先日、ベントレージャパンが行なった試乗会は一風変わったもので、ベントレーの源流である1921年製3.0Lのベントレーなどが展示されているミュージアムを拠点に行なわれた。
埼玉県加須市にある「ワクイミュージアム」が試乗会の拠点で、ビンテージカーを眺めながら現代のベントレーを試乗するという、W.O.ベントレーをはじめ先人たちへの思いを馳せる体験ができた。
ワクイミュージアムは1988年にロールス・ロイスとベントレー専門のショップをスタートさせ、2013年に資料館とミュージアムを開館している。多くのクルマファンが目にしたことのある白洲次郎氏のベントレーも展示され、見ごたえのあるミュージアムだ。一般に無料で開放されているので、興味のある人は覗いてみると愉しいだろう。


さて、現在のベントレーのラインアップは4ドアのミュルザンヌ、同じくフライングスパー、そして2ドアのコンチネンタルGTシリーズとあり、こちらはレースのGT3カテゴリーでワークス活動を復活させていることでも注目だ。
試乗したのはコンチネンタルGTスピードでW12を搭載するモデル。過去にも試乗の機会があり、その時のレポートはこちら。今回も同じW12気筒だが、さらにパワーアップされド迫力GTスピードを体験してきた。

地上で最も高速移動が可能なベントレーコンチネンタルGTスピードは、635psにパワーアップされ820Nmという想像できない心臓部を持つ。300km/h以上の超高速域でクルージング巡航する実力は日本で試すことはできないが、スロットルをわずかに踏む一瞬の加速だけで、すべての景色を置き去りにする。
日本の高速道路では飛ばさない、という余裕。これを味わえるのもベントレーならではだ。制限速度を超え大きくルームミラーに映し出されるドイツ御三家のプレミアムモデルに道を譲る際も、心に余裕がある豊かさを感じる。
どの速度域からでも、アクセルを1秒間踏み込むだけでこの国の制限速度を超えてしまう。まさにモンスターだ。
エンジンやサスペンションといった機械工業製品のずば抜けた性能もさることながら、ベントレーの魅力を語るうえで欠かせないのは、インテリアの豪華さだ。そこには職人の技から生まれたセンスと魂が込められている。工業製品の集合体である自動車が、冷たい金属以外のぬくもりや温かみを人に感じさせる何かをベントレーは豊富に持っている。
そしてその美しさと気品に満ちあふれたインテリアは、そのまま飾っておきたいと感じさせるクオリティに仕上げてある。さすがに選ばれた者だけが所有することのできる、ゴージャスな世界観だ。
そのオーラを全身に浴びられるインテリアはカスタムメイドされ、オーナーの自由自在。乗る人の人柄までも見えてくる内装となる。たとえ見合った金額を払って購入したとしても、似つかわしい人柄でなければ、ベントレーに乗る意味はないと感じてしまう試乗だった。
ワクイミュージアム
埼玉県加須市大桑2-21-1
http://www.wakuimuseum.com/