ベントレー コンチネンタルGT V8Sコンバーチブル&フライングスパーV8試乗記

マニアック評価vol293

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コンチネンタルGT V8Sコンバーチブルに試乗の機会を得た。箱根のワインディングにて

コンチネンタルGT V8Sモデルは2013年9月のフランクフルトモーターショーでワールドプレミアされた新型モデルで、またフライングスパーV8も2014年3月のジュネーブショーで発表され、今回その試乗の機会を得た。

◆ポジショニング

ベントレーのポジションであるプレステージカーセグメントは、旧ロールスロイスの伝統的な製造ノウハウや職人たちをすべて受け継いだ本家本元で、このセグメントでは別格の存在となる。

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ベントレーは1998年にフォルクスワーゲングループにロールスロイスと共に吸収されたが、2002年にロールスロイスはBMWへと移り分裂している。マンチェスターとリバプールの間に位置するクルー工場では、60年代からのロールスロイスとはブランド違い、という時代から働く職人たちがそのまま、技術の継承を受け現在でもベントレーで働き続けている。

2代、3代とつづく革加工職人は地元に根付き、自動車メーカーの資本がどこに移ろうとも職人たちは先代から技術を受け継ぎ、職人技を駆使し続けているわけだ。ベントレーのトップグレード、ミュルザンヌにその伝統の技は惜しみなく投入されている。もちろん今回のコンチネンタルGT V8 Sにもその職人業は投入されている。

V8Sのインテリアカラーはツートーンでシートとダッシュボードではカラーが異なる。そのシートのカラーをダッシュボードのステッチカラーに使用し、ダッシュボードのカラーをシートステッチのカラーにするなど、数多くの組み合わせを用意し、選択の幅の広さという点でもプレステージカーならではであり、世界に一台しかない自分だけのクルマを手にすることができる。

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職人の手によるツートーンのインテリア。もちろん質感は最上級だ

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2003年にデビューしたコンチネンタルシリーズは、こうした伝統の技と魂をこめたグランドツアラーモデルとして誕生している。そしてW12気筒、V型8気筒とモデルレンジを増やし、今回さらにその中間に位置するV8 Sを投入している。コンチネンタルシリーズはこうしたプレステージクラスに位置しながらも、販売台数を増やすのも狙いのひとつであり、アッパークラスのスポーティモデルユーザーをターゲットにしている。つまり、アストンマーティンやマセラティ、フェラーリ、AMGユーザーなどもベントレーに取り込みたいということだろう。

V8 SはW12型よりもスポーティに走り、V8標準車よりも上回る性能とゴージャスさを持ち合わせている。もっと!を求める人の満足度を満たすモデルといえるだろう。ボディサイズは全長4806mm×全幅1943mm×全高1403mm、ホイールベース2746mmで、価格は2400万円(税込み)、クーペは2190万円(税込み)となっている。

スペックを見てみるとV8 Sは528ps/680Nm、V8は507ps/660Nmで出力は異なる。当然0-100km/h加速は4.5秒と4.8秒、最高速度も309km/hと303km/hという違いがある。V8 SはW12型に匹敵するインテリアの豪華さと上質さを持ちながら、エンジンが軽い分ノーズが軽くW12型よりもスポーティに走る。だが6000rpmまで途切れることのない怒とうのトルク感を味わいながら、スポーティサスペンションがコーナーを気持ちよくクリアするのだ。

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V8 Sのパワーユニットはフォルクスワーゲングループのアウディが開発した新エンジンでV8型4.0Lツインターボを搭載。高速巡航では気筒休止する最新のエンジンとなる。トランスミッションはZF製の8速ATにフルタイム全輪駆動というレイアウトになる。このユニットはユーロ6に対応する最新ユニットで燃費も市街地、郊外のミックスで10.9L/100km、日本風で言えば9.17km/Lということになる。ちなみにクーペは10.6L/100kmで9.43km/Lだ。

そしてW12型と決定的に違うのはエンジンサウンドだ。特に2000rpm以下は静かで、猛獣が走り出すかのような印象を匂わせない。つまり市街地を日常使いしても違和感のない静かさなのだ。W12型は少しでもアクセルを開ければ、只者ではないサウンドを低く唸るように響かせる。周囲の注目を集めることが簡単だ。V8 Sは一切その雰囲気を出さない。だが、アクセルを踏み込めば野太いV8型らしいサウンドを出しながら、ドライバーの背中をシートに押し付け続けることになる。

サスペンションも10mm低くスポーツサスペンションになっている。しかし乗り心地が固いと感じるようなことは全くなく、可変式のダンパーをスポーツに設定してみても、固い入力など存在しない。またESCの制御改良もしっかり行なわれ、ニュルブルクリンクでの走りこみ、イタリア山岳エリアでの試走、スペインのサーキット走行、ニュージーランドでの雪道走行制御など、徹底的にテストが繰り返されている。

4シーターというグランドツアラー要素を持ち、このうえないラグジュアリーで高品質で高い快適性を備えた究極のラグジュアリーGTといえるだろう。

エクステリアではW12型とV8型の見分け方として、V8型は赤いBマーク、黒く塗られたフロントグリル、そして8の数字を横に寝かしたようなデザインのマフラーなどがある。そしてV8 SとV8の違いはボディ下部に装着するフロントスプリッター(スポイラー)、サイドシル、リヤエクステンション&ディフューザーがある。さらにブレーキキャリパーが赤く塗られ、10mm車高が下がっている。そしてV8 Sのバッチがフェンダーに着くという違いがある。

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ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブルエンブレム ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブルグリル

インテリアではピアノブラックのダッシュボード、アルミ材の表面に凸凹の加工を施すローレット加工されたシフトノブ、レザーヘッドライナー、V8 Sロゴ入りステッププレートなどがある。そして内外装ともにカラーの選択肢がW12型なみの幅広さを持っていることも大きな違いだ。

ベントレーのグランドツーリングカーは、ジェントルな乗り味とクオリティを持ち、それでいて日常使いまでも考慮できるというのがV8 Sということになろう。

◆同じV8型ながら全く異なるフライングスパー

グローバルマーケットでコンチネンタルGTのマーケットシェアは、クーペが約63%でコンバーチブルが37%という割合。オープンモデルの人気の高さも特徴のひとつと言える。メインマーケットは米国で全体の50%以上がアメリカ市場になる。そして2番目が中国だ。

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ベントレーは2013年、グローバルで6000台以上販売し、国内市場でも好調だ。もちろん好調の要因はV8モデルの成功があり、選択肢が広がったことが挙られる。また、フライングスパーV8の存在も大きいという。

フライングスパーは、コンチネンタルのV8 Sと同じV8型なのだが、507ps/660Nmのほうのスペックを搭載している。4.0Lツインターボで8速ATと組み合わされる。こちらはV8 Sよりさらにエンジン音が静かで、ショーファーな位置づけに変わってきたフライングスパーにふさわしいユニットといえるかもしれない。

V8 Sは2000rpmを超えるとV8らしいサウンドを響かせ(オプションのスポーツエグゾーストを装着)ているが、フライングスパーはアクセルを踏み込んでも静かなままだ。ただトルクとパワーが盛り上がりぐんぐんと静かに加速していく。同じV8エンジンとは思えないほどキャラクターの違いがあることに驚かされた。

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気づけばベントレーのモデル選択は拡がり、欧州GT3に復活したレーシングチームもあるように単なる高級車ではなく走りの質が高い高級車としての選択肢も増えている。トップグレードにはミュルザンヌがあり、フライングスパーにはW12とV8、そしてコンチネンタルGTにはクーペボディとコンバーチブルがあり、それぞれにW12型搭載のGTとGT SPEEDがあり、V8型搭載のGT V8とGT V8 Sがある。つまりコンチネンタルGTだけでも8モデルから選択できることになる。

 

■ベントレーモデルラインアップ(8%消費税込)
コンチネンタルGT V8        2040万円
コンチネンタルGT V8コンバーチブル 2250万円
コンチネンタルGT V8 S       2190万円
コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル 2400万円
コンチネンタルGT          2300万円
コンチネンタルGTコンバーチブル   2510万円
コンチネンタルGT SPEED      2560万円
コンチネンタルGT SPEEDコンバーチブル 2770万円
フライングスパーW12        2340万円
フライングスパーV8         1890万円
ミュルザンヌ            3480万円

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