精度スプレーガイド直噴、ギャレット製小型ツインスクロールターボを装備する。1-3、2-4の各気筒の排気ガスを独立させたエキゾーストマニホールドでタービンに送り込む仕組みになっている。タービン室内も独立したツインスクロール形状により、低回転からレスポンスよく過給が立ち上がり、低回転から最大トルクを生み出す。もちろんエキゾーストマニホールドとターボハウジングは一体化されている。

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また高精度のソレノイド直噴インジェクターは点火プラグのすぐ横に配置され、燃焼室の中央に向けて噴射し、燃焼を高い精度で制御できる。なお噴射圧は最高120barで、上級エンジンのピエゾ直噴のようなリーンバーン運転は行わない。また、最高1.2barの過給圧をかけるにもかかわらず、圧縮比は10.5と高い。

パワーだけでなく、燃費の改善にも配慮

120i(ヨーロッパでは118iと呼ぶ)用は125kW(170ps)/4800rpm、最大トルクは250Nm/1500〜4500rpm。0→100km/h加速は7.4秒、最高速は225km/h。10・15モード燃費は17.2km/L(JC08燃費は16.6kmL)と高いレベルにあり、1.4Lツインチャージのゴルフと同等である。
一方の116i用は120i用より過給圧を下げ、最高出力100kW(136ps)/4400rpm、最大トルク220Nm/1350〜4300rpmとより低中速重視型になっている。0→100km/h加速は8.5秒、最高速は210km/hとなっている。10・15モード燃費は17.6km/L(JC08燃費は16.6kmL)というスペックだ。

この116i/120iに共通するメカニズムとしては、切り替え式ウォーターポンプ、マップ制御式可変オイルポンプなどが挙げられる。こうした燃費を向上させる最新の技術も惜しむことなく投入しており、上級エンジンとそん色ない技術内容になっている。さらに、新型1シリーズにはドライビングエクスペリエンス・スイッチを備え、COMFORT、SPORTモードとECO PROモードが備わる。

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このECO PROモードではエンジン出力やトランスミッション制御だけでなく、エアコンやドアミラーやシートヒーターなど、すべてを統合的に燃費を高めるように制御するシステムとなっている。もちろんスタート&ストップや、ブレーキエネルギー回生機能も持つ。また、COMFORT、SPORTモードではシフトアップのタイミングやダンパーの減衰調整も行い、乗り心地の最適化やスポーツドライブを楽しむためのモードも備えている。そして電動パワステはきわめて高剛性かつ正確で、120iはさらに車速感応式のサーボトロニックを装備している。

 

電子制御デバイスは上級ドライバーにも適合

アルミホイールは7×16インチサイズが標準で、205/55-16サイズのランフラットタイヤを装備している。シャシーの電子制御デバイスはABS、ダイナミックトラクションコントロール、コーナリングブレーキ制御、DBC(ブレーキアシスト)を統合したDSC(ESP)を採用。さらにブレーキはスタンバイ機能、フェード補正機能、ドライブレーキング機能、坂道発進アシスタントなども統合されている。

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↑スポーツ用のアルミホイール

ダイナミックトラクションコントロールを作動させると、DSCの制御限界値が引き上げられ、砂地や深雪からの発進をサポート。また、コーナリング時に駆動輪を軽くスリップさせることで、制御可能なレベルのオーバーステア操作を可能にするなど、上級ドライバーにも適合するシステムとしている。

DSCオフ・モードではリヤデフの電子式デフロック機能が作動する。タイトなカーブで加速する時の駆動力を最適化するため、駆動輪の空転するホイールにのみ適切にブレーキをかけ、もう一方のホイールに駆動力を配分するシステムだ。

 

このクラスでは異例の8速ATを搭載

トランスミッションは6速MTと新たに採用された8速ATが搭載され、選択できるようになっている。MTはヨーロッパ市場向けで、日本は8速ATのみとなる。このZF製の8速ATはBMWの次世代スタンダードとして現行5シリーズからすでに採用されているが、ついに1シリーズにも採用された。7.07というワイドな変速比幅と強力な低速トルクのエンジンとの組み合わせにより、きわめて低回転で走行でき、またクロスしたギヤレシオによりスポーツ走行にも適合し、燃費に関しては6速MTを凌駕している。

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この8速ATは発進時のみトルコンを使用し、その後はダイレクト結合状態で変速しDCTに匹敵する高速の変速速度を持つ。もちろん運転状況に合わせた飛び越しシフトも可能となっている。変速操作にはシフトバイワイヤーを採用しており、セレクター操作のストロークは極小で、瞬時に変速できる特徴がある。

最新のボディ構造と、こだわりのフットワーク

ボディは、BMWが「インテリジェント・ライトウェイト構造」と呼ぶ最新の構造を採用。高張力鋼板を多用して軽量化と高強度、高剛性とし、特にねじり剛性を高めている。シャシーは前後の大幅なワイドトレッド化、50:50の前後荷重配分、そしてシャシー全体の高い剛性により、俊敏でエモーショナルな走りを目指している。

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サスペンションはフロントがダブルジョイント・ロアアームを採用したストラット式、リヤは5リンク(マルチリンク)式である。BNWが採用しているダブルジョイントロアアームは、ダブルのピボットを持つロアアームの延長線上に仮想キングピン軸を持ち、この仮想キングピン軸とホイールセンターとのオフセット量を縮小し、またキャスター角、キャスタートレールも最適化するという特徴を持っている。これもハンドリングに対する強いこだわりのひとつなのだ。リンク類はアルミ材を多用して軽量化。またリヤサスペンションは軽量スチール製で、ワイドスパンのサブフレームを採用し、4箇所のうち2箇所はゴムブッシュマウントとしている。

このように新型1シリーズは、プレミアムCセグメントにおいて再び新たなベンチマークとなったことは間違いなく、そしてFRにこだわり、ドライビングプレジャーを具現化し続けているモデルと言うことができる。

文:編集部 松本晴比古

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